ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:軽度アスペルガーな長男

長男

小学2年生:人に合わせるスキル特化・関係の希薄感│隠れ受動型アスペルガーな長男

2014-10-15 Category:軽度アスペルガーな長男
自分の気持ちや意見を言えないまま、ただ合わせ続けたために人間関係のバランスを壊し、自らいじめの種を蒔いていた長男。そのパターンも断ち切り、交友関係は改善され、家庭での雰囲気も一層軽くなった感触があった。
以前よりも自分の気持ちや意見を、家庭でも口にするようになったし、体調を崩すほどにクヨクヨと悩みこむ事も無くなりつつあった。
─── しかし、時折感じる独特な距離感。
上手く口では表現できないが、まるで“余裕があるときだけ、必要な社会性で付き合っていた”と言うような、今まで仲良くしていた事が【約束事の産物】であるような関係の希薄感。ふだんは仲良くしているし、自分からくっついてきたり、冗談を言いながらじゃれあうような親子関係を保てるが、ある日突然、心許さぬ他人のような距離感を見せてくる瞬間がある。
それが何故なのか、なぜこちらもそう感じてしまうのか、親でありながらこの頃は分からなかった。
■今だから分かること
この問題が解決するのは3年生の夏休み終わり頃です。
実はこの独特な距離感は、私がかつて妻に感じた『一緒にいても、ひとり』と言う様な、孤独感を煽ったり感情を剥離させるに至った感覚に非常に似ていたのです。
この頃の彼に感じていた独特な距離感は、何層にも渡る認知のズレや物事の極端なとらえ方が原因となっていました。
これらの認知のズレへの対策は、様々な事に及んでくるのでここでは書きませんが、その多くは【この感覚はなぜ起こるのか】が分かれば、本人はもちろん、周囲も一気に快方に向かうことが多かったので、今回はこの【独特な距離感】についてまとめてみたいと思います。
一口に受動型的な反応であったと言ってしまえばそうなのかもしれませんが、ザックリまとめると見逃してしまう事が多いので、あえてほじくってみたいと思います。

合わせている事を悟らせない

年齢の割に大人とノリの良い会話を、テンポよく展開したり、思わぬツボをついてきて盛り上げたりしていました。初めての人には、非常に会話運びがうまい印象すら与えます。
しかし、何でもない学校での報告や、連絡事項で説明する時など、一定のノリの良さを求められない会話ではしどろもどろ。当初これは“ただのお調子者”としか思っていませんでした。
ここに存在していたものは、長男本人も把握していなかった、彼の最大の特徴であり最も問題に繋がりやすい、ひとつの個性でした。
【受動型的な立場にいる事が彼の世界観】
受動型的な”と表現したのは、完全に傾倒している訳でも、バッサリと別れるわけでもなく、単に彼が自らの立ち位置の取り方を、独特な視点で捉えていたために起きていたものだからです。つまり、【そういう様にしかできない】のではなく、【結果的にそういう言動になっていた】という点です。
受動型アスペルガーの特性として、よく挙げられるのは【自らの考えや気持ちを持とうとせず、人に合わせることで社会的に自分を保とうとする】と言った部分ですが、長男の場合は突き詰めて解析していけば正にその通りの言動を取るのですが、では自分の気持ちが本当にないのかと言えばそうではなく、彼なりの葛藤の上で導き出された答えの連続でした。
【この意見は場に添っていないかもしれない】
【この気持ちはこの“言い方”でいいのだろうか】

【この意見は間違っているかもしれない】

わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者3人に共通し、また彼のこの時期の最大の特徴とも言える、【正解・不正解への両極思考】です。しかし、これだけであればいくら私でも、見抜けていたはずです。……なぜ、彼にこんなに余裕が無いのかを。
【合わせている事を悟らせない】
彼の最大の特徴を、最大限“見えないようにしていた”のは、彼のこの考え方でした。
なぜそれを悟られてはいけないのかといえば、彼も分かってはいなかったのではないでしょうか?
では、一番近くでぶつかってきた私が、彼のこの“悟らせない”発想がどこから生まれてきたと想像するなら次のようになります。
■演技がかった合わせ方をしていると、バレて指摘されてしまう

