親の気を引こうと『わざと怒らせよう』としたり、『これは怒るかな』をしつこく試したり。
子どもにはよくあることだと分かっていても、娘の場合、この頻度が尋常じゃなかった。
心理士の先生から
『正しくない要求の仕方の場合は、相手にせず、無視した方が効果的です』とアドバイスをもらったが、その通りにしても娘にとっては関係なかった。
相手にしなければエスカレート。いつまででもやる。何回でもやる。だんだんと、注意されない自由を楽しみ始める。……裏目に出てしまった。
そして叱ると、本人は殻に閉じこもったり癇癪を起こして、聞く耳を一切持とうとしない。
本人の目的と、答えを得た時の感情が、完全に矛盾していた。
■今だから分かること
『気を惹く』ことに意識が行っている時は、もうどうしようもありませんでした。例え両親が近くにいて、抱きしめても関係ありません。彼女の目的は『気を惹く』なのですから、結果がともなっても完全一致するまで満足しませんし、伴わない場合はいくらでも方法を変えてトライしてきます。
では、『気を惹く』必要がないくらいに、スキンシップを取ったら?
余計に激化し、集中しすぎた彼女はそればかりになり疲弊、その疲労感を認知できず『苦痛』ととらえてパニックに陥ります。そして彼女の求めていることと、少しでもずれていれば、スキンシップも【気に入らない結果】になります。そもそも『スキンシップ』が目的ではないので意味がありません。
そのうち【気を惹く】ことも最早目的ではなく、惰性で止められない様子も見られました。続けているうちに普通な関係がどうだったかを思い出せずに混乱していたようです。
よく自閉症スペクトラムの子どもの場合、つきあい方や方法を変えて環境の変化を作らないほうが安定すると言いますが、知能が高い場合そうもいかないことがあります。
わざと汚い言葉づかいで試してきたり、できていたことを一切やらなくなったり、以前に注意されてやめていたことを繰り返したり。恐ろしいことに『別室に行かせる』などの隔離や、『部屋の隅っこに正座させる』などの自由を奪う方式は、自閉傾向のある彼女にとって全く問題になりません。つまり、八方ふさがりでした。
では、わが家ではどうしたか?
ここから先はわが家独特のやり方ですし、きっと反感を持たれる方もいらっしゃると思いますが、キレイ事ばかりで済むことではなかったので正直に書きます。
残念ながらこればかりは鬼になるしかありませんでした。
『人を試すようなことをするんじゃない!』
『【遊んで欲しい】は口でしっかりそのままお願いしないと分からん!』
『【遊んで欲しい】は口でしっかりそのままお願いしないと分からん!』
と、遠回しなやり方をする度に強く叱りました。
彼女の場合、【叱られる】はおろか【正される】こと事態がプライドを傷つけることなので、癇癪を起こして『聞かなくてすむ』ようにしてきます。
彼女の場合、【叱られる】はおろか【正される】こと事態がプライドを傷つけることなので、癇癪を起こして『聞かなくてすむ』ようにしてきます。
私はそれを凌駕する迫力で叱り、怒鳴り、時には体罰をしてでも彼女に『話を聞く姿勢』にさせるしかありませんでした。そしてこちらの【嫌だ】という感情をその通りの大きさで伝えるほか、彼女に伝える方法は残されていなかったのです。
大声で泣き叫んでこちらの声をかき消そうと言うのなら、
こちらはもっと大きな声で彼女のガードをかき消します。
こちらはもっと大きな声で彼女のガードをかき消します。
空泣きをしながらそっぽを向こうとするのなら、
頬を両手ではさみ、こちらに顔を向けさせて『話を聞く』ことを強要しました。
頬を両手ではさみ、こちらに顔を向けさせて『話を聞く』ことを強要しました。
フリーズ状態を自ら作り、話を聞かないようにする時は、
焦点がこちらに合うまで怒鳴る・叩くなどの刺激を与えることもありました。
焦点がこちらに合うまで怒鳴る・叩くなどの刺激を与えることもありました。
ここまでやると、文字通り『眼の色が変わる』感じで、焦点がこちらに合い、目に光が戻ります。そうでない時の話や語りかけは、ほとんどブロックされて届いていません。ようやく話を聞く気になった時のサインでもあります。
【意図と効果を分かっていて、納得出来ないから殻に閉じこもる】
娘は他者との距離感があまりに薄く、自分の考えと違っていれば、完全に耳を塞ごうとする状態でした。どうしても理解ができないのなら仕方がありませんが、感情でやらないのは社会的に認められることではないことを教える必要がありました。
この戦いは娘のやり方が巧妙になっていきつつ、本人の納得がいくまで長期間に渡って続けられ、彼女が『他者との距離』をもう少し進んだところで認知できるまで続きました。それは5歳の半ばごろのこと。
4~5歳のこの時期は本当に酷かった……。
4~5歳のこの時期は本当に酷かった……。
本当にキツかったのは彼女にとって『お父さんが怒鳴る』までがセットになった時期です。
絶対にそこまでいかないと彼女が納得せず、ただでさえこの生活に対し【虐待では?】と迷いや苦痛、言われようのない不安を感じている私にとっては、彼女の存在がもうすでに恐怖になっていました。
絶対にそこまでいかないと彼女が納得せず、ただでさえこの生活に対し【虐待では?】と迷いや苦痛、言われようのない不安を感じている私にとっては、彼女の存在がもうすでに恐怖になっていました。
そして彼女は理解します。
【父親が最も反応するのは、自分が怖がっているふりをしていた時だ】
と……。
これは地獄でした。演技と分かっていても一日中、それを繰り返されることのストレス。
私は自律神経を壊され、不眠・免疫力の低下・蕁麻疹そして『うつ』への引金をひかれることになります。
私は自律神経を壊され、不眠・免疫力の低下・蕁麻疹そして『うつ』への引金をひかれることになります。
最終的に一番効果的だったのは、妻(軽度アスペルガー・AC)がこの戦いに意思を持って参加できるようになったこと。妻の性質的には非常に理解がし難く、また自分の体験もあり辛かったとは思いますが、これも私が鬼になり参加を強要しました。
妻が参加するきっかけになったのは、私が本気で娘を叱り、彼女が閉じこもる殻から出てきた瞬間の『表情と眼の変化』に気づいた時です。
IQが高く、自尊心の高さと自己評価の低い部分が混在している彼女にとっては、父親が否定しても母親が否定しないことでそこを拠り所にし、変化から逃げ続けていたわけです。
妻が本気で叱るようになってから、娘の『話を聞く姿勢』が顕著に見られるようになり、その後の『人との距離』や『思いつき=やりたいことではない』などの認知のすり合わせが可能になりました。驚いたのはあれだけ叱られていながら、現在、父に対して全く恐怖心がないこと。
妻が叱るようになって色々と理解した瞬間から、何事もなかったように普通の関係になりました。
妻が叱るようになって色々と理解した瞬間から、何事もなかったように普通の関係になりました。
【ちょうどその頃くらいの様子】⇒アスペ妻の記録16
【関連記事】
⇒子どもの質問攻めの種類と対応方法
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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