ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:軽度アスペ・ACな妻

アスペ妻の記録~いじめとの闘い~

2014-04-25 Category:軽度アスペ・ACな妻

長男の努力

最初は本当にただのじゃれ合いだったのかもしれない。しかし、その頃の長男は『物を壊される』だけでなく、少しずつ怪我やミミズ腫れを作って帰ってくるようになっていた。
夜のうなされがどんどん激しくなり、泣き喚く。
朝はケロッとして学校に行き、小さな怪我をこさえて、家で沈む。
私は妻に『様子見』を続けさせながら、彼が自分から変化が来るのを待っていた。
効果は意外と早く現れた。
まず、家に遊びに来るメンバーが変わった。今まで来ていたメンバーのうち、やや大人し目だった顔ぶれが来なくなっていた。結果的にやんちゃの強いメンバーが残り、余計に家での遊びが激しくなった。
第一の変化だ。すぐに私は行動に出た。
物を壊された報告に来た時、私はその子どもたちの前で、長男自身を怒鳴りつけた。
『壊された? 止められないお前が悪い!』
『ルールも守らせられないのなら、うちに上がらせる権利はない』
『お前が家に上がらせた以上、リーダーはお前だ。全員分叱られる覚悟をもて』
長男は涙を流したが、私はそれ以上なにも言わず、仕事部屋に戻った。
そして、その効果もすぐに現れた。
まずやんちゃメンバーのうち、一番調子に乗るタイプが来なくなった。
そして遊びの中でも長男が意見している様子が目立つようになってきた。
子どもは非常に分かりやすいもので、叱られ慣れていない躾けの甘い子は、すぐに姿を見せなくなり、かわりに長男本人が普通に遊べる友達にメンバーが変わっていく。今までやんちゃしていた子どもも、普通のつきあい方に戻っていった。
それでも2人ほど、その状況を読めずに今まで通りにしようとするのが残ったが、それもやがて来なくなった。つまり、長男自身のつきあい方1つで、人間関係の形成は一気に進みだしたということ。もう、家で長男に嫌なことをする傾いた関係の友達はいない。

暴力の激化

家での問題が落ち着くに一方、学校での暴力行為はエスカレートしていた。それまではクラスのほとんどのメンバーが加担していたいじめ行為も、長男が毅然と断ることで多くがやめていき、最終的に6人のメンバーに残った。
この6人がいわば『引けなくなった』タイプで、自分の暴力を見せつけようとしたり、他を巻き込んでやらせることで自尊心をあげようとする傾向があるようだ。
そしてとうとう事件が起こった。
事業参観日の当日、保護者が学校に来る直前から、長男への羽交い締めからの殴る蹴るが始まり、泣きだした長男を放置して離散しようとした時、羽交い締めにしていたメンバーが前のめりに倒れた。
長男は羽交い締めされたまま、顔を壁に擦りつけるようにして倒れ、アゴ・唇・鼻・頬にやや目立つ傷を作った。
メンバーは彼をその場に放置。他のクラスの教師に発見され保健室に行く。
授業参観が開始しても息子の姿がない、私のかわりに参観に向かった妻がおかしいと思い始めた時、激しくうなだれた彼が教室に現れ席についた。顔は傷だらけ、酷く落ち込んでいていつもならお祭り騒ぎで参加するイベントにも加わらず。
妻は帰り際にその経緯を担任の教諭から説明をうけ、そのまま帰って来てしまった。妻からの説明を受けた時は夜、もう事実確認の説明もとりようがない。翌日からは連休。相手の電話番号も何も、個人情報保護法で知ることも出来ない状態。
腸が煮えくり返る想い。……ただ、私はそんなことはもうどうでもよかった。ようやく、罠が発動したのだから。