⇒“叱られる”などの度合いは無視で、【是正=否定】という両極思考で抵抗を感じる
■“人に合わせている”自覚は非常に薄いがゼロではない

⇒自分の意見の反映や状況の実感などが薄まる事で、小さな不満や問題意識がある
■上記2つを中心として“ややこしい”があるので問題とする

⇒自分でも説明のできない問題意識なので、説明をする必要も悟らせる必要もなく、結果的に悟らせない方が関係はスムーズである
これらをほぼ無意識のうちに、これまでの周囲との摩擦(ここも両極思考で必要以上に印象がクローズアップされている事がある)などの経験値から、自然と問題にぶつからない選択方法を感覚的に獲得していったと言うことです。
子どもがそんなに難しい事を?】と思われるかもしれませんが、上記を無意識的に気にしていて、かつ、相手の出方に合わせて会話のポイントを拾う事に専念すれば、それは会話中に“会話について思考する必要がない”ので、高度なテクニックが要求されるものでもありません。
そして問題なのは“そうしか出来なかった”のではなく、“その方が無難”と選択したのは、何故だったのかと言う点です。

外モード・内モード

ASの子どもに言われる特徴で(大人も当てはまる方はいますが)、【外で問題のない子は、家で問題になる事があり、その逆もまたしかり】というのがあります。全てそうであるとは言えませんし、あまりにASDの個々性の範疇は広いので一概には言えないものですが、特定の条件下・環境下ではこれを説明できるかもしれません。
わが家の長男の場合、外であまり大きな問題を起こすタイプではなく、また家でも問題を起こす方ではありませんでしたが、どちらかと言えば【外での消耗により、家で潰れる】事が多く、この無自覚な疲労感が原因となってパニック状態に陥っていくことがほとんどでした。
彼が【独特な距離感】を見せたり、まるで他人にするような必死な取り繕いが始まる時は、たいていその直近に環境の変化がありました。
小学校低学年ですので、まだ学校生活に不慣れであったり、自分の立場などを踏まえて環境に適応していく力は弱いものです。そこで人の言葉からの情報を上手く処理できなかったり、自分のやるべき事を見つけるのが出来なかった場合、自分がそこから剥離しているような実感を失った状態に陥るのは定型発達の大人でも同じことです。
彼の場合、その時の対応策が【周りに合わせる】しかなかったのではないのかと思えます。ただでさえ多くの集中力を奪う因子が散りばめられた【不慣れな教室】で、聞くべきこと聞き流すべきこと、集中すべきこと受け流すべきことを取捨選択するには、まだ経験値が足りなかったでしょう。
彼の外モードは【合わせること】だったのではないでしょうか。
その時間が長ければ長いほど、合わせるべき事が多ければ多いほど、合わせるパターンに傾倒していき、同時に小さな不満や問題意識をほぼ無自覚に膨らませていきます。そして、家では今度はその【切り返し】に戸惑います。
消耗が激しい時ほど、親との関係性に対し、友達にするような会話であったり、先生にするような話し方であったり、通学路で出会う見知らぬ大人と話すような態度であったりと何処かちぐはぐな印象があった時期もあったほどです。
そして、彼は必然的に【全ての環境で合わせていく方向へ】と進んでいってしまったように思えます。
結果、彼は通常時は“仲良く出来るお調子者モード”で、疲れてくると余裕を失ったり、合わせるべきモードの切り替えに失敗し、“失敗しないために合わせようとしていたのに”という自己矛盾の状態に陥っていたのかもしれません。
これは普通に生活していて、“ちょっと疲れやすい子なんだ”としか認識していなかったら、私は一生気がつけなかったのではないかと思います。この頃、ふだんの彼が明るかっただけにその落差に呑まれ、また問題として深く掘り下げていくことが出来ませんでした。これらのことも本当に【今だからこそ分かること】です。
外モード・内モードは少なからずほとんどの人間が持っているものだとは思いますが、その落差や振れ幅がどれほどであるかは、社会との付き合い方に“どれだけ自分の気持ちや感情に実感を持っているか”で左右されるのかもしれません。
※この辺りの問題がドガっと悪化し、グワバっと解決した記事はこちら

結⇒53:アスペ妻の記録~人は人、自分は自分~

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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