ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:軽度アスペ・ACな妻

アスペ妻の記録~未来の種~

2014-08-22 Category:軽度アスペ・ACな妻

書いてある内容をちらっと

成果を実感する

実家に到着した夜、父も母も感情的になることなく、穏やかに会話が続きふと気がつくと私は飲み過ぎて、いつの間にか眠りについていた。まあ、前日はほぼ徹夜で10時間近く車を走らせていたのだから仕方がないのかもしれないが、【10年以上のわだかまり】が解けて気が抜け、気分酔いに呑まれたのかもしれない。
気持ちの良いまま“ふっ”と眠りにつくなど、最後にしたのはいつなのかも思い出せないほど、遠い記憶のことだった。
昼過ぎには都内の親族の家を後にした、妻と娘と次男の3人が最寄りの駅に到着。電車好きな次男のためにと考えた合流方法だったが、当の本人は初めての都内の人混みにぐったり。ちょうど時間も余っていたし、一応娘の様子確認も合わせて、近くの児童館で休憩がてら遊ばせることにした。
以前の娘であれば、もう合流地点で私が車を降りた時点から、目をそらし背を向け硬直していただろう。彼女にとって環境の変化や人混みは、それだけで余裕を失い、愛着の相手との距離感すら思い出せないほどに困惑するものだった。
しかし、車に乗るなりやや疲れている様子はあれど、電車での様子を話しだしたり、児童館につくと自分から『え、遊んでいいの♪』と図る様子なく反応を見せていた。
炎天下を歩いた後の気怠い感覚の中、今更ながら娘の成長を実感し、ほっと胸をなでおろしていた。次男も多少の疲れた色が見られるが、ぐずつきや不機嫌な様子はない。
妻『昨日はどうだった?』
私『うん、衝突もなく上々。そっちはどうだった?』
妻『うん、叔母ちゃんたちも安心してくれたよ。やっぱり心配だったみたい。それでね……』
お互いの過ごした夜を報告し合い、また子どもたちの様子を見て、実家についた時に起こるであろう戸惑いなどの可能性を予測し、児童館の片隅で夫婦で打ち合わせ。いつもは職場のデスクの前で繰り返す、儀式のような習慣だが、多くのマニュアルが把握しきれている今はメモ書きもホワイトボードもいらず、妻は的確に予想と対策を立てている。
気負いも焦りもない表情は、昨夜の親族でしっかりと立ち回れた証拠だろう。妻の目には迷いも葛藤もなく、リラックスして服のコーディネートを楽しむように子どもたちの事に対峙しようとしていた。
実はこの時、すでに私はグッと涙をこらえていた。
一年前、娘の診断結果をめぐり母と溝を強くした。去年末には妻と長男のパニック、そして巻き込まれた次男の不安を前に膝をつき、苦悩の末に命を掛けるつもりで対峙する事になった。その間、5年目にしてようやく娘の不安定の原因を突き止め、妻との協力でそれを乗り越えてきた。
……もう、大丈夫。きっと、現在いる所が今までより高い所にある、少し視界の広い階段の踊場なんだ。この踊り場をしばらく歩くのか、すぐにもっと高い所へ登り始めるのかは、娘と長男と妻の3人がどれだけの認知を獲得し、私がそれらを理解していけるかが関わってくるのだろう。それでも今いる景色が、どれほど過去の私にとって遠く、霞がかった情景であったことか。
ふつうに程よい距離感や関係を持ち、家族の誰も沈んだりパニックに打ち震えていない旅行は、この時わが家は初めて体験したのだ。今、これまでの8年間の闘いが、実りあるものであったと実感していた。

洗礼

実家に家族5人そろい、その日もまた宴となった。次男は初めて見る祖父に『お、あんた誰?』とお決まりのネタを投げかけられていた。この冗談は長男も娘も幼いころにやられていて、その時は笑うのだが、その後に明らかに困惑したり不安そうな色を見せることがあった。
父『お、あんた誰?』
次男『ええ~、次男だよ。ぼく次男』
父『え~、○○?(わざと聞き間違え)』
次男『じ・な・ん!』
父『へ~、次男かぁ、で、あんた誰』
次男『きゃはははは。じぃじそればっか!』
父『ふははははははは!』
……次男に一切の不安の色がない。【冗談】という言葉は分からなくても、ニヤついた祖父の表情から、冗談めいたやり取りをふっかけられていることを感じ、【冗談】だとほぼ確定した仮定で、その冗談を笑うという高度な切り返し。長男と娘の場合はただ訴え、冗談であるかどうか確かめるために作り笑いで伺うばかりで、やがて眉が八の字に固まり、結局感情的になるのがオチだった。
なるほど、反応にここまで違いが来るのは【ほぼ確定した仮定】などの、現実のボーダーの位置取りに“わずかな不確定”を持って置けるからなのかもしれないな、と感心してみていた。
父には意外とそういった動物的な試し方をするところがあるが、何かを理解したらしい。
父『うん、三人目はやっぱり違うもんだなぁ。よく見てるわ』
洗礼は完了、父は次男を理解したようで、その後もふざけあっているものの、どこか父は長男との時間を楽しんでいるようだった。初孫だから? 生まれた頃から見ているから? ある程度高度な会話が通じる年頃だから?
それらもあるのかもしれないが、私には祖父が会話を進めるに最も楽な立ち位置に、長男が寄り添うように持ち上げながら、また不安がりながらも従おうとする“のび太”的な寄り添い方に安心しているように見えていた。この独特なパワーバランス。
ふと母の顔を見てみた。
───いや、親子・孫の上下関係があればこそのバランスだ。夫婦関係はそうではない。
親子関係は強いものだが、それに比べれば夫婦関係の方が、はるかに時間も深度も大きくなっていくものだ。寄り添いすぎれば歪み、反発すれば衝突し、永く共に歩むのであればその中で、自分の心を主張しなければ軋みが出てくる。今、私が父と長男に見ている関係は、一過性の寄り添う関係だからなのかもしれないと、どこか寂しくも妙に納得していた。

