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Category:軽度アスペルガーな長男

長男

小学2年生:受動型のいじめ問題と『そこにいない感じ』│アスペルガーな長男

2014-09-08 Category:軽度アスペルガーな長男
おろしたての傘がその日で壊れる。買ったばかりのキーホルダーが、金具だけ残して千切れている。ズボンはしょっちゅう膝が擦り切れ、ランドセルやジャージなどが泥だらけ。よく見れば何かしら小さな傷もこさえているようだ。
しかし、本人は学校から返ってくると遊びに走って出て行ったり、友達を連れて来たりもする。
一年生の時に感じた“危うさ”は引き続き、むしろそのギリギリ加減は、その程度を上げていっている。問題にならないでいる唯一の要素は、“本人が辛く感じていない”こと。友達との様子や学校での事を聞いても、“楽しい”の一言しか返ってこなかった。
しかし、二年生に上がり一月も過ぎた頃から、とうとうボーダーラインを越えたようだ。
帰宅してから沈み込んでいることが増え、自分からはあまり遊びに出かけなくなって行った。そして、家に迎えに来る子どもたちの態度が、明らかに乱暴な方向に偏っているのが分かる。
そして、連休の前の授業参観の日、とうとう事件が起こった。
※ここでは彼が陥っていた、いじめの引き金になった要素の裏側についてまとめています。このいじめ問題の細かな流れはこちらにまとめてあります。
■今だから分かること
彼が受けていたいじめとは、一体どういうものであったか。
毎朝、顔を合わせるなり、特定もしくは不特定多数の級友から叩かれるなどの暴力を受ける。それは一日中、何かしらの機会があれば行われていた。ただし、いきなり顔を殴られるような本格的なものではなく、思い切り平手で背中を叩かれたり、泣き出すまで何度もグーで叩いてくる。また、羽交い締めにされた上、複数人で代わる代わる殴る蹴るを受ける。泣き出すと放置され、実行犯は立ち去る。
基本的にクラスで主導しているのは6名。後はそれを真似したり、その流れに乗ってしまい、判断がついていないのが大半だった模様。教師は一部気が付きながら特に対策には踏み込んでおらず、目の前で起きれば注意するが、それほど問題視もしていない段階。

集団登下校のグループにも、他のクラスでありながら同様の暴力を行うメンバーが2名おり、こちらの方がエスカレートする傾向が強い

ここまで本人や同級生、担任などから得た情報を合わせて進めていった結果、この流れになってしまった原因などはかなり把握出来ました。まだ、仲間はずれや無視などの、人間性を否定に掛かる段階ではないものの、流石に本人もようやく“辛い”と感じだしたようでした。
一年生の頃から続いた曖昧ないじめ問題でしたが、本人の実感がついてきたことで、やっと対策がとれるようになりました。

根本的な問題・ASDの受動型特性

彼の場合、このいじめの原因として大きな柱になっていたのが、【人との受動的な関わり方】と【刺激を求める・煽る】という二つの特性だったと思われます。
【人との受動的な関わり方】とは、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の彼が持つ、受動型ASと言われるタイプの性質で、彼にはその傾向が特定の条件下で色濃く出くるという特徴があります。
自分の意見を持たず、周囲の人に合わせることで社会生活をこなそうとするのが主なモードで、自発的に自分の気持ちや意見を持とうとしなくなります。人に何か指図をされなければ動かなかったり、物事に対して好きか嫌いかも、その場の人の意見に合わせてしまう。
親や教師が動けなかったのは、彼の暴力に対する気持ちが受動的で、問題にしようとしなかったことが主な原因です。そして、本人が問題にしていないため、周囲の子どもたちもそれが【悪いことだ】とは思わず、そこに関わるメンバー全体のエスカレートにつながっていたようです。
【刺激を求める・煽る】とは、慣れない環境や新しい場面、想像とは違う状況に対峙した時、それらにメモリを奪われて、自分を感じるための認知力は下がる反面、目の前の状況を受け取ろうとする機構が強く働き、楽しいこと・怖いこと・嬉しい事・嫌なことなど、感覚を強く刺激する事柄を、もっともっと強く感じようと、自ら煽って激しくしようとしてしまう状態です。
受動的な状態で、例え叩かれて痛かったとしても相手が笑っていれば合わせてしまい、それを楽しいことだと思い込もうとしたり、自分の感情を著しく鈍くさせてしまうのです。ただただ相手に合わせようとした結果、自らもその暴力を『楽しいこと』として昇華させようと煽り始め、相手は何のためらいもなく、それが当然のように暴力や一方的な関係が保てるようになってしまいます。
彼が受動的な特性を発揮してしまう条件とは、【そこに自分がいる事の意義・自分は何をするべきか】を見失った状態であることです。
そして、その【受動的な特性】は、前で話す先生の指示が【自分の事として聞き取れていなかった】という、自らが含まれる“多勢”の立場が理解できていなかったという部分にも現れていました。
結果、彼は何をするにも、皆が動くのを見て行動を読み取り、合わせて動くパターンが常態化していたわけです。これは保育所の年長の頃から見られましたが、実際は彼にとってどれほどの影響を及ぼすのか想定できていませんでした。
この全体の流れに合わせて動く様式は、指示を受けて理解する認知力を弱め、【そこに自分がいる事の意義・自分は何をするべきか】を急速に失わせてしまいます。この時、彼はボンヤリと“そこにいる実感を失っている状態”で、どこか【みんなから遅れているかもしれない】という漠然とした苦手意識が植え付けられてしまってもいたようです。
つまり、まず彼は学校にいる間の大部分が、常に小パニック状態でもあった可能性があるということです。
本人がそこにあるいじめに対して、いつまでも拒否のひとつもせず、まるでそこに自分がいないような【離人状態】や【失感情症状態】が続いているのであれば、大人が動くだけでは実感がともなった解決にはなりません。『嫌だ・辛い・止めて』をしっかりと実感しなければ次に進めません(受動傾向の強い彼の場合は、この“実感待ち状態”をクリアすることが、要所要所で必須になることがあります)。

