※これはわが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者の特性です。すべてのASDの方々に共通するものではありませんし、同じような行動があるからといってそうであるという根拠にはなりません。
よく自閉症スペクトラム症(アスペルガー症候群)の方の特徴にあげられるものの中に、【空気がよめない】という項目があります。
だいたいは周りの流れが見えていなかったり、前後関係を含めて現状を認知するよりも、今注目しているものの方が強く認識されてしまうために起こっているように思えます。
だいたいは周りの流れが見えていなかったり、前後関係を含めて現状を認知するよりも、今注目しているものの方が強く認識されてしまうために起こっているように思えます。
わが家の当事者3人には、それとは別にちょっと独特な【空気がよめない】行動があります。
それは
【なんで今、わざわざそれをやるんだ……】
と相手に思わせるような、空気を読んだ上でのすれ違いです。
“空気読みすぎ”と表現すると近いかもしれません。
“空気読みすぎ”と表現すると近いかもしれません。
今回は子どもと妻とに分けて、よく見られる特徴と心理、その時の対策などをまとめてみたいと思います。根本的に認知の仕方などは大人と子どもも同じですが、知識でのカバー率に違いがあるので、参考程度に分けています。
子どもの【空気読みすぎ】パターン
・ふだんはお片付けをしないのに、出かける準備をしていたら、それを勝手に片付けてしまう。もしくは『これがいるよね?』と、全く見当違いな上に、片付けが大変なものを引っ張り出してくる。
・大人がなにか道具を使って作業をしている時などに、“それは次に使うつもりで置いておいた”ようなものに限って持って行ってしまう。
・これから進もうと思った先をうろちょろし、いつも進行方向を遮ってしまう。
・狭い道で車が来た時、なぜか大人とは反対側の路肩へ横切って避難しようとする。
・買い物中などで、トイレから一番遠くなったところでトイレに行きたがる。
・下の子などの世話をしていて、ジッとしてて欲しい時に限って、その子どもを興奮させるような物を持ってきたり、注意を引くような言動をとってしまう。
【いい方向に出ているパターン】
保育所などでのおでかけや、室外に移る時などを察知すると、いち早く靴を準備したりすることがある。
保育所などでのおでかけや、室外に移る時などを察知すると、いち早く靴を準備したりすることがある。
【ミラクル番外編】
父親が着替え出したのを見て、『おでかけだ!』と判断するも、同時に『でも、なにか悪いことをしていて、置いて行かれるかもしれない……』と邪推しパニックに陥る。
父親が着替え出したのを見て、『おでかけだ!』と判断するも、同時に『でも、なにか悪いことをしていて、置いて行かれるかもしれない……』と邪推しパニックに陥る。
わが家の上ふたりの子どもの共通点は、必要以上に大人の行動を意識している点です。長男の場合は4歳位からこの傾向は薄くなり、無用な行動のロスや気疲れなどがなくなっていきましたが、娘は5歳頃からエスカレートしていっています。
この行動に走るのには大きく分けて2つのパターンがあります。
A【苦手な事を意識するあまりに考えすぎている】
B【ハッと気がついたものに目を奪われたり、心動かされ事実以上に大きく捉えてしまう】
A【苦手な事を意識するあまりに考えすぎている】
B【ハッと気がついたものに目を奪われたり、心動かされ事実以上に大きく捉えてしまう】
Aは依存状態が強くなるような、体調不良時や何かしらの不安が強い時に起こりやすくなる傾向があり、考えすぎることでまた疲労していくこともあります。場合によっては体調や情緒のバロメーターになることもあるので、視点を変えれば“心理が分かりにくい幼児ASDの、数少ない情緒のヒント”にもなります。
注意力が発達段階である子どもの場合、Bの方が頻度としては高いのではないでしょうか?
