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手記

自閉症スペクトラムで謝るのが苦手な方へ【謝りかた詳細版】

2014-07-07 Category:手記
以前書いた謝り方の記事が想像以上の反響をいただきまして、ちょっと驚いています。
今もちょくちょくとメールでのお問い合わせが続いていますし、先日コメント欄にもご質問いただきました。
今回、もうちょっと踏み込んだ書き方で、今までいただいたご質問への回答にさせていただきたいと思います。

【謝る】の意図・意味

“謝る”と言うのは、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方にとって、その特性から非常に難しく感じられることがあるようです。
では、その逆の場合はいかがでしょうか?
【ありがとう】の場合は、【ごめんなさい】に比べて、よい意味でタイミングよく返していることがあるのではないでしょうか?
例えばもらったプレゼントに対して、いくつかの想いがあったとしても、経験上の慣例として深く考えずに【ありがとう】を返すなど。
その時の【ありがとう】は、礼儀として【もらったら・なにかしてもらったらお礼を言う】と言うルールです。この時、【言わないと関係が悪くなる】【言った方がよくなる】と因果関係がハッキリしています。
では、
同じく【言わないと関係が悪くなる】【言った方がよくなる】と因果関係がハッキリしているのにも関わらず、【ごめんなさい】はなぜ言いにくいのでしょうか?
この言いにくいさは、【ごめんなさい】の使い方の本質を極端に捉えている可能性があります。
【ごめんなさい】は【御免なさい】です。許しや許可を得るための言葉で、室町時代から、慣例として複数の【許可申したて】の意味をもった意味で使われているとのこと。
つまり【ちょっと前通るね】を【御免】ですませたり、【口で教えるより今やって見せるから、その道具をちょっと貸してね】の意味で【御免】と手を伸ばすなど、様々な状況で使える便利な慣用句のようなものです。
これは【ありがとう】と同じく、意味が分からなくてもとりあえず言っておくと【大問題には発展しにくい】タイプの【おことわりしておく】になります。
では、【ありがとう】をいいすぎる人はどうでしょう?
一見、よい言葉ですが、必要以上の感謝は重たくなります。ちょっと道を譲っただけなのに、涙を流しながら“ありがとうありがとう”と来たら戸惑いませんか?
でも【ありがとう】を上手く言える人の場合、間髪入れずに言ってくるのに心地よく感じると思います。
【ありがとう】は【有難う】で、本来は“その場に有ることが難しい”などの珍しさを喜んだりする意味です。
これが時代の流れに合わせて、相手の行為や気持ちが自分に向いていることを、言葉にして【相手の心遣いに気がついている】事への感動や喜び表現を簡略化していったものです。
つまり、上手い人の【ありがとう】が心地よく聞こえるのは、自分の気遣いや便宜に気づき・受け入れたことを、言葉で形にし、認識させてくれるからです。自分の思いや親切に気がついてもらえるのは嬉しいことですから。
同じく【ごめんなさい】も、相手に対して自分がその問題を受け止めていることや、責任を感じていることを言葉にすることで具現化し、無視や逃避の意思がないことを伝える意味があります。そして、あなたの謝意や状況説明を聞いてもらう『時間や発言の許可を得る』作業でもあります。ただただ詫びることや、反省するためだけの言葉ではありません。
この“責任を感じている”意思表示をしないと、相手は困惑します。なぜならあなたが【当事者意識がない】と宣言していることと同じだからです。
もし、この段階で断罪や白黒つける様な重大事に取り違えていると、最初から相手とすれ違うことになり、許してもらうのが難しく感じられるようになってしまいます。
【ごめんなさい】がうまい人は、単に謝罪ではなく、こうして生まれているさまざまな状況に、この言葉がいかに多くの意味をはらんだ便利な言葉であるかを知っているのです。
そして、ここが結構大切なポイントかもしれませんが、
【ごめんなさい】や【ありがとう】には、明確な度合いを指すものがありません。あくまでいい方や表情、態度からその度合を、お互いに推し量るように出来ています。

