ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:手記

手記

アスペな妻の耳鳴りのこと│自律神経と選択的注意とワーキングメモリ

2014-06-05 Category:手記
妻は聞き間違いや聞き返しが多い。
そこには聞きこぼしなどもありますが、【ピー】という電子音の様な耳鳴りがずっと聴こえているという症状も。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)には、耳からの情報整理が苦手だったり、音に対して過敏な特性を持つ方がいます。妻の場合、それらの聴覚に関わる特性にも、それぞれいくつかの根源がありそうだなぁと、反応から感じていました。
これはまだ結果が出るまでには、まだまだ時間が掛かることかもしれませんが、わが家で続けてきて少しだけ【今、何か掴みかけてる】対策の経過報告というか備忘録のようなものです。
言うまでもありませんが、これは超絶素人である私の、チラシ裏の落書きとも言える妄想メモです。
もちろん間違えていることもあるでしょうし、場合によっては不快な気持ちになられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、こうやって妄想でもいいから近づいて考えようとすることで、後に大きな収穫を得たことも多々ありました。今回はそのアプローチの模様です。
もし、途中経過でもよろしければ、エンターテイメントとしてお読みいただけると幸いです。

選択的注意の困難による聞きこぼし

例えば妻の買い物中に電話で『醤油とみりんは今あるからいいや、それよりワカメ買ってきて』といった場合、彼女はおそらく醤油とみりんもしくは、どちらかだけが耳に残ります。
もしかしたら、周囲の買い物客の騒音や、店内放送が音声に被さり、なにも耳に残らないかもしれません。そこで焦りを感じたらなおさらです。
ただしこれは“買い物中”など、特殊な条件下のもとでのことで、家でのコミュニケーションや、慣れた場所や仕事などではあまり起こりません。処理する情報が多すぎる時に起こります。
さらにスッと最初に耳に入った情報が、強く大きくなり、その後の情報に処理が続かなくなったり。
定型者の場合は必要な情報を拾うために、自動的に脳がノイズキャンセリング(会話中にエアコンに音が気にならなくなるとか、集中している時に余計な音が消えるなど)したり、必要な部分だけを認識しているのですが、これを選択的注意と言います。ASD当事者の場合はキャンセルし切れなかったり、もしくは全てを拾ってしまうために情報が氾濫してしまいます。
これらは彼女の場合、選択的注意能力が発揮できていないことと、シングルフォーカスなどの特質が含まれています。同時に掌握し切れない環境や会話の場合は、要点を見つけ出すことが困難になりやすく、環境適応に多くのメモリが削がれていると言った状態に近いようです。
応急的な対処としては、不慣れな場所ではなるべく目的を1テーマにしぼり、行動をシンプルにすると選択的注意が多少復活します。
また、ごちゃごちゃしていても、行き慣れた場所でいつもの目的だと、この症状は起こりにくいようです(意識すると感じる程度)。情報や目的が氾濫する不安感が、選択的注意を阻害しているのかも知れません。
以前、金沢大学の研究チームから【発達障害は左脳前部と、右脳後部の繋がりが弱い可能性がある】との発表がされました。内容から妄想すると、文字認識に関わる左脳前部と、映像認識・事実認識に関わる右脳後部の連絡がうまく行き辛いのではないかと。
つまり、【文字・言語】【映像】【事実認識】の関係性が、定型社会に対してはプロセスや着地点が、異なることがあるということ。そこに様々な情報の氾濫や葛藤、不安感の処理が同時に来た場合、余計に事実認識が阻害されることが考えられます。
小難しくなってきたので簡単に言うと、
脳には情報が入っているし、分かっているのだけど、決定処理する部分を阻害されやすい
ということでしょうか。この阻害は人によって様々な事が要因になるわけです。
彼女の場合は失敗をした後などに起こる、【申し訳ない気持ち】や【失敗を悔やむ気持ち】に思考を奪われることも多く、その場合も言葉の取り違いや聞き違いが頻発します。これはサイレントパニックとは別に起こっていると感じることがあります。