自分の価値

長男は家に帰っても激しく落ち込んでいた。
私『……悔しいか?』
長男『……うん。』
私『お前が嫌だっていわなかったんじゃないのか?』
長男『……いった。ヤメテっていったけど、やめてくれなかった』
私『じゃあ、そいつらが悪いなぁ』
長男『……うん。』
いつもは友達をかばうようにしていた彼が、友の落ち度を認めた。第二の変化だ。
私『どうしてやりかえさない?』
長男『……え?』
私『どうせ悔しがるばかりで、やり返したりもしてないんだろ?』
長男『やったもん! でも相手が多いからやられちゃう!』
私『勝てるなら、勝ちたいか?』
長男『……うん。』
私『ああ、それじゃダメだな。戦い方を教える価値もない』
長男『え?』
私『お前は今、【いじめ】を受けてる。今、お前はいじめられるクセがついてる』
長男『…………。』
私『嫌なものを嫌だと言って通じないなら、もう闘うしかないんだよ。人数多いからもう気持ちで無理だって思ったんだろ?』
長男『…………。』
私『……自分で勝つ気がないなら闘いようがない。残念だったな。』
長男『…………。』
私『…………。』
長男『…………。』
私『…………。』
長男『…………。』
私『…………。』
長男『…………勝ちたい。』
私『…………ほう。』
長男『ぼく勝ちたい。』
父親が沈黙を続けても自分から会話の決着をつけてくる。第三の変化。これでこちらの準備は整った。

正しいケンカのしかた伝授

なんでもかんでも【仲良く】な昨今、これをいじめに悩む息子に教えるのは、時代錯誤もいいところだろう。でも、時代は変わったって、人間のもろさは変わらない。
ハッキリ言って長男が『嫌だ』を言えるようになったからといって、いじめがなくなるなんて絶対にありえないと思っていた。最悪、彼に勇気がなくて言えなかったとしても、『嫌だ』と言えない自分の意思には気がつくはずだ。もし、そうならすぐに大人が動けばいい。
しかし、長男の場合は意図が分かれば純真に果敢に挑んでいくことは分かっていた。
いじめの発端は長男自身かもしれない。しかし、本人が『嫌だ』と言う以上、それは一方的な暴力になる。これが毎日起きていて、学校はよく起こる怪我の原因を理解しても動けていない。今まで続いていたことと言えば、【暴力発覚⇒先生が謝らせる⇒ごめんなさい⇒いいよ】これで自分の意思まで完結したと思い込む長男自身の『自分の心の認知の甘さ』が明確になったということだ(自閉症スペクトラムの子にありがちなはまりパターンっぽい)。
これは本人が自分の腕でもって、状況を打開し『意思』を勝ち取る免罪符をもらったようなもの。問題はデリケートだし、暴力で解決することは決して褒められたものではないかもしれない。しかし、『意思を表に出せない』人間が、自らの力で勝ち取ることは大きな意味がある。
責任は取る。お前の墓穴も掘ってやる。ここまでお膳立てされて立たないのなら、生き方をここで考えなおさなければならない。
彼に授けた方法は次の通り
・いきなり全員に挑もうとはするな。まず、ひとりをねらえ。
・毎朝いきなり小突いてくる奴が最初のターゲット
・『やめろ』を三回まで言え
・三回言って止めなければ相手を叩け
・これをやってくる度、相手がひとりのうちにやれ
一応空手経験者、ひと通り戦い方を教える事はできるが、今はなにより時間がない。慢性化する前に一針見舞って、なるべく一撃で沈静化を図らないと失敗するだろう。拳ではお互い怪我をするし、ビンタではやり返されて白熱する可能性があるし、耳に当たるとまずい。かと言って掌打は危険もある。
鉄槌。拳を握り、肩たたきの要領で振り降ろす。その際、やや腰をひねりながら体重を乗せ、肘からコンパクトに降り出し当てる。狙う場所は肩もしくは斜めに頬骨をへ打ち込む。(※危険ですので絶対真似しないでください)
短期間でマスターでき、傷を作る鋭利さがなく、恐怖心が少ないのはこれが妥当だろう。まず小学生のケンカで、ここまでの方法論を持ってやり返されることはない。確実に面食らい、次からちょっかいを出す時に躊躇するだろう。
大人用の人型サンドバッグでは背が高すぎるので(独身時代の無駄遣いがここでも役に立たなかった)、家の柱にクッションを巻き、ターゲットの身長を想定して固定。打ち込む練習を連休の間続けさせた。