なぜ【ごめんなさい】は言いにくい

まずASDの方に見られるのは、この【ごめんなさい】をただの慣用句だと思わずに、いきなり断罪や懺悔、自分の罪を見つめ直す事に向いている傾向にあるということです。
そして、もうひとつは【相手の目や表情に過集中してしまい、余計に硬直してしまう・逃れたくなってしまう】と言う点です。
これは相手も同じことです。
慣用句としてあなたが【問題が起きているのを認める気があるか】と見ている時に、あなたが【やってしまった】【どうしようどうしよう】と硬直して慣用句を使わなかったり、本来の意図以上に重くして混乱していたら、相手も困ってしまいます。
さらに言えなくて黙っていたり、気まずくて目をそらしたりすると、相手はあなたの頭の中が読めませんから“なんであらまらないんだ!”となりかねません。
結果、あなたの混乱に相手は真顔もしくはいぶかしげな顔になり、それを見てあなたも余計に気まずくなっていたとしたら、お互い全く無駄な時間になります。それらの体験も上乗せされて、次回からまた【ごめんなさい】が言いにくくなってしまう可能性もあります
逆に【ごめんなさい】を言い過ぎてしまう方の場合は、人に何かしてもらったり、代わりに考えてくれたような場合まで“申し訳ない”など重く感じていることがあります。
本来は軽く【わー、ありがとう】でよいのに【ごめんなさい】を言われると、言われた側は違和感を感じたりします。なにかしてもらったら【ありがとう】、なにかをさせてしまったら【ごめんなさい】なのですが、この“なにかをさせてしまった”を、“そうさせてしまったのは自分の至らなさが……”とかやり始めるとすぐに迷子です。
ふだんの軽いやり取りのケースから、【ありがとう】を軽くさらっと適切に増やすケースを考えておくと、良い練習になるかもしれません。
意外とありがちなのは【ミスと迷惑(迷惑をかけた)】の範疇に【感謝(なにかしてもらった)】まで入り込んでしまっているがために、バランスが取れなくなることです。
また、言葉やタイミングは適切なのに、態度や表情が重過ぎて、相手が構えてしまうこともあります。特にこういった時の相手の“違和感の表情”や“引く反応”などに敏感なタイプの方は、そこで起きた事実以上に“恐怖”を感じてしまいます。
極意のようであやふやな表現かもしれませんが、
社会での言葉のコミュニケーションには
発した言葉が【その場ですっと流れる】のが理想で、
言い方や表現方法に目がいくと、そこで立ち止まられてしまう
を意識するとよいかもしれません。
要は【誠意はしっかり、表現はやや軽く】でしょうか。
良く分からない場合は、相手が怒っているような時以外は、ふと【ごめんなさい】と言いたくなった時に、【ありがとう】に言い換えられるかを試して下さい。ほとんどの場合、ちぐはぐにはならないはずです。
一般的には“相手の心遣い”への感謝になりますので、軽くミスを指摘されたケースでも“教えてくれてありがとう”になります。
ここから分かるのは、ほとんどの注意や叱られは、認識や意識、考え方の指摘であって、断罪ではないということです。なので、“なにかしてもらった”状態なのに、許可や許しを得るための“ごめんなさい”が来るのは、相手はちょっと困惑します。

【ごめんなさい】のタイミング

以前記事に書かせていただきましたが、まず、【ごめんなさい】には大きくふたつの用途があります。
まずひとつは【怒りを鎮めるごめんなさい】。
慣用句として、相手に誤魔化さない意思や、問題を察知していることを伝えます。そして、少しずつでもそれ以上怒らないように止める効果を狙います。
タイミングは発覚後なるべく早く。相手が怒り出す前ならめっけもの。怒られるかどうかは、どうせ後で怒られたり気まずくなるなら、先に伝えておく方がはるかに合理的です。
出来れば【ああ、ダメになるかも……】の時点で言えると相手も助かる可能性があるので、手に負えなくなりそうな時点で言うのがベスト。
『もしかしたら、〜〜になっちゃいそうです。……そうなったらごめんなさい』
など、一言おことわり風に言うと、相談と同じ効果が生まれるのでさらに良しと思われます。
ここではスムーズさを重視して、謝意や状況説明、申し訳なく思っている気持ちを伝えましょう。
コツはとにかくあなたがオドオドし過ぎず、慣用句であることを忘れないことです。報告を柔らかく伝えるための便宜だと思ってください。
(例:〜〜だと思い違いをしてました。ごめんなさい)
【怒りを鎮めるごめんなさい】は、積立可能なので、一度で諦めず複数トライできます。余裕がありそうなら、その規模に合わせて、最初は軽目に伝えて様子を見ても良いでしょう。
よくあるつまづきは、相手を軽くしていく手段の【ごめんなさい】を、一度のトライで成功しなかった時点で“許してくれない”と勘違いをしていることです。
怒る方も怒られる方も、状況を整理していく時間です。【ごめんなさい】という慣用句を語尾につけたりしながら、どう思っていたかなどの状況を伝えましょう。
また、重すぎる【ありがとう】が不快なように、必要以上に重たい【ごめんなさい】はより相手に事態を重く感じさせます。
気づき次第、まず目を合わせて【ごめんなさい】その時に頭を下げて、目線を下に向けて相手からそれたら、現状を伝えはじめると、視線での硬直も起きにくく、スタートのつまづき防止によいかもしれません。
とにかく滑り出しを早くスムーズに出来るよう工夫することだと思います。
もうひとつの【ごめんなさい】は、【許してもらうためのごめんなさい】です。
タイミングとしてはケースバイケースですが、怒りが静まって来たり、ある程度の会話が済み勢いが止まった時が一般的です。
また、例えば【……今後は気をつけてよ】とか、【もういいから他のことやってて】【いい加減にしてよね】など、捨て台詞に合わせると近いかもです。
その時は最敬礼。『本当にごめんなさい』とか『すみませんでした』と頭を下げましょう。
一番良くないのは、この時に何とか取り繕おうとして、そこに意識が行き過ぎることです。パニックに陥ってしまい、フリーズしてしまう可能性があります。最悪、しなくていい言い訳や、余計な一言を生み出しかねません。
相手は一旦落ち着いて事態の収集をはかろうとしてくれているのに、あなたが自らパニックのループにハマれば、そのフォローもさせることになります。
意外とここで火に油を注ぐことになっている方もいるのではないでしょうか?
そうなる原因の多くは、【ごめんなさい】の意図を忘れていることにあると思います。
断罪の場ではありません。それは発覚の最初の段階で終わっています。その後は起きた問題をいかに早く終息させるかの段階なので、あなたが自分を責めてもなんの解決にもならないのです。

