ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:軽度アスペ・ACな妻

アスペ妻の記録~母不足と娘不足~

2014-06-13 Category:軽度アスペ・ACな妻

一月遅れの正月

長男が突き動かされていた【なにかしなくては】が、彼にとって何の意味もないことを、ようやく実感を持って認識したその日。私は妻と今までの経緯を、紙にまとめて視覚化しながら、“何が問題だったのか”や“何が功を奏したのか”をひとつひとつ確認していった。
妻・長男・娘が抱えている共通の苦手意識や、その阻害している要因。
それらは根本的に同じ共通点が方向性として存在していて、しかし、それぞれの特性によって表面的に違う問題に見えているなどの特徴を余さずに列挙していった。
これから先、子どもたちの成長具合や認知の獲得具合で、対応はどんどん変化していくのは間違いないが、当面の【注意して観察しておくべきこと】や【やや強硬して矯正すべき癖(ストレス由来や二次障害につながらないもの)】をそれぞれ決定して、親としての“今年の抱負”がたてられた。
目標が目に見えると、妻に迷いがなくなるのは、もう去年の数々の失敗から把握している。
子どもたちの対応にパニックを起こす彼女の場合、まずは子どもたちの最低限の安定は絶対条件だった。それが今日、とりあえずの決着を迎えたことになる。元日から続いた私の絶食ストも、この時に終わりを迎えた。
25日ぶりに口にしたのは重湯。
固形物が何も入っていない病人食。それでも体が温まり、涙がでるほど旨かった。
私『あけましておめでとうございます』
人心地ついた私を、妻は保護されて快方に向かった動物を見るような、憂いに富んだ潤んだ瞳で見つめては、うなづきを繰り返していた。

今までにない新年度スタート

“意識をする必要がない”と理解した娘。
それはわが家にとっては非常に大きく画期的な【事件】だった。
その瞬間を迎えた時、同時進行で長男が私への罪悪感に満ちた意識にとらわれていたために、妻も次男も巻き込まれて実感を持ちづらかった。長男も落ち着きを取り戻し、なおかつ今までの自分の過剰な意識を理解したことで、初めて全員が平穏な状態でそろうことになった。
安定した時間が1ヶ月以上続いたのは、長男が4歳でようやくイヤイヤをクリアして安定した頃以来。
実に3年ぶりのことだった。
今までも娘は1~3月はイベントが少ないために安定する傾向があり、4月に教室や担当の先生の交代などの環境変化を迎えると、その疲れで不安定になりだすのは4月の半ばあたり。今回もただの安定期であるという可能性も考え、無駄な期待をせずにとにかく変化に意識を向けることに集中していた。
4月半ばを過ぎた頃、やや娘に疲れの様子が見えたが、いつもより早く寝かせる程度の対応で乗り切ることができた。その間も、ふつうに夕食を一緒に摂り、余計な意識を向けられることもなく、お互いにストレスのない関係を継続。
それは5月を過ぎても続いていて、懸念されていた春の遠足も、なんら問題を起こすことはなく今年はクリアできた。
これは単に娘自身の成長もあったであろうが、大人の言葉を構えなく聞けるようになった事が大きいと思われた。それまでは娘は自分の思いとは違う、人の意見に従うことは、【間違ったこと】であり、頑として耳を塞いできた。このガードを許してきたのは、妻の【大人の弱腰】を見せ続けてきたことが大きかったのかもしれない。
【他の大人がダメと言っても、お母さんが止めないからいい】
これを免罪符にするように、彼女は耳を閉ざし続け、自分の手の内だけで処理しようとしてきた。5歳になってからの彼女の激しい混乱は、この手の内の手段の数と質が、年齢的に幼稚になり現実的にギャップが生まれたからではないだろうか?
妻が毅然と叱り、短期集中で【揺るぎない母親】のイメージをもたせたことで、娘は恐怖心ではなく【耳を閉ざすこと・逃げることの無意味さ】を知った。これを行使した母親だけでなく、保育所の先生方や近所の大人にも、それが好影響をもたらしていることが見て取れた。
自分の気持ちや思考は言わないと伝わらない
何も言わずにいても、思考を理解しようとまではしてもらえない
妻の毅然とした対応が、これらの認知を娘に与え、
家族はいるだけでいい
この認知が家をリラックスする場所であると、彼女に教えた。
今まで“分かってもらえない憤り”や“伝わらないストレス”での、外へ向けた鬱憤を抱え、“理解できない不安”や“耳から頭に入ってこない夢想感”に怯え、自分への憤りを抱えていた娘。さらに保育所ではこれらの“不快感”や“恐怖”と闘いながら、家では“父親に愛されるために何かしなくてはいけない”と、全神経をすり減らす。
こうして考えてみれば、幼い娘が潰れるのは当たり前だ。
もし自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)という言葉に辿りつけなかったら、私はこの先あと何年苦しんだのだろうか。気づいてやれなかった申し訳無さと共に、自分が進むかも知れなかった道を思うと血の気が引いた。
今の娘は家ではリラックスをし、保育所ではある程度の余裕を持って、パニックを起こさず状況を受け入れて生活できている。ただ、それでも多少、一般的な子どもに比べれば潰れるのも早く、疲れた表情を見せることが多い。
ここまで来れば大丈夫だろう。
私は妻と娘の関係を、次のステップに進むようにうながすことを決意した。
想定より何十倍も速い展開に、私自身も少々戸惑いながら。