再認識

連休明け初日、朝から彼は気を引き締めて出て行った。その帰りを待ちわびる。
仕事をしながらも気がそぞろになる私と妻。
そして長男の帰宅。まず、いつもの様に妻が様子を見に行った。
しばらくして妻が仕事部屋に帰ってきた。
妻『だめだったみたい……』
ややがっくりしながらも、本人のもとへ。
私『どうだった?』
長男『うーん……できなかった』
私『……怖かったのか?』
長男『うーん……嫌だったけど、殴る程でもないかなぁって』
思いっきり頬に平手を張った。今までにない本気に近いビンタだった。
倒れこんで困惑する長男を引きずり起こし、もう一度。
私『嫌じゃない? そうやって先送りにするから終わらないんだ!』
長男『……………』
私『叩かれる毎日に追い詰められているのはお前だ! 今日はたまたま気にならなかっただけか? じゃあ、いつになったら本当に止めさせられるんだよ。今日たまたまOKなら、明日だって相手は来るぞ』
長男『……………!』
私『お前が嫌だで終わらせなかったら、誰もお前を助けられないんだよ!』
しばらく長男は座り込んで考え込んでいたようだった。
夜、私の近くに寄ると小さいが驚くほどしっかりした声で
『ぼく、がんばるから』
と告げて寝室に向かった。
私は振り返えらなかった。

その日

翌日、帰ってきた息子はどこか心ここにあらずだった。
(失敗したのか……?)
妻に呼ばれて行ったリビングに何処か眼の焦点が遠い長男の姿。
長男『ぼく、勝ったよ』
怒られない為に嘘をついているのか? 彼を知らなければそう疑うだろう。ちがう、これは『嬉しすぎた』時に起こる、離人状態だ。
つまり、息子は人生で初めてケンカし、勝って帰ってきた。
不謹慎かもしれないが、私達はその日焼肉屋で豪勢に祝った。暴力で解決はいけないのかもしれない。でも時には暴力には暴力で抗わないといけないこともある。自分の息子が男になって帰ってきて、祝わない父親はこの世にいるのだろうか?
長男は一番問題だった子と朝イチでケンカして勝ち、だれもそれを咎めなかった。その帰り、違うクラスで帰りが一緒のいつもランドセルにいたずらしたり、キーホルダーを壊したりしてきていた子ともケンカ。
その全てにしっかりと正しい手順で意思を伝え、その上で挑み、勝ってきた。
そして、夜、妻と泣いて抱き合った。
結果が間違っていたかどうか、それは翌日の帰宅時の彼の顔を見れば一目瞭然だった。
全然、だれも、ぼくに嫌なことしてこなくなった! ふつうに遊んでくれた!
これほど明るい顔は数カ月ぶりだ。最初に心配になって声をかけてからすでに半年が過ぎていた。これ以後、彼の友達に対する断り方に一定の線が出来上がった。つまり、友達付き合いを変えることなく、関係を適正に持っていけるようになったということ。
これは最初から大人が入ると学習できない領域だ。やらせるのはあくまでも本人に。特に自分の気持ちの認知が弱い彼にとっては、社会性へのハードルのようなものだと思っていた。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の特性が招いたことかもしれないが、これがなければ長男はもしかしたら、一生理解ができなかったかもしれない。
拒否が生み出す人間関係の適正距離の把握─。
これはかつて妻が子どもたちに注意をするようになった効果と同じもの。そして定型でも多くの人が悩む、人間の距離感なのかもしれない。この長男の問題が、長男だけでなく妻の弱点をさらに浮き彫りにしたことになる。
長男のお陰でここからもう一度、私は妻との詰めるべき【ズレのポイント】へ、より深く向き合うようになる。

【つづき】⇒アスペ妻の記録~あやまらない生き方~

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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