耳鳴りによる聴力低下と聞き返し

実はつい最近なのですが、妻の聞き返しや聞き間違いが多い時、【キーン】とか【ピー】という耳鳴りの様なノイズが聞こえていることがわかりました。これは彼女と【アスペルガーと自律神経失調症】について話していた時に、自律神経失調症の症状【めまい・耳鳴り・難聴】に触れた時に反応したことから判明したのです。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の場合、二次障害としてうつや自律神経失調症があげられますが、自律神経失調症の場合、【ピー】というような高い音が聞こえることがあると言われています。
彼女は中学時代に【難聴の疑いあり】との事で耳鼻科に受診した過去があり、その時の医師の診断では【聞こえていないのではない、聞こうと努力していない】と言われたそうです。
この【聞こうと努力していない】という言葉を彼女はずっと理解できないままだったようです。
私も独身時代に彼女からそのエピソードを聞いた時、本人も持ちネタとして笑いながらだったので、怠け者的なネタだと思って聞いていましたし、自閉症スペクトラム症の概念を知るまですっかり忘れていました。
彼女が難聴の疑いをかけられた時は、両親の離婚から遠い地方への引っ越しをしたばかりの頃です。
劇的な環境の変化、人間関係の入れ替わり、将来への不安、別離……。
ストレス症と片付けてしまえばそれまでかも知れませんが、彼女はその時も【聞こうと努力していない・逃避】ではなく、【現実を理解するためにメモリを使い切って、常にオーバーワークを起こしていた】と考えたほうが、思考や性格的には近い気がします。単純に耳鳴りなどでの突発性難聴ではなく、離人やパニック、オーバーワークでの選択的注意の欠落などがあったと思うほうが自然です。
つまり、耳には入っているが、言葉をそのまま理解しようとしていない状態。
例えるなら、朝礼で校長先生の長い話を聞いている時、音が耳に入ってもその場では何の話かわかっておらず、後で何の話か聞かれれば、なんとなく答えることはできる。でも、これが校長先生ではなく、市◯悦子が昔話をしにやって来た場合はがっちり同時進行で理解しながら聞き取れる。そんな感じではないでしょうか。
話を聞く時に、認知と感覚に距離があるような反応は、長男や娘にも見られます。特に長男は3歳くらいまでが激しく、その後落ち着いたのですが、小学校入学の環境変化で一時復活していました。その2つの時期は彼にとって『情報が氾濫していた時期』とも言えます。
彼女はこの診断以後も、生活の状況によって耳鳴りが起きていたのですが、それに慣れきってしまい、別段意識もしていなかったといいます。
不思議なのは、こういった事を思い出したり、理解して改めて自分の状態を認知した時、彼女の症状はだんだんと薄れていったということです。たぶん、これは完全に消えたのではなく、意識しなくなったのではないかとも考えられますが、聞き返しや聞き間違え、スルーが激減しています。
特に症状が劇的に薄くなったのは、彼女が【分からないと思って終わらすのを止めようと思った】【意識的に自分の行動を認知しようとメモした】など、不安な気持ちと向き合った時からです。これは感覚的に防御しなくなったのもあるかもしれませんが、分からないままのものを放置することで、無駄に消費していたメモリが開放されたのかも…と考えています。
向き合い決着をつけることでメモリが開放され、選択的注意が働くようになり、拾わなくて良い音が聞こえなくなった可能性があります。おそらく選択的注意が阻害されている状態だと、静脈の雑音や内耳の圧による耳鳴りまで拾っていて、聞き取りにくくなっているのではないかと。
ちょっと酷い時には、古くなって音が通ってしまうようになった耳栓(安いウレタン製のを故意に長時間空気に晒したものとか、使い倒したやつ)を付けると、余計な音が消えて会話がしやすくなるようです。最近はノイズキャンセリング機能のあるデジタル耳栓などがあるようなので、ちょっと気になったりしてます(普段使いはないが、セレモニーとかイベントにはいいかも?)。

地味に改善に役立っているかもしれない対策

不安に感じやすい物に対して、彼女自身がなぜそう感じるのかを一つ一つ理解し、理由ごとちゃんと認知するクセをつけはじめたのがまずひとつあげられます。常に小さなメモ帳を持ち歩き、15~30秒以上、何かについて考え込もうとしていた場合はそれを書き留めます。
後で何かしらメモリ不足が起こった場合は、それを見直して【今、何が自分の中で問題になっているか】を認識します。そして、同時にその時に【胸や頭に何か独特な感覚はなかったか?】と思い出し、それもメモしながら自分の行動と結びつけていきました。
これによって何が起こったかというと、【自分がメモリを奪われるタイプの問題を把握】できたため、抱え込むようにしていっぱいいっぱいになる前に相談出来るようになりました。さらに、そのうちのいくつかは、対応パターンを作って乗り越えることにも成功しています。
こうして、メモリが奪われる要素がなくなり、生活で硬い表情が少なくなった途端、聞き返しなどが減っていきました。
以前は1日に数回~数十回の聞き返しや、会話中の聞き間違い(事務経理⇒ジム・キャリー的なやつ)がほとんどなくなりました。同時に子どものちょっとした【助けて】のサインや、要望に対してとんちんかんな対応が減っています。これは彼女なりの子どもへのしつけや、関わり方での対応方法が網羅できてきたことで、余計なメモリを奪われなくなった相乗効果が大きいと思われます。