母不足と娘不足

新年度に突入し5月に入った頃、娘に小さな変化が現れた。
ちょっとしたワガママや、気がついたことをサクッと言ってしまうなど、歳相応なブレを私に対しても見せるようになった。これは今までは母親にばかり向けられ、断り切れないのをいいことに、どんどん泥沼化の様相を呈していたが、それを父母の分別なく向けてくるようになったのだ。そして、何より私にとって好ましかったのは、彼女からのスキンシップが格段に増えてきていたこと。
───父母アンバランスが完全に解消された!
私との関係性を一方的な依存や保護を受けるだけとして考えるのを止め、母親もあるボーダーラインを持って自分との関係性をちゃんと見ている安心感を持ち、今、娘はようやくふつうの5歳児と同じように気持ちのキャッチボールを望んできている。
情けないことに、私は初めて父親として、【この家に“むすめ”がいること】を実感していた。
欲動の止めどころや意図にズレがある娘の、時間を許す限りの波状攻撃は、こちらが疲れるのは確かではあるが、これも本当に喜ばしいことだった。結果的に演技がかった関わり方がなくなり、お互いに無駄な意識を強要されることがなくなったのだから。
しかし、この娘の開放感がひとつの癖を強く押し出すことになってしまう。
衝動性の顕在化
自分の気持ちを前に出せる様になった喜びで、どこまで出していいか分からず、楽しい気持ちになると“やり過ぎてしまう傾向”と、“思いついたものに走ってしまう傾向”や“自分の発想を一瞬にして強く信じこんでしまう”などがしっかりと強調されてしまっていた。
これは今まで不本意ながらも、親との関係性に戸惑っていたからこそ、ブレーキがかかっていた案件のひとつでもある。それはさながら“膿”と言うよりは、痛みが怖くて抜くのを先送りにしてきた“トゲ”のようなもの。
妻『娘のことなんだけどさ……』
ある朝、保育所に娘と次男を送った後、毎日の定期連絡の中で妻が相談を持ちかけてきた。
妻『最近、道路に飛び出しちゃったり、なにかしら待っていられないとかが多いの。そろそろ叱ったほうがいいのかな?』
今、確かに、妻が“そろそろ叱ったほうがいいのかな?”と相談をしてきた!
まだ娘の安定が確定しているとは思えなかったので、妻には【強い叱責は一時中断】としてもらっていたのだ。彼女はそのままの続行に疑問を持って相談してきたのである。
生活の中で疑問を持つまでは今まで通りだが、自発的に相談を持ち掛けてくることはありえなかった。なぜなら彼女にとって【相談を持ちかける】ことは、長男や娘の両極思考と同じく、【自分で解決できないと認めてしまう恐怖】や【“自分で考えろ”などの協力の否定への絶望感】がつきまとい、彼女にとっては非常に勇気のいる行動。
さらに、小さな目の前の問題があるにはあるが、娘自体は安定傾向にあるため、ふだんの妻であれば確実に油断して娘を観察することすら忘れていただろう……。
つまり、私にとっては彼女が“娘の異変に気が付き、問題視し、相談してきた”事実は、非常に大きな成果だったのだ。これは長男の誕生以来、一度として成功しなかった子どもに関する【ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)】が、今初めて成功したことになるからだ。
私『……うん。そうだね。でも、多分ひとつひとつ叱っていっても、あの子は憶えてたり抜けてたりで時間がかかり過ぎるだろうね』
妻『………うん。それでもやっぱり、あの子の場合は全部いちいち教えていった方がいいのかも』
私『凄いね、ちゃんと“お母さん”できてるね』
妻『……………へっ?』
私『場当たり的でなくて、ちゃんとあの子の特性を考えて、先の事を含めた対策を考えようとしてる。なにより、その相談を自分から投げかけてきてくれた。お母さんってこういう具体的な行動の積み重ねが形になるのかもね』
妻『そ、そうかな? ……へへへ、へへへへへ、えへへへへへ』
わが家に【母】と【娘】が、その中身を持って戻ってきた。
これは完全に好機だ。
私は妻にいくつかの作戦を持ちかけた。

