書いてある内容をちらっと
自閉用スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者や、また定型発達で個性の範疇とされている人の中にも、【こうした方がいい】と明白であってもやろうとしなかったり、【分かっていても、何故か動けない】と言う方がいたりします。
単に頑固という訳ではなく、理解できないわけでなく、また否定的な考えがある訳でもないのに、その場に縫い付けられたように動けない。これはわが家のASD当事者3人に共通で、特に妻と長男によく見られるパターンでした。
軽いものならいいのですが、特定の条件下で激しく悪化し、場合によってはこちらが強い言葉で当たるなどの刺激を与えなければ、自己復帰不可能に陥る事があります。
今でも完全に越り切れたわけではありませんが、頻度はかなり少なくなり、また陥ったとしても非常に軽く済むようになりました。その原因や陥るタイミング、そして抜け出すパターンも掴めていて、場合によっては自己復帰も可能になりました。
今回は長男と妻を中心に、彼らが【テコでも動こうとしない状態】の時、一体何が起こっていたのかをまとめてみたいと思います。
混乱のパターン
彼らが【テコでも動こうとしない状態】になるのは、生理的に受け付けないような“信条に反する”事であったかといえば、むしろそうでない事の方が多かったように思います。どちらかと言うと本人も“なぜ、自分が今止まっているのか、それに従えないのか不明”となっている事が多く、その困惑もまたパニックの要因となっていました。
わが家のASD当事者たちが、ここに陥る典型的な背景を挙げるとすれば
【その物事が分かる分からない以前に、その前段階で何かしら認識のズレがある】
がほとんどだったように思います。
【その物事が分かる分からない以前に、その前段階で何かしら認識のズレがある】
がほとんどだったように思います。
例えば妻が掃除に対して苦手意識を持っていた背景に
・“片付け”と“清掃”の定義の混在
・何処までやるか何時までにやるかなどの目標を置いていない
・片付ける先を決めようとしない
などのズレているポイントがありました。
ここで特徴的なのが【そのズレに気がついていない】と言う点です。
なぜ上手く行かないのかの後ろに、考え方や取り組み方の違いがあると分かれば、すぐに動き出せるのですが、そこに辿りつけないのです。
なぜ上手く行かないのかの後ろに、考え方や取り組み方の違いがあると分かれば、すぐに動き出せるのですが、そこに辿りつけないのです。
【掃除】をするには【どこからどこまでの範囲を】【いつまでに】【片付け先に出ているものを片付け】【掃除機・拭き掃除などの清掃をする】と言う行程を踏みます。では彼女は片付けるのが嫌いなのかと言えば、片付けるべき先が分かっていて、名目があればむしろ進んで丁寧に完了できます。清掃に関しても範囲と程度、そして名目があればやはりしっかりと完了することが出来ます。
しかし、【掃除をして家を綺麗にしておく】となると、それが突然難問であるかのように固まったり、避けようとしてしまいます。
妻はこの時、掃除自体を嫌がっていたのではなく、実行するに至るまでの複数の【決めておくべきこと】をほぼ無意識のうちに、同時並行で頭の中に展開しようとして混乱し、早い段階で“分からない事柄”としてハングアップしていたようです。
さらに彼女にはASD当事者としての特性として、『0か100か』などの両極思考があったため、『出来なかった=罪』の様に必要以上に重く感じたり、また責任の所存や負うべき範囲を極端に受け止めがちでした。結果、掃除に対して浮かんできたいくつかの問題にハングアップしかけた瞬間に、【罪】を想起し不安を抱えていました。
さらに彼女にはASD当事者としての特性として、『0か100か』などの両極思考があったため、『出来なかった=罪』の様に必要以上に重く感じたり、また責任の所存や負うべき範囲を極端に受け止めがちでした。結果、掃除に対して浮かんできたいくつかの問題にハングアップしかけた瞬間に、【罪】を想起し不安を抱えていました。