【もういいよ!】の意味

これに混乱される方は、ASDに限らず多くおられるのではないでしょうか?
この【もういいよ!】は
あなたを許したよ”ではありませんし、“あなたなんかもう居ない方がいい”などの全否定でもありません。
多くの場合は興奮した相手が、あなたの必死なすがりつきに反省の色を見ようとしていたり、“自分でやる方が早いか……ああ、それに気がついてしまったのが面倒くさい”だったりします。
場合によっては“ちょっとこっちの興奮が冷めるまで席を外して”な場合もありますが、その場合はストレートに“あっちいってて”と言われない限り、先読みすると不信がられます。
いわばオープンクエスチョンの様な、曖昧語の一種です
この意図を完全に読みとろうとする必要はありません。
私が【もういいよ!】で止められた場合は、【それでは申し訳ないです、何か出来ることをさせてください】など申し訳ない気持ちをそのまま伝えて、相手の出方を待ちます。
【あっちいってて】なら最敬礼。一旦距離を取ってクールダウン。相手が落ち着いた頃に許してもらうための【ごめんなさい】です。
何か指示をもらえるのなら、それはあなたのことも考えてくれている証拠ですので、まずは【ありがとう】です。冷静に受け止めて、頭を実行に切り替えましょう。
【ありがとう】は相手の心遣いや便宜に気づいたことの表現でもありますから、状況的にはこれを言えるチャンスがあるのは、柔らかい方向に流れるきっかけにもなるので個人的に美味しいと思ってます。

簡単にまとめると

【ごめんなさい】と【ありがとう】の使い方と範囲を知っておく
最初の【こら!】で断罪は終わっていて、そこからは謝意と状況を伝えて相手の混乱を取り払う時間
【怒りを鎮めるごめんなさい】は速度とスムーズさ重視。
気持ちは真摯で表現はやや軽く。冷静に状況や間違っていた原因を延べて、語尾に【ごめんなさい】くらいで良し。集中すべきは“こうなっちゃった原因をどれだけハッキリお互いに理解できるか”で、取り繕いなどは逆効果。
【許してもらうごめんなさい】は相手の話が終わってから。
冷たく聞こえる捨て台詞があったら、分かりやすいヒントなのですぐに最敬礼。
必要以上に重苦しい表情や言い方・オドオドは、相手に余計に問題が重いものであると錯覚させるので、状況整理に頭を切り替える。
となります。
心の強さやコミュニケーション能力というより、この習慣や仕組みを知っているかが大きい気がします。
この辺は習うものでもないので、マニュアルを見なくてもパッパとできる定型タイプは、空気から取得したわけです。仕組みやあり方を知れば、無駄に不安になることも少なくなるのではないでしょうか。
ただし、これらのとおりに【これさえやっておけばいい】と、ただただ謝るだけなのは恐らく最悪な事態になるでしょう。大切なのは、【自分の謝意や状況を伝え、相手の混乱を鎮め、その上で許してもらう】というコミュニケーションの部分です。

子どもに説明する場合

・注意や叱られは、“起こった悪いこと”が問題で、悪い子だと言われているんじゃない。
次に起こさないように、お互いにお話するための時間だ。
・怒られるのが嫌で、早く終わらないかとウンウン言ってても、早くは終わらない。
大人の話が続くのは、君がわかったかどうかの顔を見ているから。聞いてるフリよりも、なんでこうなったかを分かろうとしよう。
・前に“ごめんなさい”をして、許してもらえなかったのを気にして謝れないでいるなら、それはすぐに諦めたからうまくいかなかっただけ。
・“こらっ!”で怒られるのが一番辛いところは過ぎてる。嘘ついたり、誤魔化そうとすると今度はそれを怒られるから、一番つらいところを何度も自分で作っている。
・“今度からこうしなさい”は、嫌がらせじゃない。同じ失敗をして、お互いに今みたいな嫌な気持ちにならないように、優しくなれる提案をしている。
などがうちの場合は効果的でした。
問題はなぜ口を開こうとしなくなるのか、誤魔化そうとするなら何を守ろうとしているのか、何を変えるのが嫌だと思っているのかに注目すると、話を聞くための興味のポイントを見つけられました。

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    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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