妻
書いてある内容をちらっと
20代後半突入、そして将来への悩み
当時彼女は非常に様々な事に悩んでいた。仕事のこと、将来のこと。自分の生き方などの指針。
特に何か不都合があった訳でもなく、ただ『こうではない』といった、説明のつかない強迫観念があったようだ。そのせいか仕事に対しても何処かすねたような、ぶっきらぼうな感じになっていたらしい。会社の人に優しく出来ないことや、漠然と怒りのようなものがあるとぼやいていた事がある。
しかし同時に、自分が人のことを言えるほどのスキルを持っているわけでも、自分が納得できるほど仕事をこなせているわけでもないとも自覚していた。その彼女の中にある『情けなさ』の様なものが、さらに彼女を追い詰めていたようだった。
その頃は資格社会だの、スキルアップだのと、働いていても常に次を考えて行く事が叫ばれていた時代。
『5年後、10年後の自分を考えろ』
を至る所で耳にしていたが、そう言った風潮も彼女を追い詰めていたのかもしれない。
を至る所で耳にしていたが、そう言った風潮も彼女を追い詰めていたのかもしれない。
私自身も当時激しい出版不況が続く中、零細の出版社に勤めていて、明日はどうなるか分からない状態だった。
その頃、私の会社でもなんだかきな臭い噂が出始めでいたので、毎日必死で将来を考えていた。これからの人生を考えるにも、大きな流れを見定めなければと思っていた最中だった。
結婚へ
ある日、彼女は帰宅すると泣き出した。将来的に不安のある業種だったのだか、その会社の経営方針が非常に信頼出来なくなる出来事があったという。
私自身も抱えていた課題をまとめきったところだった。そして彼女に答えを告げた。
『今、目の前のことがいちいち許せなくなるのは、自分の向かう先が解らない不安があるからだよ。
現実、お互い数年先も見えない業界にいるし、見えたとしてもこの時勢じゃ簡単に裏返る。不安に思うだけムダだ。でもそれは仕事だけの話で、自分の人生の全ての話じゃない。自分が楽しんだり、幸せになる所から見えてくる生き方や仕事もあるだろう。
長く付き合ってきたけど、同棲も始めたし、1年一緒にいて問題がないなら結婚しないか?
そのために、まずはこの1年間で結婚の情報集めをしてみよう。これぐらいなら具体的に考えられて、行動できることじゃないか? そうやって何か大きいことをまとめながら小さい所を考えていけばいい。』
とか、確かそんなような事をいって、さり気なくプロポーズに巻き込んだ。
答えはYESだった。
彼女は落ち着きを取り戻し、安定した日々が続いた。目の前の小さなこだわりから大きな流れに目が向いたからか、彼女のやる気は俄然出てきていたようだった。
ちょっとずつ将来のことをお互いに考えたりと、充実した期間だった。
そして一年後、私たちは小さな結婚式を挙げた。
■今だから分かること
非常に軽いので当時は分かりませんでしたが、自閉症スペクトラム(アスペルガー)の特質のようなものが目立っていた時期なのかもしれません。
現在の彼女も不安なことが起きたり、季節の変わり目などの体調の変化が起こると、その原因や何が起こっているのか解らず、静かにパニックを起こしていることがあります。ただ、それが非常に小さく静かな混乱のために周りが気が付けないことも。
彼女の場合はそれが職場での人間関係でも起きていて、理想と現実・自分の想いとスキル・将来の夢と不安が入れ混じり不安定な時期となっていたのだと思います。
『結婚』はイベントではなく、人生設計や将来設計の舞台選びの様なものです。妻は私との『結婚』を舞台として、やや具体的な将来像や目標を意識できたため、曖昧な問題だらけの現実が軽くなったのではないでしょうか?
説明のために必要だったのでさらっと書きましたが、やはりプロポーズの言葉は恥ずいです。
【つづき】⇒~懐妊~
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