ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

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手記

気持ち・体調・相談を口に出せない理由│ASD当事者の自己評価ライン

2014-06-17 Category:手記
わが家の自閉症スペクトラム症(アスペルガー症候群)の当事者3人の共通する特性として、自分の気持ちや体調を伝えたり、悩み事の相談などを自発的にしようとしない特徴があります。
これは単純に彼ら自身が【自分の気持ちに気がついていない】ことや、【何が起きているのか分からない】など、自分自身の認知力が弱いという面があります。
そして、こういった無自覚な場合とは別に、自分の身に起きている体調や心の変化や低下に気がついていながら、ひとりで抱え込みどんどん沈み込んでいく場合もあります。
今回はこの相談を出来ずに抱え込んでいってしまうケースの原因と、わが家で取った対処法をまとめてみたいと思います。

体調や気分の低下を言えない時の気持ち

妻と長男がよく陥る、相談できなくなるパターンは、
ちょっと体調(気持ち)が優れないけど、少しすれば治るかも……
と気がついていながら、結局それに集中しすぎたり、ぶり返したりして、
あれ、おかしい。どうしてまたこうなっちゃうんだろう……
と改善が見られず焦ってしまい、精神面の低下から余計に気分を害していってしまうもの。
また、
これくらいのことで相談するのは情けないかな……
と軽い段階の時に、意志力で乗り越えようとするが、
結局それに集中しすぎたり、ぶり返したりして、
あれ、おかしい。どうしてまたこうなっちゃうんだろう……
と陥っていくパターンなど。
抱えた仕事やイベント、スケジュール的なものに不安がある場合も、
これくらい少し頑張ればなんとかなるかな
と受ける段階では思うものの、出来るできないの両極的な思考で追い詰め過ぎたり、
裁量が的確ではなく中盤から焦りだし、一つに集中しきれず
あれ、やっぱり出来ないかも、どうしよう……
と陥っていくなどのプロセスがあります。
共通しているのは、【問題が大きくない時は、当初は現実をある程度的確に理解している】ことです。
このためにスタート時で周囲に協力を求めたり、周知しておく必要を感じず、口に出すこともしません。本人は特に大きな問題だと抱え込んでいないからです。状況が改善できなかったり、一定以上の時間が経過して余裕を失った時、そこに混乱してしまいます。そうなると次回からそこに苦手意識が生まれてしまうことも……。
(実はスタート時に、それとなく思ったことを軽い口調ででも表面にしておけば、問題悪化しても周囲への被害が少なく済むことは多い)

周知できていない場合に周囲と軋轢を生ずるパターン

ASD当事者本人が口にしないため、周囲はそこにどんな問題が起きているのかは、全く分かりません。ただ感じるのは当事者本人の表情が硬くなったり、口数が減ってぶっきらぼうな感覚を受けたりなどを感じ始めます。
周囲がそう言ったパターンをなんとなく感じてきている場合は、
【大丈夫? なにか気になることとかあるの?】
など、声を掛けたりしますが、本人はこう考えていたりします。
“もう少ししたらなんとかなるかもしれない”
“今相談したら、諦めが速いとか言われないかな”
“これくらい自分でどうにかした方がいいよね”
結果的に周囲に今抱えている状況を説明せず、そのまま抱えていってしまいます。
結果、上手くいかなかった場合に激しく落ち込んだり、場合によっては『最善を尽くしたんだから仕方がない』と強く出たりすることもあります。
こちらはそこまでの本人の思考や、心を割いていた過程を一度も耳にしていないので、本人がなぜ急に落ち込んだり捨て鉢になったような態度に出るのか検討がつきません。むしろ『だから大丈夫って聞いたよね?』とその場で答えてくれなかった事に対して憤りを感じてしまいますが、本人は『その時は大丈夫だと思っていた』と、問題の認識にすれ違いが出てくる原因になります。
わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者の3人はこういった感じですが、私自身彼らを理解するまでは、“その場で答えてくれなかった事に対して憤りを感じる”ことが多く、“その時は大丈夫だと思っていた”と考えた原理までは気が付きませんでした。
結果【今度からは気分とか問題を感じたらその時すぐに言ってね】と、相談することをお願いするのですが、【相談】の意味合いが特性によって違っているのでうまくいくことはありませんでした

相談できない根本的原理

この問題を相談しにくくさせていたり、人に頼ることなどのハードルが高くなっているのは、本人の自己評価のとらえかたに大きな原因があったようです。
例えば【申し訳ない気がして言いにくい】とか【これを言ったら怒られるんじゃ…】などは、定型発達者(いわゆるふつう)もよく考えることですが、それが問題になるとわかっていれば、相談することを選びます。
これを【定型は前後関係の把握や、問題解決力があるから】と考えていると、根本的原因がつかみにくくなっていたように思います。この違いは単なる処理能力の違いではなく、“どこに自己評価を置いていたか”の違いであると考えると、急に彼らを理解しやすくなりました。
定型者はここで【出来なかった自分を責める】よりも、【相談する】という社会のシステムを利用することに重きを置いたわけで、相談するのが遅れてしまった場合は【相談するのが遅れてしまった】と、システムをその場で利用できなかった事への反省に移行します。
つまり、自分の能力の低さをただ責めるのではなく、“相談するタイミングが遅れちゃった”というミスの分類に分けて考えています。
次回からも“前回のミスを活かそう”と、気軽に対策を捉えておくことが可能になり、トライアンドエラーを繰り返しながら生長していくことに恐怖心やコンプレックスを感じにくくなります。だから相談することは【イコール自分の脳力が低い】とはならないわけです。
しかし、わが家のASD当事者たちの場合は、こういった場合【出来なかった自分を責める】という、自己評価に関わる部分に最初から目が向いているので、解決ができない可能性が出てくると真っ先に【自分はできない】という部分に気持ちが向かってしまいます。それは解決出来ない事自体が大きな問題になってしまうので、相談するということは【出来ません・放棄します】という“逃げレベル”の責任問題になってしまいます。