ハッとする度合いが高かったり、その行動の真意や意図をよく理解していない時に、極端な行動につながっていることがよくあります。
ハッとする度合いが高かったり、その行動の真意や意図をよく理解していない時に、極端な行動につながっていることがよくあります。
子どもの【空気読みすぎ】の対処
真意や意図を汲み取れていない物は、“そのうち分かるだろう”とは考えずに、事細かに教えておきます。
例えば先に挙げた【狭い道で車が来た時、なぜか大人とは反対側の路肩へ横切って避難しようとする】の心理としては、【車が来たら離れて端に寄らなきゃいけない】と憶えているから反応したわけですが、車が来たという瞬間的な判断を求められる焦りから、【離れて端に寄らなきゃ】が大きく強くなったわけです。だから今いるところからわざわざ離れて、対面の路肩に走ろうとしたと考えられます。
これに対しては【車が通る時にぶつからないように道を開けるのが目的。近い方の端っこに寄ればいい】と、絵に書きながらや、人形などを使って視覚的に理解してもらいました。
“そのうち自分で理解するだろう”と思っていると、自分の手の内の答えを使いまわしてしまって、“人のふり見て我がふり直せ”が出来ないのも特性だったりします。今回のようにひとつひとつのケースにいちいち教えていく方が、記憶の特性からも混乱を生まないのでスムーズです。
その時に“~~と同じだよね”と、すでに認識しているものに近いものと結び付けられるように促すと、認知がより明確になっているような気がします。(状況把握になるべく多くの可能性を思い浮かべられるように癖付ける狙い)
その時に“~~と同じだよね”と、すでに認識しているものに近いものと結び付けられるように促すと、認知がより明確になっているような気がします。(状況把握になるべく多くの可能性を思い浮かべられるように癖付ける狙い)
お出かけの際の行動などに関しては、本人自身にも準備をさせ、【人のことは自分のことが出来てから】や【人の手伝いは本人に許可をもらってから】など、本人の目的意識を本人の行動に向けさせるように誘導しました。
なかなかに幼いうちは、目に入ったものが全てになってしまうので、自分の目的を忘れてしまいますが、本人が調子に乗り過ぎないように気をつけながら、出来たことを適宜褒めることでポジティブな印象を地道につけていくのが結局近道だったような気がします。
【それはやらなくていい!】はなかなか憶えてもらえませんので、本人の目的意識を強めて、忘れてもらった形です。
【それはやらなくていい!】はなかなか憶えてもらえませんので、本人の目的意識を強めて、忘れてもらった形です。
妻の【空気読みすぎ】パターン
・こちらが疲れていたり体調不良の時に限って、妻の方が子どもたちや家事などの対応がおざなりになり、問題が起こったりフォローに回らされたりと、ふだんより大変になる。
・これからちょっと頑張らなければいけないことがある時に限って、表情が硬くなり口数が減り、思考力が低下していく。
・大事な用事に向かう時に限って、やらなくていい家事を同時進行しようとしたり、考え事に支配されていっぱいいっぱいになる。
・スケジュールが混んできた時に、全てを同じような力で受け止めてしまい、どれも回しきれなくなってしまう。
・こちらが問題に巻き込まれたり、悩みを抱えていることを知ると、こちらより深刻な表情になってしまい、むしろ妻にフォローが必要になる。
子どもたちがBパターンが多いのに対して、妻の場合はAパターンが圧倒的に多くなっています。特に本人が苦手意識をもっている【落ち込んでいる人への対処】や【物事の優先順位付け】に関わることになると、一気に余裕を失ってしまいます。
その時の傾向としては、頭の中だけでなんとか答えを出そうと考えこんでしまい、フリーズ状態になっていることが多いのが特徴です。こういった時は紙に書いて整理したりすれば、数十分で解消されることが多いのですが、本人にはそれを思い出せる余裕はありません。
また、同時進行しようとしてしまう心理としては、【これさえ終わってしまえば集中できる】と、結果的に今やらなくていいことを優先してしまうところにあったりします。
ポイントは【自分でなんとかしよう】と焦る気持ちがやり過ぎを生んだり、パンク状態に陥っていることでしょうか。
