ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

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手記

問題を一人で抱えすぎる・物事を重く考える│アスペな妻の切迫感

2014-09-29 Category:手記
人と何かの作業やイベントをこなす時や、家族みんなで動くなど、自分だけの意思の尊重では足りない時に“重く遊びのない切迫感”の様なものに苛まれ、気がつくとアップアップになっている。
わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者3人のうち、特に妻に目立つ特徴です。もちろんこれは他人との兼ね合いに“考えることが出来る”から起こる問題なので、今後、長男と娘も成長して社会性を付けていくうちにぶつかるのではないかと考えています。
このアップアップな状態は、短時間で余裕を奪い、抱える要素が多すぎ、本人は実感を保てない状態にまで陥ってしまいます。ASDであるという事が頭になかった頃は、隣にいる私からすれば、どこか不機嫌そうなつまらなそうな、“不本意”の色にしか見えず、その距離感がつかめないことが不安になることがありました。
彼女がどうしてアップアップになっているのかは、様々な特性を紐解いて、お互いに理解していくうちに自然と見えてくるようになりました。今回はちょっとした“やること”が出てきた時に、急激に余裕を失ったり、先が見えないような視界が狭いような感覚に陥ってしまう、そんな妻の特性についてまとめてみたいと思います。

独特な使命感

地域や子どもの学校関連の行事など、家庭を持っていると様々なスケジュールをこなすことになりますが、妻の場合それらが複数予定されると、まず人を頼らなくなります。口数や相談事も減り、やがてスケジュールに合わせての準備はこなすが、子どもたちへの意識がなくなったり、離人状態になる事が多くなります。ひどい場合は距離感などにも影響が出てしまい、何かしらぶつかったり、物を落としてしまったりが増えることも。
そんな時の妻は、【ちゃんとやらなきゃ】と使命感を強く持っています。
しっかりとこなすことへの想いは非常に強いのです。一つ一つの対応も誠実実直。ただ、彼女のこの【ちゃんとやらなきゃ】には範囲も目標も自身のイメージもありませんでした。何か取り組むべき事が生まれると、この使命感に苛まれ、特に他人が関わることとなると、その緊張感は極大化していきました。
その理由としては、決して他人に頼るのが苦手などというのではなく、必死になり過ぎて抱える範囲を見失い、人と連携するといったことに思い及ばない状態に陥っていることが考えられます。【ちゃんと】には明確な“どこまで”の線がありません。そして、“どのように・そうやって”などの指標もありません。
こういった『あいまい語』に翻弄されやすい特性は、境界線を見出すことに苦手……と言うより、葛藤しやすい彼女にとって思考するメモリを極端に奪っていきます。
自らの投げかけた言葉がオープンクエスチョンになってしまう、セルフオープンクエスチョンに近い状態です。

【ちゃんとやらなきゃ】の呪縛

こういった事に切迫感を持ち、失敗を重ねることで苦手意識が募ってしまい、次回からさらに構えて入ることで最初からいっぱいいっぱいに陥る事もあります。
『前回、失敗したから今度こそ“ちゃんとやらなきゃ”』
スケジューリングや進行でのオーバーワークなので、本来であれば日程をまとめ直したり、リストアップをしておくなど、こういった時は大きく動かすことが抜け出すポイントになるのですが、力んでいるために視線は細部に向かってしまいます。
この呪縛ともなっている【ちゃんと】は、先に述べたように境界線のない『あいまい語』なのですが、実は意味合いも多く含んでいます。
【ちゃんと】完璧にこなさなきゃいけない
【ちゃんと】不平不満を持たないでやらないと
【ちゃんと】一人でこなさなきゃ

【ちゃんと】全部分かっているようにしておかなきゃ

これらはスタート時に不安を抱えているほど強くなる可能性があり、それが重なっていくとやがて些細なズレにまで“失敗をした”と、自己評価を下げる方向にまで進んでしまうことがあります。いわゆる【完璧主義】に本人も知らないうちに入り込んでいるケースです。