なので【掃除】に対しては、何か大きなトラウマでもあるかのように抵抗感を見せたり、『そういうの苦手なんだよね』と言う悲壮な表情を見せるのが様式になっていたのです。
また、このパターンは長男や娘が成長するに連れて、段階的にアップしていく生活での【やるべきことの完成度】にもよく表れていました。共通しているのは対象の問題以前の、【どこまで】【どうやって】【どんな範囲を】などの問題ごとの様々なボーダーラインが、自分の中で明確なガイドラインになっていない状態で、かつ、自分がどこまで分かっていないのか分からない時に起こっていました。
結果的に完璧主義
完璧主義の弊害と言うと、私はどこか『物事に対して完璧を求めすぎて進まなくなる』という、ポジティブな取り組み方ならではの限界をイメージしていたため、始まる前から放り出しているわが家のASD当事者3人が【完璧主義に陥っている】とは夢にも思っていませんでした。
……道理で上手くいかなかったわけです。
彼らはその物事を【分からない】のでも【イヤ】なのでもなく、その前に立ちはだかる正体不明の抵抗感に、理由も分からないまま不安や憤りを煽られていたのですから。そういう時はそこに対して“やることの意義やメリット”を説いたとしても、根本的な不安感情などの原因を解決していないのです。
初めて来た真っ暗な建物内を、電気のスイッチの場所はおろか、電気がつくかどうかも分からないまま、さらに何階にあるかさえの説明もなしに特定の部屋に行くように促す事と同じです。
初めて来た真っ暗な建物内を、電気のスイッチの場所はおろか、電気がつくかどうかも分からないまま、さらに何階にあるかさえの説明もなしに特定の部屋に行くように促す事と同じです。
では、私が部屋の掃除をする場合に、先に書いた様な妻が立ち止まった【どこまで】などのボーダーラインを明確に意識しながらやっているのかと言うと、実際はそうでもありません。“なんとなく、これくらい”などボンヤリ考えていますが、終わりきらなければ規模を縮小するまでです。
【最低限を決めて範囲縮小】【最低限を決めて完成度下げる】【ある程度範囲を決めて先送り】などの着地点を複数あることを、作業の実行中にでも選択肢として意識できるからです。
【最低限を決めて範囲縮小】【最低限を決めて完成度下げる】【ある程度範囲を決めて先送り】などの着地点を複数あることを、作業の実行中にでも選択肢として意識できるからです。
わが家のASD当事者たちはこれらの“余裕”ともなる選択肢を、作業と同時に頭に置いておくことは苦手です。作業や物事に対して実行することや思考することが“全て”になってしまうため、途中での変更が難しいのです(シングルフォーカスな性質)。
ここに混乱のパターンである無意識のうちの【出来なかった=罪】が重なると、自分に対し極端な責務まで負ってしまい、相乗効果で罪の意識や自己評価の低下を煽ることになります(“0か100か”、“全か無か”などの両極思考)。
ここに混乱のパターンである無意識のうちの【出来なかった=罪】が重なると、自分に対し極端な責務まで負ってしまい、相乗効果で罪の意識や自己評価の低下を煽ることになります(“0か100か”、“全か無か”などの両極思考)。
結果的に作業の完了に関わるまでの過程に、完璧主義と同じく“完全”を求めるのと同じ方向に、知らぬ間に無意識のまま促されていることになります。
ズレへの個々性としての反応
妻と長男の場合は【テコでも動こうとしない状態】の場合、自分の気持ちもやるべき事も、そこに生まれる不安から、全てが“わからない”と繰り返しとらわれ、フリーズしたように無反応になったり離人状態になる事が多いのが特徴です。
対して、娘の場合は癇癪や反発、時によっては従う素振りを見せるものの、素振りだけですぐに手を離すようにして誤魔化すことがあります。先の二人との違いは、【間違う】と言うことに対しての反応が大きく関わってきていると思われます。二人は間違うことに対して【できない自分を責める】、娘の場合は【事実に対し、自分と違うことを責める】という論点です。