妻の【空気読みすぎ】の対処
苦手意識が一度つくと、なかなかそれを消すのは難しいものがありますが、そういう時ほどシンプルで明解な対処法を与えられると、冷静にそれを遵守しようとするので、越えられるきっかけになることがあります。
まずはその焦りの元となっている【苦手意識】は、一般的な人間として適切かどうかをよく聞き取ります。たいていは言葉の取り違いもあれど、必要以上に深刻に捉えていたり、不安に感じていることが多いです。
【着地点が無茶であれば、いつまでも着手事態が怖くなる】
といった感じでしょうか。定型の場合はこういった時に、複数同時に他の方法論も浮かべているので、時間はかかってもフリーズまでには及びません。しかし、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の妻は、だんだんとその焦りが大きくなるに連れ、それが全てになってしまうのです。1問題に1対応策だけで挑んでいるので、すぐに【詰む】状態です。
対処法としては、紙に現状を書き出してもらい、ワーキングメモリ使用を抑えることで、浮かんでは消え浮かんでは消えのループを解くようにしています。
例えば一枚の紙に線を引き、3つの部分に分けます。
そして【するべきこと(おきてること)・考えられる対処・助けて欲しいこと】と割り振って書き出してもらいます。その際、厳密に正解ばかりを考えず、連想ゲームのように思いついたことをメモしていくつもりで書いてもらうと、過去の成功体験を思い出すこともあります。
そして【するべきこと(おきてること)・考えられる対処・助けて欲しいこと】と割り振って書き出してもらいます。その際、厳密に正解ばかりを考えず、連想ゲームのように思いついたことをメモしていくつもりで書いてもらうと、過去の成功体験を思い出すこともあります。
視覚優位の特徴が強い妻の場合、たいてい書き始め数秒で落ち着きを取り戻します。
本人が“そんなことしなくても別にできるし……”とか言っている時のほうが、実は効果がでかいのも特徴だったりします。
本人が“そんなことしなくても別にできるし……”とか言っている時のほうが、実は効果がでかいのも特徴だったりします。
定型家族としての捉え方
忍耐だけでなんとかしようとか、愛情をもって見守るとか、いきなり言われても困惑するでしょうし、そういった【理解を!】一辺倒を押し付けられると、返って心に余裕がなくなりかねません。
何の下地もなくいきなり“理解する”というのは、新たな観点を無理に入れることになりますし、そういった時に人間はどうしても過去の考えを押しやるために【間違ってたんだ】と思い込もうとするところがあります。
いきなりここからスタートしようとすれば、自己評価は下がりやすくなり、余計に心の余裕を失っていくことになりまねません。
いきなりここからスタートしようとすれば、自己評価は下がりやすくなり、余計に心の余裕を失っていくことになりまねません。
自閉症スペクトラムについての知識をまとめた、Blogやサイトでは【発達障害の一番の対処方法は発達障害と本人の特性を知ること】とありますが、まさにその通りだと思います。
“なんでわざわざこんな時にこんなことするんだろう”
“なんでそんな事、わざわざ今言ってくるんだろう”
“なんでそんな事、わざわざ今言ってくるんだろう”
そんな風に感じた時は、当事者本人の焦りや不安を見つけられるヒントタイムだと思うと、突発的に取った行動であるだけに心理をよく写していることがあります。時にはASD当事者自身は、自分のそういった不安や焦燥感を理解できず、それを主張するようにぶつけてくることもあります。
いきなり理解は無理ですが、【何が怖くて、何が不安で、何が分かっていないのか】を理解するのは、先に進んでいる手応えなどが感じられるので心理的に余裕を持てるようになる気がします。
【関連記事】⇒その他の具体策
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夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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