未来の種

子どもたちが寝付いた後も、私と妻そして両親との宴は続いていた。
驚いたのはだいぶ酔ってきている様子の父が、席を外さず母の会話に耳を傾けようとしていることだった。いつもなら酒が回ると早々に自室に篭もるか、一方的な会話になって席が止まるのだが、父は母の言葉に耳を傾けようとしていた。
想像以上に工作が効果を発揮していたようだ。母も父の対応で気分を害さず、昨夜のように極普通の家庭の会話のように、穏やかに流れていく。
母『それにしても、娘ちゃん明るくなったじゃない! 本当によかったわ』
私『うん、やっとね、俺もどうしてやればいいのか分かったんだよ』
母『前に会った時は確かに何処かちょっと固かったし、ずっと私にしがみついてたりして、“子どもってこんなにいつまでも接触しているものだったかしら”って思ったりしてたわ』
───ああ、やっぱり気がついていたんだ。
私『娘はあれから、人との距離感をあれからかなり勉強したんだよ。物理的な距離も、心の距離も。そういうのが分かりにくくなる特性を持ってたみたいだね』
母『私もあなたからもらった本で、凄くよく分かったわ。今は凄く心が軽いのよ』
───ん!? 父はまだそこにいるが? ここで始めるつもりか?
父は穏やかな顔で耳を傾けていた。
母『“わかるだろう”じゃダメなこともあるのよね。それじゃあ困る人もいるのよね……』
私『元々、そういう“だろう”は社会通念だからね。ちゃんとお互いに答え合わせをしなくちゃいけないんだろうね』
母『医療の現場にいた自分が、そういうことを理解できなかったことが歯がゆいわ……なぜ今までって……』
私『解らなかったことも、出来なかったことも、誰が悪いわけでも罪があるわけでもないんじゃない? 大事なのは今、“こうすれば良かったんだ”って言う正解が分かったってことで、“責任”とかの観点で考えることは、今までどおり狭い世界にいることになるんじゃないかな』
母『……そうかもしれないわね』
私『発達障害であろうが精神症であろうが、定型だってちょっとの地域差や年齢差、性差でも考えが違うのに、自分の信じてる通念が正しいとすぐに思い込むのが多いでしょ?
俺、娘からそういう自分のことも沢山教わった気がするんだよ』
父はどこか嬉しそうな寂しそうな、ただ、今までに見たことがないほどに穏やかな表情で呑んでいた。
私『自分が何を分からないのか分からないのは、恐怖だよね。自分が今何をすべきかを見失うのは怖いことだよ。それを言葉に出来るほど、正確に自分を知ることが出来ないとしたら、身を守ろうと頑なになるしかないよね。それはそうする側もされる側も同じだよ』
“私はどちらの側でもなく、どちらの味方でもあり、どちらの理解もしている。だから通訳をする”
父と母お互いに今まで衝突したり、関係を崩してきた原因の裏側は、この理解できない部分を、お互いに踏み込む段階に怯えて内々のままに先送りしてきたからだ。
しかし、それは仕方がない。お互いの脳は別個で、何をどう感じているのか、表面的な言葉や通念では共通することがあっても、本当に心の中の絵を再現出来ているとは限らないのだから。
ならば、私にできることはこうだ。
私『父さんも、怖かったろう……』
父は大きくうなづいた。母は一瞬驚いたような顔をした後、様々な疑問を投げかけては通訳を求めてきた。もう、以前にわが家に訪れた時の表情の硬さは、無い。
長男と娘との生活から、私は認知のズレ・通念のズレ・コミュニケーション手段のズレ……多くのズレの経験を積み重ねてきた。もちろん妻とのズレも大きな学びになっているが、人間形成していく子どもの成長の中に、そういったズレと修正していく様をリアルタイムで見られるのは学びと気付きの深度が違う。
そして今、その中で得てきた知識を、両親に説いている。それは自分の血が通った者達が生み出した、新鮮な生きた知識だ。
父と母の長年のズレをつなぐことは、私や私の兄姉の代では不可能だったのではないだろうか。私達は彼らの子どもである。真意を突かれれば、身構えてしまう部分も多かろう。しかし、孫は別である。孫の存在は未だ“父”でしかない私にはまだ分からない領域だ。それは両親にとっても始めての領域である。
父と母の課題が、子である私の中を通り、今孫の代で“そこに居続けてきた答え”を収穫する。これは人が人として生きるに持つ、ひとつの“未来の種”なのかもしれない。
その後も続く穏やかな会話の中、私はこの旅の目的がほぼ終了したのだと、そっと胸をなでおろしていた。

【つづき】⇒アスペ妻の記録~残されたもの~

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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