妻
書いてある内容をちらっと
家庭からの二重結束
子どもとはまともにコミュニケーションも取れず、背を向けられ、逃げられ、話しかけただけで顔色が蒼白になるほど怖がられ。
家庭も上手く回せず、妻のことも理解できない。
そして経済的にもダメージを受けた、私の地方生活という判断。
ふたりでやろうと決めた事業にも、妻はどこか他人事だったし、何かある度に何もかもが煩わしいと言った表情を浮かべていた。
私はひとりの夫としてのあり方が、何処か根本的に間違っているのではないか?私という存在が妻を困惑させ、子どもたちに異常な行動を取らせているのではないか?
いや、そもそも彼らの行動を『おかしい』と思うこと自体、私が『異常』である証拠かもしれない。
二度目の大腸炎で臥せった床の中から、
そんなことをぼんやりと考えていた。
そんなことをぼんやりと考えていた。
いや、私が【父親】になってから、そう考えてはすぐに拭い捨てるように、何度も何度も私の頭をかすめていた。
そして─、
二度目のダウンの後から続く、沈黙と硬い表情。
妻のよそよそしい態度に、一つの言葉がよぎった。
妻のよそよそしい態度に、一つの言葉がよぎった。
三行半(みくだりはん)。
妻に『話がある』とかしこまって呼び出された時、一瞬にしてそんなことが頭を巡った。
私が行動しないと破綻する。私が行動すると破綻する。
どちらにしろ破綻を選ばされるという、二重結束(ダブルバインド)。正直に言えば、この時私の脳裏に“解放”という言葉が浮かんでいた。
妻の慟哭
子供が寝た後、仕事部屋にふたり。妻の表情は硬く、思いつめているように見えた。
しかし、私の目を通して遠くを視るような視線にまま、口は小さくあぐあぐと動かし、言葉の通り道を探っているようだった。
(……そんなに言いにくいのか)
私『なに? 何の話……
妻『教えて欲しいの』
妻『教えて欲しいの』
沈黙に耐え切れず口火を切った私の言葉を遮る妻。
私『教える? 何を?』
妻『夫の病気はストレスが原因なんでしょ?』
私『……そうとも言い切れないけど、恐らくは。』
(ああ、【あなたを傷つけたくないから別れる】な論法か)
妻『…………』
私『…………』
(なんだよ勿体ぶって、早くしろよ)
妻『どうすれば夫が辛くないか教えて欲しい』
私『…………はい?』
妻『これ以上、夫を傷つけたくない。けど、私は考えようとすると分からない。気持ちとかそういうのよく分からないし、子供の事とかもよく分からない。自分が何をできているのか、何ができていないのかもわからない! でも苦しめるのも嫌だし、何からどうすればいいのか教えて!』
私『…………』
妻『半年前に入院した時、自分で変わろうと思ったけど、なにをどうすればいいのかわからなかったの。色々と考えているうちにどんどん時間は進んでいくし、子供だけじゃなくて、仕事とか、お母さんになるとかいろいろ……ううわあああああああ』
妻の慟哭だった。
妻が無口になっていたのは、私への三行半の文句を考えていたのでも、無理の無い終わり方を考えていたのでもなく、家庭を愛するための方法を模索していたのだった。
妻が無口になっていたのは、私への三行半の文句を考えていたのでも、無理の無い終わり方を考えていたのでもなく、家庭を愛するための方法を模索していたのだった。
私『……もしかして【なにから手を付ければいいのか】を、いつも考え続けていたの?』
妻『…………うん。でも、わがらながっだぁぁああああああ』
もしかしたら、今までの問題は『見ないふり』ではなくて、『考えこんで思考回路がパンク』していたのかもしれない。
ふとそんな事が浮かんだ時、私の中にもう一人、似たような存在がちらついていた。
私『もしかして、娘も君と同じなのかもしれないな……』
今までなんどとなく、子育て関連のサイトやブログを駆けずり回って娘の行動を検索したが、ピタリと一致する子の前例の情報はなかった。
【検索のキーワドが根本的に違ったのかもしれない】
子供のように泣きじゃくる妻を横に、ふとそんな事を思い浮かべていた。何かにつながる一本の線になる。そのための点と点の気配を感じていた。
【つづき】⇒~家族~
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