自己評価と相談の意味

実は妻はこれらの事を知るまで、【自己評価の低下】などの言葉がピンと来ていなかったといいます。
その理由は自分の評価自体、ネガティブな発想でとらえているとは、ほとんど思っていなかったことにあります。基本的には自分の視点が事実になるわけですから、“自分が出来ていないこと”を“出来ていない”と評価することは不自然ではなかったわけです。
しかし、その“出来ていない”と思う必要がそこにあったのか?
という問題には気がついていませんでした。
例えばイベントの準備で、ちょっとした忘れ物があった場合、ふつうは“ああ、忘れちゃったな”と舌を出す程度ですが、彼女の場合はどこか“ああ、どうしてちゃんとチェックできなかったんだろうか”と自身の能力への戒めから始まってしまいます。これは深い谷底に一度降りて行ってしまうようなもので、周囲の地形も見えなくなれば、視界も空も狭くなり世界はぼんやりと薄暗くなってしまいます。
これはどこに反省すればいいのかが、現実に起きた事実にではなく、自分に向かってしまっている状態です。
ネガティブに自分を評価しているというよりは、基準自体が低くなるところからスタートしていて、失敗がそのまま自分の責任になる形です。それに押しつぶされまいと自分を守るような言動を取ってしまったり、失敗を極端に恐れる原因になっているのではないかと思うことがあります。
そして、相談することのメリットを理解していないことが、余計に自責につながっていたこともわかりました。
例えば他に比べるべき物がない時に、ひとつの見慣れないものをじっと見ていたら、その大きさや特徴は掴みづらくなりますし、だんだんと何なのかすらわからなくなっていきます(漢字をジーっと見てるとなんだか分からなくなる感じ)。
しかし、そこでもう一人他に誰かがいて、その特徴を口にしあっていったらどうでしょうか?
お互いに思ったことを言葉に変えていく中で、その大きさや特徴を把握する基準が出てきたり、場合によってはそれが何なのかを相手が知っているかもしれません。
それだけでその対象を誤解する危険性や、それに気を取られる時間が半減していく事になります。
本来、相談とはそう言ったコミュニケーションを取れる人類だからこその、叡智のひとつと言えるわけです。これが自己評価に関わっているととらえているのは、もうすでに誰かが解決した問題を、一から自分で考えようとするのに近い思考です。社会はひとりひとりが独立した優れた力を発揮するよりも、そこにいるグループ全体で一定のレベルのクリアをしている方が、長期的に大きな繁栄を生むものです。
人の問題をいちいち指摘するのは和を乱しますが、自分の問題は自身でちゃんと告知していかないと、グループ全体の営みに停滞をもたらすことになりかねません。

わが家での対策

上記のような事を説明した後、わが家で妻と約束したのは以下のとおりです。
体調低下や悩み不安は、まず相談してその大きさを二人で理解してから、大丈夫かどうかを決める
⇒ひとりで大きさを見失って思考能力を割かれることを防ぐ
これを持ち歩いているメモ帳に書き込んでもらい、しばらく意図的に行ってもらい、習慣づけました。最初は“思い過ごし”レベルのことでも、ちょっとお遊び感覚で。
元々、彼女は物事の境界線や大小を認識するのが苦手なので、まず変化があったら伝えることで、一緒に適切な状況把握をすることを理解してもらいました。
彼女の場合は、“苦痛・疲れ・空気の乾燥具合”などの様々な要因が、【体調不良】と処理してしまう傾向があり、そこに意識が集中することがストレスそのものになっていることがあります。そのストレスがまた体調不良や謎の感覚を創りだすので、早い段階で相談することのメリットを、具体的に明確にしたことで問題の長期化を防ぎました。
最近では先に言う事の気楽さにも気がついたらしく、私はサブ脳化しつつありますが、これは依存状態ではなく立派な共栄共存状態だと思っています。そして少しずつですが、自身での評価も的確になりつつあるようです。やはり頭で考えているだけなのと、言葉にするのは認知の度合いが違うようです。
娘にはまだ難しいので保留中ですが、長男の場合は【どれだけ的確に言えるか】にこだわってもらったところ、こちらもすんなりと体調や不安を言ってくれるようになりました。
彼の場合は『運動会本番の事を考えると、胸とお腹の間ぐらいがキューってなる』とか、『正座しすぎて膝の上の所がパキパキするからちょっと横になりたい』など、具体的な場所と擬音表現を使いこなせたのがポイントだったようです。
それが何なのかを伝えると、たいていはそれだけで安心してくれます。

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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