明るい愚痴・人間関係は【面倒くさい】

彼女は物事から抜け出せなくなっている時、一つの言葉や事実にとらわれ、シングルフォーカスに陥るパターンが多い気がします。
常識・あいまい語・0か100かの両極思考これらに関わることが特に強く、判断に迷った際に以前自己評価を下げた事が大きな事実になり、愚痴をこぼすことも許されない【成功か失敗しかない】世界にいるような、非常に息の詰まる状態です。
ここで本人も含めて勘違いしやすいのが、【解決する能力がない】と思い込んでしまうことです。実際は解決するだけの能力を持っていながら、状況の認知の仕方や物事のとらえ方に偏りがあったために、状況の取り違いから身動きの取れない錯覚に陥っていたり、他に目を遣る発想を失っている状態だと考えた方が、平常時との能力差にも説明がつきやすくなります。
一つの言葉や事実にとらわれている時、よく娘に繰り返させていた言葉は【~っていうこともある】です。ただ、これは幼児が与えられた少数の物事の中から選択する時や、複雑ではない状況判断に立ち止まりやすくするための方法です。より高度で複雑に自ら問題意識を持って取り組んでいく必要がある大人の場合、この言葉は対象が曖昧になるので有効とは言い切れません。
ただ、複雑な大人の状況でも、立ち止まり自分の状況を確かめる事が判断材料になるのは同じことです。わが家で妻と行ったのは【楽しく愚痴る】ことです。
方法はまず、
【~~が面倒くさい】【~~がイヤ】と具体的に考える

とりあえず“イベントに参加するのが面倒くさい”から始め、“これが出来ないと○○さんに迷惑がかかるから面倒くさい”とか、“あれはうまくできる自信がなくて、失敗をみんなに見られそうだからイヤ”とか、“○○のお店に行くまでの道が混んでるからイヤ”とか……。

意外とこのステップで『なにが苦手意識を刺激していたのか』がすぐに浮かぶこともあります。想像以上に小さいことだったりしてため息を付いていることもありますが、そうなれるということは“失敗する前に愚痴った甲斐があった”てなもんです。

【楽しく愚痴る】
人に失敗談として笑ってもらう様に話す視点で愚痴を言います。ただ愚痴るのでは自己暗示のようになりかねないので、いつでも人に話せるよう愚痴をこぼしてみます。その時、どうしても恥ずかしくて言えないとか、言いにくいことがある場合はまだ未消化です。
愚痴をこぼす相手がいなければ、頭で自分が楽しく思えるように繰り返し愚痴の文言を考えてみるのも効果的だったようです。
これらは決して【楽しく明るく前向きに生きるのにはね、笑うんですよ】的な聖人を強いるアレではありません。自分が立ち止まりやすいポイントを、引け目なく自分で見つけるのに丁度いいプロセスだなぁと思いついたものです。

不安要素の軽減

実際、妻もイベント時などに“超余裕”とはまだ遠いです。それでもこの方法で“詰まっているポイント”が分かりやすくなっているので、本人自身で切迫感に苛まれている事に自覚が持てることが増えてきているようです。
今までもASD当事者であるわが家の3人には、デジタル耳栓やサングラス、大事な話の時は真横に座るなど様々な“要因”を排除することで、本来の思考を取り戻すケースがありましたが、今回の【楽しく愚痴る】もその一環です。
耳栓は音からの情報を低減させて、必要な情報を選択させやすくするため。サングラスは視覚情報を丸くさせ、必要な情報を選択させやすくするため。大事な会話の際に隣に座るのは、目線や相手の表情に気を取られないようにして、必要な情報を選択させやすくするため。【楽しく愚痴る】のは今自分が嫌だと思っていることと、その理由を罪悪感を排除してさっくり認識するためです。
一つのことを深く突き詰める特性がある彼らには、そこに“合わせなければならない”、“読み取らなければならない”などの、枠外の状況が邪魔になることが多くあります。それらの邪魔は、“今何をするべきか”とか“今そっちが気になっているのはなぜか?”など、自分が知らずに気にしてしまっている物が何なのかを、しっかり認知することでクリアしていくことがあります。

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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