ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:手記

手記

夫・妻がアスペルガーの場合の自助会やカウンセリングの必要性

2014-10-02 Category:手記
パートナーが自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の場合、その伴侶が関係性や社会性、特性の違いからストレスや適応への強迫感を持ち、【カサンドラ症候群(カサンドラ愛情剥奪症候群など)】と呼ばれる症状群に陥ることがあります。
また、そこまで至らなくても、逃げ場のないような独特な閉塞感や、自分自身に発達障害などを疑い始めるといった自己評価の低下に関わる問題が起こりやすいことも知られています。
今回はそういった時になぜそこに陥ってしまうのか、また、なぜ自力では抜け出しにくくなるのかを私の体験を通して見えたメカニズムと、そこから快方へ向かうための方法論とそこに則した自助会やカウンセリングなどが“どうして有用なのか”についてまとめてみたいと思います。

人との関わりで落ちる自己評価

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者の場合、その特性から社会とのつながりに苦痛を感じたり、失敗や他者とのズレに不安を感じることが多く、それらから心身を守るために各々の防衛的な反応を持つことがあります。
実はこれはASD当事者に限らず、誰でも持っている防御機構で、根本は他者や社会からの【別離不安】を埋め合わせるための行動様式でもあります。多数派の人はその反応の仕方が問題視されないよう、社会通念に沿って、自らを保って行くために意識的・無意識的に言動を調整しています。
そして、現在の社会通念に合わせて、ほぼ自動的に適切な範囲のリアクションを選択できるのが定型発達者の共感能力とも言えます。
カサンドラ症候群に陥るカップルにありがちな要因は、この防衛反応のズレにあるのではないでしょうか(ただし、カサンドラに陥るのは定型とは限らない)。
ASD当事者の反応のズレとカサンドラな反応
AS:否定的な事や間違いに対し敏感なため、“キレどころ”が分からない(両極思考)

パートナー⇒通念に沿い、相手が怒っている理由をこちら側は探し、理解し、対処しようとするが、長期に渡ってこの規則性や理念が掴めない場合、不明な理由付けを“自分がこの社会に適応できていない”と自己評価を下げる事で事態の整合性を保ってしまう。

AS:物事に対して不安や想いを抱えた場合、自身との因果関係より、直近にいるパートナーの不理解に怒りを向ける(表層的思考)

パートナー⇒身に憶えのない叱責だったとしても、叱責を受けるのは社会通念上、何かしらの責任問題があると考え、自己評価を下げる事で事態の整合性を保ってしまう。

AS:例えば誕生日に花を贈ったり、もらったプレゼントに感謝の態度を見せるなど、【こういう時はこうするものだ】という通念が理解しきれず、そこへの不安から反応が極端になり否定的とも取れる言動や、無関心を装う

パートナー⇒自分が通念に沿っていないのではないかという不安感や、自分の能力不足を疑うことで、自己評価を下げ事態の整合性を保ってしまう。

このあたりが代表的なズレではないでしょうか?
パートナーの言動がASDのの特性によるものだと理解していなければ、この【決定打に欠ける独特な浅い理不尽感】の理由を見つけることは難しく、人に相談するにしても問題に決定的な理由付けがないため、話題にすることも手の付け所のない状態になります。
この手の付け所のない苦悩を、多くの人はこう考えるのではないでしょうか?
言葉にも出来ないようでは、人に相談するほどの事じゃあないのかもしれない

閉塞感・八方ふさがり

単純に人が物事に失敗した時、ショックを受けたり落ち込んだり、それが出来なかったことで多かれ少なかれ自己評価を下げています。そういった時に下げた分を回復するには
・再度問題に望み成功させる
・問題をしっかりと理解することで次への自信を持つ

・人に失敗を話し共感者を見つけることで『自分だけではない、一般的なんだ』と薄める

といった対処を取るのが効果的で、逆にその失敗が頭から離れないと、最初の低下よりも時を追うごとに失敗が強調されて悪化することがあります。特に厄介なのが大した問題ではなかったはずなのに、頭から抜けなかったり何度も同じ失敗を繰り返してしまった時、その失敗に呑まれてしまうことです。
これはASD当事者の場合、“0か100か”などの両極主義や、嫌なことを鮮明に思い出してしまうフラッシュバックなど、強調するための特性が根底にあるため、挑戦・失敗などに抑うつ的な反応を見せることがあります。
問題に対して、“同じ失敗を繰り返しながら、自己評価を取り戻せない”状況が続けば、やはりASDではないパートナーも同じく、抑うつ的な反応となる危険性は上がっていきます。こうなった時に、ASDパートナーとの認知や思考方法のズレで陥っていた場合は、相手とのズレを理解しない限りは自己評価を取り戻す事は自力ではほぼ不可能ではないでしょうか。
解決の糸口がないまま自己評価を下げ続けた場合、周囲から解決案などを提示された所で、自己を顧みて状況をさぐれるだけの体力が残っていません。根本のズレが問題なので、知らず知らずのうちに“そこをなんとかしなければ無駄だ”と、それ以外の方法論が無力な物に思えてしまいます。
【不明なズレから生まれてくる自己評価の低下】
【理由が不明なために成功体験の継続が難しい】
【理由が不明なために人に話しにくい】
【人に話しにくいから大した問題ではないのかもしれない】
【大した問題では無いのにクリアできない】
そして、もし、こういった事を問題定義した時に、相手がキレたり泣き出したりなどの感情的な反応を起こされたら……。もうその問題を問題とすることすら不安になります。
事態が八方ふさがりと言うよりは、自分が開放されるための分かりやすい足がかりが、原因不明のまま『掴んではいけないもの』になっている状態ではないでしょうか?