この二つは真逆の反応にも見えますが、根本的に【自分の可否を重く考えいる】事が要因であり、その引き金は【評価は他人がするものである】と、無意識のうちに極端に人目や人の評価を気にしている事であったりします。
つまり同じ血を引いた家族であっても、自己評価の低下に対し、自責にとらわれれば受動的に、そこを守ろうとすれば強く反発すると言う傾向に大まかに分かれている事になります。これらを主として、さらに【評価をうかがう人物の違い】【物事以前に関わってくる認識問題の規模】【その時の思考能力の余裕状況】【感覚過敏などの外的刺激】などの様々な要素が影響してきます。
本質的な部分と対策
【テコでも動こうとしない状態】に陥り、自ら状況判断をするために落ち着いて振り返ろうとしても、極端な状況の印象になりやすい上、自己評価に関わってくる問題になりかけていて、些細な事柄であっても瞬間沸騰的に“大きな問題”であるかのようにとらわれてしまう事があります。
では、実際にこの時、それ程に思考や感覚ズレが大きいものであるかと言えば、実は問題としてズレが大きければ簡単に否定できたり、違いを指摘できるので問題化しません。むしろそのズレが、小さく言葉に表しにくいような僅かなものである方が、処理する際に矛盾やズレ等が生じて引っかかるために余裕を失い問題化している気がします。
こちらから言葉を掛けて局面を脱した時の共通点は、この僅かなズレに気づけたかどうかです。【問題となる事柄に対し、まず意識を向けるのに邪魔になっているのは何か?】ということ。
例えば
普遍的に続けなければならないと印象づいていないか
実行する規模が極大化していないか
比較見当する対象がなく、問題意識が過剰に強くなっていないか
作業の一部分の話のはずが、企画段階クラスに飛躍していないか
などです。
これらはそれぞれ状況によって異なっては来ますが、基本的な対応策としては、問題や提案に対し、【それをする意図】【いつ・どこまで・理想的な結末】【全体の流れのうちの正確な区分】【類似の案や参考的な例】などを明確にする事が中心になります。
特に【それをする意図】【いつ・どこまで・理想的な結末】の二つは重点的に明確にしていた方が、当事者も周囲もまたASDでなくてもスレ違いを生じる事が少なくなります(中途半端に能力主義を謳いながら、社員に経営者目線を押し付けているだけの企業に多い気が……)。
これらはそれぞれ状況によって異なっては来ますが、基本的な対応策としては、問題や提案に対し、【それをする意図】【いつ・どこまで・理想的な結末】【全体の流れのうちの正確な区分】【類似の案や参考的な例】などを明確にする事が中心になります。
特に【それをする意図】【いつ・どこまで・理想的な結末】の二つは重点的に明確にしていた方が、当事者も周囲もまたASDでなくてもスレ違いを生じる事が少なくなります(中途半端に能力主義を謳いながら、社員に経営者目線を押し付けているだけの企業に多い気が……)。
ちなみに、よく認識のズレや考え方の違いなどで納得した時に、本人から『ああ、間違えてたんだ』ともれる事がありますが、わが家ではその度に『いや、間違えてたのでも今までを否定するんでもないよ、もっと良い考え方が見つかっただけ』と繰り返すようにしています。
特に娘の場合は『これって、君をダメだと言っているんだっけ?』と質問するだけで、こわばった表情から復帰する事がよくあります。できれば本人に『間違えていたんじゃない』など繰り返して実際に口から出るようにすると、感覚と結びつきやすいようです。
特に娘の場合は『これって、君をダメだと言っているんだっけ?』と質問するだけで、こわばった表情から復帰する事がよくあります。できれば本人に『間違えていたんじゃない』など繰り返して実際に口から出るようにすると、感覚と結びつきやすいようです。
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定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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