番外編:夫の妄想むき出しな対策

ここに上げる対策こそが、最も今回エンターテイメントに近い、お試し中の案件です。
役に立つかどうかも全く結果が出ていないので、どうにも言い切れないことですが、もし、お役に立つ方があれば幸いです。

・立川談志式、言葉の発想力訓練法

これは私が学生時代にテレビで観て、なんとなく試しているうちに、意外なところで効果を実感したものです。
妻も一時期試し、言葉の受け取る速度や、選んで発する速度に改善が見られました。
やり方は頭の中、もしくは声を出しながら【連想ゲームの逆】を繰り返すだけ。
連想ゲームの逆とは、通常連想ゲームは【りんご(赤い)⇒ポスト(赤い)⇒郵便やさん(手紙)⇒切手】など、連想して浮かんだ物を羅列していくわけですが、この逆連想ゲームは【りんご⇒宇宙⇒仏壇返し⇒クジラ⇒海(あ、クジラと連想できるからアウト!)】など、一切連想できてはいけないのがルール。
一人でも二人でもできます(あんまり多いとレスポンスが遅くなるため訓練にならない)。言葉は発するのも受け取るのも、一定の発想力や想起力が必要になります。これはそれを鍛えるには最も簡単で効果的なトレーニング法だと思います。

・記憶術のイメージ法

実は私、小学校高学年の頃、某雑誌の裏表紙にあった【記憶術】に憧れをいだき、通信講座を受けたことがあります(笑)
正直、成績は特に変わりませんでしたし、当時の私はもっと超能力的ななにかだと勘違いをしていたので、えらく中途半端な状態で卒業テストの送付までいき、消化不良気味なまま終了しました。現在はネットのいたるところで似たような情報が手に入るので、なおさら切ない思い出のひとつです……。
しかし、その中でもいまだに意図的に使用しているテクニックがあります。その中の一つが【イメージ法】です。
やり方は言葉をできる限り、そのものの映像を頭にリアルに浮かべたり、それと分かる物にイメージ映像化。さらにそれが【自分の体に張り付いている】とか【突き刺さっている】と想像するというもの。文字や単語の場合もできるだけ分かりやすいものに置き換えてイメージします。
例えば『バナナ、卵、しょう油、プリン』などを憶える場合は、バナナがが両目に刺さっている状態で卵をくわえ、しょう油まみれのシャツのまま、右腕にプリンが乗せられている。そんな風な設定で、【冷たい・硬い】などの感覚までイメージすると、かなり忘れにくくなります。
人には瞬間的・短期的に憶えていられる記憶は“7つまで”と言われていて、それらが私たちのワーキングメモリの限界として存在しているそうです。この方法は一枚絵で憶えられれば、それを超えられる可能性があります。
……ただ、これは日常生活で使用するには、かなり訓練が必要になります。
妻に現在やってもらっていることでも、これをそのまま憶えるために使うというのではありません。
例えば冒頭の『醤油とみりんは今あるからいいや、それよりワカメ買ってきて』の場合、『醬油…』までですぐに醬油ボトルを持ってるイメージ、『みりん』でみりんボトルを持ってるイメージ。『…は今あるからいいや』で両方を捨てるジェスチャー的イメージ、『ワカメ…』でワカメを持っているイメージをして、『買ってきて』で完了。
文字で見ると複雑な様に思えるかもしれませんが、情報の優劣をその場で判断しようとするのではなく、順を追って脳内でジェスチャーすることで、最終的に必要な要素を残すイメージ法です。
普段からここまでややこしい会話をすることはないのですが、例えば子どものことについて色々とざっくばらんに方針を話し合っている時など、この方法が役に立つことがあります。
こちらの説明が複雑になりそうな時は、こちらもなるべく要素を抑えて話す努力をする、妻は無理に会話の要点を頭でまとめようとせず、順を追って要素をとらえやすくするためにイメージしていく。
これがそのまま【言葉に取りこぼし】に直接的な解決になる方法だとは考えていません。
直接的な対策というのなら、紙に書いたほうが速いですし、最初から1会話1テーマで話したほうが伝わります。
これを採用した理由は、上の談志式と同じく、言葉の出し入れや受け取りを早めるためのトレーニングだと考えています。
苦手の正体判明⇒原因をいくつか仮定⇒直接的ではない方法でアプローチ⇒認知を増やす
わが家の場合、根本原因が広く曖昧な場合は、このスタンスで近づき、成功するにせよしないにせよ、本人が向き合いやすい状態を考える方式をとっています。この方が構えがなくなるので、お互いに労力なくクリアに向かえることがありますので。

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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