自助会・カウンセリングなどの利用

もし、自己評価が下がり続ける負のスパイラルにある時、その原因が分かったらどうするのか?
この場合はパートナーが自閉症スペクトラム症や何かしらの発達障害があった場合ですが、ここで陥りがちなのは理解できたショックに興奮気味になり、一般的に言われる特性に目が言ってしまい、相手自身の特性を見れなくなってしまうこと。
そして、今までの苦痛を吐き出そうと、より大きな問題であったと感情的に一時大きな偏りを作り出してしまい、そこで激しい疲労感や喪失感に苛まれてしまうことです。
ASDパートナーの特性を理解していくことも大事なのですが、こちらが【どうしたかったのか・どうなりたかったのか】をしっかり歪みなく自覚したり、【本当は自分はどんな気持ちだったのか】と本当の自分を理解してあげることが大切なのではないかと私は思います。
なぜなら、ASDパートナーをただ理解するだけでは、共依存の関係をクリア出来ていないからです。自分が関係にどうあって欲しいかを求め、それについて具体的に対処していけないのであれば、対等な関係ではありません。
そう言った時に、自助会やカウンセリングなどを受け、自分の考えや想いをとうとうと聞いてもらったり、他の人の話を聞いて共感することで、今まで抑えてきた自分の不安や失敗を【一般化】するのは非常に理にかなった方法だと思います。
パートナーが未診断であったとしても、【診断を持ちかけたら怒り狂うんじゃないか】など恐れを抱くかもしれませんが、そこを含めて考えを聞いてもらえたり、他の意見が聞ける場は非常に貴重です。その後にパートナーへ受診の働きかけを考えていってもいいのではないでしょうか?
場合によってはこういったグループや機関に参加する事自体、【自分は出来ていないと認めることになるのでは】という不安を抱えることもあるかもしれません。
まずは失った自己評価を、あなたらしい所まで引き上げるための、【自分の一般化】が必要です(これはASD当事者にも言えることです)。それには知ることと聞くこと、話すことが効果的です。そしてあなたの【自分の一般化】が他の誰かの【自分の一般化】につながることもあるかもしれません。
私の場合はこのサイトを始めてから、定型・非定型問わず非常にたくさんの方からメッセージを頂き、顔も知らぬまま本心をさらけ出すやりとりをしていますが、かなり救われたり気づきの素になっていたりもしています。

カサンドラパートナーとしての男女差

男性のカサンドラ症候群について公開されているサイトはまだまだ少ないです。
それは単純に自己評価の維持をパートナーとの生活に求めておらず、社会での自己実現に自己評価をおいているため、表面化しにくいという側面もあるかもしれません。
と言うのも、男性ASDパートナーを持ちながら、自身の自己評価を保っていられる女性の場合も、仕事や地域活動などの自己実現の場を持っている方が多いからです(※あくまで私の主観です、推測であり根拠はありません)。
パートナーとして相談する時に抱える、ジレンマの男女差はこんな感じかもしれません
☆男性

・家庭の維持はステータスという風潮があるため、一般的に外部で家庭の愚痴は言いにくい
・女性差別、障害者差別とも取られかねない不安がある
・パートナーに知られたら激昂、関係を精算されるのではないか(別離不安)
・自分にこそ原因があるのかもしれない(家事・育児への参加不安)

・自分が関わる状況の一定の維持で見ないようにしておきたい

☆女性

・夫を立てられない、疑うなど一般的な女性像に反するのではないか
・生活、肉体的力関係、暴力などへの不安
・自分にこそ原因があるのかもしれない(家事・育児への不安)
・動かすことで悪い方向に行って欲しくない

・家庭経済を夫がもっている主婦の場合、文句が言いにくい

上記は様々なサイトのコメントの書き込みなどで見られる、ステレオタイプ的なものをまとめてみました。
隣の芝は……ではありませんが、性差がある分、男女には行動パターンや思考に違いがありますので、やはりお互いの立場に置いて考えるのは難しいかもしれません。それでも苦しみや恐怖を感じるのは、根底にあるのが【別離不安】である以上は同じです。
自助会などのグループにも、少しずつ男性にも開かれた場所が作られつつあるようです。こういった動きが、今の時代にあった通念を生み出していく場になると信じています。カサンドラ症候群の女性専用自助会で有名な【カサンドラ駆け込み寺 ハーンの妻達へ】さんも、男性も交えてカサンドラ症候群パートナーの在り方を模索していく【ハーンPLUS】を旗揚げし、男性カサンドラの概念を大きく打ち出し始めてくれました。
【自分の一般化】を男性目線、女性目線を揃えて積み上げていくためにも、こういった動きは大変重要だと思います。

※外部サイト

女性専用カサンドラ症候群自助会⇒【カサンドラ駆け込み寺 ハーンの妻達へ
男性参加カサンドラ症候群自助会⇒【ハーンPLUS
こちらは発信されている情報も有用なものばかりですので、ご興味がおありでしたらおすすめします。
また、カサンドラ症候群やアスペルガーに関わる自助グループは全国各地に広がっています。お住まいの地域にあれば参加してみるのも良いかもしれません。

【関連記事】

軽度アスペルガー妻と定型夫の場合のカサンドラ症候群

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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