10秒ルール

作戦をスタートしてから2~3週間で、すぐに変化は現れた。
解消された注意障害の様な問題行動は次の通り
・道路への飛び出し
・他人の敷地への無許可侵入
・屋内での駆け足や大騒ぎ
・スーパーなどでうろちょろして迷子
・声のボリュームの異常な上昇
・弟への無駄な競争意識
実践したのは次の様な方法
1:帰宅時、車を降りた時に飛び出そうとする際に、抱き合い10秒ゆっくり数える
2:ガレージから玄関に向かう際、弟と競争しようとすれば何度でも【1】を繰り返す
3:玄関に入ったら今度はしっかりと抱っこして【お家はゆっくり休む所・ラクにする所】と再確認
これをウィークデーは毎日必ず。特に【3】はわが家では【儀式】と呼んで、それを行うことを義務付けた
休日は例えば公園に出かけても、まず出入口で10秒数えて一旦冷静さを引き出し、【呼ばれたらすぐに来る】と約束をして解き放つ。スーパーやショッピングモールでも出入口で10秒数えて、今日の目的を確認してから初めて歩き出す。途中、気になるものがあって走ろうとすれば、何度でも10秒。
人間の瞬発的な衝動自体は実はかなり弱く、子どもや認知力が弱い状態だと、それが波状的に来たり頻度が高いだけだったりすることが多い。これは私も地獄の自力禁煙を敢行した時に、身を持って実感している。
特に子どもの場合、それそのものへの欲求よりも【そこに今いくこと・今触ること】などの【今すぐ】が欲求として強いことが多い。10秒をゆっくり数えながら【今】を【過去】にしてしまえばいい。さらに母親に抱きしめてもらえるとあれば、悪い気もしない。
要は瞬発的な衝動が湧いた時に、ちょっと立ち止まる癖が付けばいいと考えたのだ。
抱きしめるのは娘自身にスペシャリティを感じさせるため。同時に数えるという行為の間に、自分がどういう時に数えさせられるのかを把握できれば、それは認知トレーニングにもなる。
そのうち娘は出かけた時に自分から【こういう時は10秒かぞえて落ちつけばたのしいんだよね】と、ニコニコしながら確認するようになっていった。
この【10秒ルール】は実は娘の衝動性だけではなく、母娘関係で今まで積み上げてこなかった絆を、押し付けがましくない感覚で急速に充足させることにも成功していた。母不足と娘不足はお互いの対策によって生まれた【余裕】が出て来たことで、ようやくわが家では解消されたようだ。
───しかし、
私はまだ何も安心してはいなかった。
なぜならこれは、娘の年齢的に埋められる可能性の高かった対策が成功しただけであって、娘の思考回路が大きく変わったわけではないからだ。思考回路を無理なく変更していくには、こういった負荷の少ない方法を選びながら、行動にワンクッション変化をいれて継続していかなければならない。
【行動から認知へ】このアプローチには習慣化が必要なのだ。
今、成功に向かっているように見えても、これは妻と娘に余裕があるからできていることであって、まだ常態化している訳ではない。これは一瞬の雲の切れ間かもしれないのだから。
その私の心配を裏付けるように、
妻のゆるやかな変化を感じ始めていた。
・返事のレスポンスの若干の遅れ
・聞き間違い聞きこぼしの増加
・額と眉の辺に入る微妙な力
・そっけない返事
・小さな事でも難しいことの様に構える
また何か妻は問題に直面しているらしい。
そしてそれは、彼女本人にもうかがい知ることのない、“認知のズレの補正”にメモリを自動的に奪われている状態。
今、妻はわが家でひとり、自覚のないまま元の道を辿ろうとしていた……。

【つづき】⇒アスペ妻の記録~蛇は誰に憑いた~

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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