叱られた時に黙りこんでしまうのは、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に限らず、定型発達者(いわゆるふつう)の方でも、また大人でも子どもでもしばしば見られることだと思います。
特にその性質上、子ども同志の集まる場所では、伝染しやすい様な気もします。そして、特性上、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方は起こりやすく、深刻化しやすいのではないかとも思っています。
“しゃべり出し”と“泣きだし”の感覚誤認
妻は幼い頃からこの感覚を持っていた様です。結果から先に言うと、妻はこの感覚を正確に認知し、自分の意思で塗り替えに成功しました。その後、同様な状態に娘が陥っていることが分かると、自身の感覚や体験を元に娘に説明し、解消することに成功しています。
彼女たちに何が起きていたか?
悪い状況に陥った時、対話をする意思はあるものの、しゃべり出す時の喉や気道の感覚から、それに近い『(あ、泣き出しそうだ)』と言う感覚を取り違えてしまう状態だったようです。結果的に言葉をしゃべり出せなくなり、沈黙を続けてしまいました。
特に必要以上に責任を感じていたり、そこにある事実が『0か100か』などの両極思考で極大化されている時に起こりやすい傾向にありました。
妻がこれをどうやってクリアしたのかと言えば、まず自分がそう言う感覚に陥っていることを自覚した上で、それがあっているかどうかに限らず【これは泣き出しそうなんじゃない。勘違いだ】と思い浮かべて決着をつけた事にあります。
娘にそれを説明した際は
見えないからそこに問題はない理論
意外とこれは一般の方の中にも、時折仕草となって現れている方を見受けられます。例えば気まずい状況になり、バレた時に反射的に目を逸したり、髪に触れる様にして手を顔の前に上げ、相手と自分の間の視界を狭めるなどの仕草です。
【相手の怒りの顔を見たくない】という心理もあるのでしょうが、私の持論としては相手への視界を狭めることで、相手から目立たないようにし、【見えないからそこに問題はない】と状況を整えているのではないかと思えることがあります。
もちろんこちらが見ないようにしたからといって、相手には丸見えなのですが、これは大人でも反射的に行う矛盾として持ってるようです。大人は大きくなって精神的に強くなったり、知識が増えることで常識的に行動しているようですが、幼少期に設定した選択方法は、意識しない限りそれほど変化していきません。
自分の視界を狭めることで、相手からも目立っていないように錯覚するのは、自分と他人との境界線が甘い幼少期に陥るパターンとよく似ています。
これらの系統としては、聞こえていないふり・頑なかつ大げさに関係がない事をアピール・怒鳴ることで言葉をかき消す・超逆切れで責任ごとひっくり返す……などといった方法論が考えられます。
ここでも責任に対して、両極思考などで極大化してとらえられていると取り付く島もない様に感じられますが、そうである場合はまず責任や自体の重大さを明確にする必要があります。
まずは普段から『あなたを否定するわけでもダメだというわけでもない、もっといい方法があるから聞いてくれる?』などの前置きを多用したり、何に対して不安を持ちやすいかを確認しておくことが重要です。
実はこのパターンでの沈黙は、周囲に伝染しやすい性質があります。なぜなら、この方法は性格や人間性の問題以前の、選択方法の一つだからです。性格や人間性を変えるのは難しいですが、こうした選択を取り入れるのは簡単です。特に消極的で効果が見込めるものや、独特な刺激をもつ選択はスッと入りやすかったりします。
わが家では娘がこの傾向が強く、次男に強く影響を与えましたが、逆にただの選択であったことから、そこさえ分かれば自覚させることは容易でした。
なにを言ってもムダだろうから……
ASD当事者の場合は、その特性や気質から問題を大きくとらえてしまい、【あやまる】などの行為が、是か非かの断罪の場であるにとらえて萎縮してしまったり、【許してもらうなんておこがましい】と自己評価を下げた状態で萎縮してしまうことがあります。
それとは抜きに、【怒らないから言ってみなさい⇒理由を告げる⇒何でそんな事したんだゴッハァ!】と、逃げ道を失わせる叱り方をしている人に、本人が諦めているなんて状況もあります。(さらに『言わないと怒るよ!』の合わせ技で、ダブルバインドを見事に形成する方法を無意識に行うマッドな方も……)
どちらも本人が何故『なにを言ってもムダだろうから』と考えるようになったのかが重要になります。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。