いじめる側といじめられる側

いじめる側といじめられる側、どちらが悪いかといえば、言うまでもなく一方的な力の行使をしている“いじめる側”です。社会性を選んだ生物である以上、どんな事があっても“暴力で一方的にパワーバランスを押し込んでいく行為”は許されるものではありません。
ただ、時に“いじめられる側”が、その自分側のパワーバランスの一端を、最初から放棄してしまっている場合があります。それでもやはり、“いじめる側”は許されるわけではなく、立ち止まらなければなりません。
この【立ち止まる】が非常に難しい。
“いじめる側”にいて、そこに気がつくにはそれ相応の精神年齢と、知性が必要になります。今自分がしていることが、そこにいる集団に用意された“役割”に踊らされているだけだということに気が付かなければならないためです。これは一般的な認知力を持った大人でも、簡単にハマり込む集団心理でもあります。
ここで皆が踊らされている“役割”に自然と気がつけるのは、“いじめる側”が束になっても叶わない、圧倒的な能力差(腕力・コミュニケーション能力など、意見を通らせるだけの力でもいい)を持っている者だけです。
【集団において、自分がこの地位にいるには、こうしていなければならない】
“いじめる側”の多くは、実はこの“社会的地位への依存”が強いタイプなような気がします。この依存は“複数人”へのこだわりが強いので、依存を持つ者同士、一定人数が揃うと増幅しあう傾向があります。
そこに“合わせてしまう”受動型のタイプがいると、ピタリと“役割”がハマってしまうというのは、集団心理としてはあまりにしっくり来てしまいます。
この心理状態を崩すには、“いじめる側”の依存者たちが、その地位にいることに強迫観念を持つ前に、“いじめられる側”が確固とした否定をすること。もしくは“いじめる側”の依存者たちが自己顕示をせずに済むように、ピラミッドの上(圧倒的な能力差を持った人物)を用意して、パワーバランスを崩すことです。
しかし、なかなかそう都合の良いことはありませんので、わが家では長男自身に確固たる否定をしてもらうしかありませんでした。

実際に取った対策

まず最初に説明しておく必要があるのが、【なぜ、先生に相談しなかったのか?】という点です。『教師が介入しました。間に入りました。いじめが止まりました』。これでは根本的な解決になっていません。
役割に気が付かず、ハマりこんでいった者が、一時隔離された程度で気がつけるとは思えません。何より、長男自身が受動的な傾向を持っている以上、自分の守るべき領域をしっかりと認知しない限り、何度でも同じ状況にハマり込むのは目に見えています。
それには彼自身が『嫌だ!』と自覚できたタイミングで、拒否する経験をさせるのが最も速いと判断しました。彼自身が役割から抜ける感覚を憶えなければならないと考えたのです。
実際に取った対策をザックリ上げれば以下のとおりです。

●前半

嫌だ・止めろ・じゃあ遊ばない』の励行。
役割に翻弄されている中から、“いじめる側”に依存が強い者をふるいに掛けるためです。1度や2度では止めてくれなくても、最後まで言い続ければ、参加メンバーが減っていきます。これは一時的に“いじめる側”が焦燥感にかられて、状況が激しくなることがあるかもしれませんが、その場合は大人の出番です。
ただ、この年齢とタイミングでは、そこまではいかないだろうとも思っていましたし、長男自身が動けなかった場合も想定したゆるいミッションでした。

●後半

前半のふるいが効いたのか、メンバーが絞られてきました。家に来るメンバーも変わってきていて、やんちゃなタイプが家への悪戯を含めて、なんとか以前のように好き勝手にしようとする姿勢が見られました。
長男にはかわいそうですが、やんちゃがエスカレートしていく一定のタイミングでその子たちを叱るのではなく、彼らの前で長男本人を強く叱りました。『友達にルールを守らせられないお前が悪い』、『家に上げた以上お前がリーダーだ』と。
彼らを直接叱れば、本人同士の付き合いに遺恨が生まれる可能性もありますし、余計な反発が生まれることもあります。ただ、その時に来ていたやんちゃメンバーは、全ての解決後にだんだんと付き合いがなくなったようです。
最終的に彼のいじめがストップしたのは、【“やめろ”は3回まで、それでもやって来る相手は叩いていい】と勝負に出て、ケンカをしたというたった1回の自発的な行動でした。
まだ小学二年生という低学年であること、進行具合がまだ比較的浅かったということがあるかもしれませんが、以上の動きで完全に長男のいじめはおさまりました。本当にたまたまだったのかもしれませんが、ひとつ言えることは、あれ以降の友達との付き合い方に、しっかりとした気持ちを表現できるようになったということです。
現在では笑い欲しさにおどけたり、自虐ネタを放った後、しつこくバカにしたようなことを言ってくる相手に、『ああ、しつこいな。やり過ぎると面白くなくなるってば』と、センスを突き返すという高度なテクニック駆使したりしている様です……。

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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