妻
幸福の指標
相変わらず夕方に潰れることはあっても、その頻度も低くなり、それ以上に普段の生活に活力が出てきた妻。
以前は仕事を始めても困ったような表情で、やることはやるがどこか不服な色があった。
夕方が近づくと疲れきった表情に、『ダルい』を前面に出した態度になり、話しかけても非常につっけんどんであったり、生返事で返されることが多かった。
しかし、今はそれがない。
仕事の指針は決まっていて迷いがないし、体調の変化を口にするようになったので、『なぜ表情が硬いのか』が分かるようになった。
この『なぜ』が分かるようになったことは、パートナーとして非常に安心材料になる。
ただただマイナスな印象の表情のまま、となりで一日を過ごされるのは、息が詰まる思いになるからだ。
そして心が弱ると、パートナー自身が自分を責めるようになる。
『自分がなにか悪いのではないのか?』
と。
幸せも不幸も結局は自分の受け止め方に他ならないが、その受け止め方の材料になるのは、他者との関係やそこからの評価が大きい。
そしてその評価の判断は、
親しい者の表情が大きなウェイトを占めている。
親しい者の表情が大きなウェイトを占めている。
笑顔があふれる幸せな毎日ではなくても、親しい者の表情から『不幸だ』と感じない状況であれば、感じる苦痛は激減する。
妻の安定は私の肩を軽くし、また妻自身もよけいな自責を持たずに済んだようだ。
『母親が元気な家は幸福である』
よく聞く言葉だしその通りだとも思うが、それは母親の素質やポテンシャルではなく、母親が元気をだせる環境であることが大きいのではないだろうか。
そう思える状況にまで家庭が温まりつつあった。
そしてその要素として、長男の安定も大きい。
そしてその要素として、長男の安定も大きい。
長男と娘の明暗
ぎこちなくとも私への先入観を払い、関係を築こうとできるようになった長男。
彼はあらゆることに爆発的な成長を始めた。イヤイヤ時期が終わった事もあるのだろうが、自分の中の疑問や思い込みに対し、ただただ感情的に否定しなくなったからだ。
さらに親の言葉をある程度冷静に聞けるようになったことで、『不安が解ける安心感』を感じたのだろう。一気に大人の言葉を吸収できるようになった。
【かわいい】
親の資格の無い言葉かも知れないが、妙な後ろめたさのような【わだかまり】なく、手放しでそう思えるようになったのは初めてだった。
それでも長時間一緒にいるのはお互いに大変だったが、夜、家族が寝た後の静かなひとりの時間、日中に取った携帯の画像を見て頬がゆるむ余裕ができた。
なにより、今まであきらめずに伝え続けた様々な知識や知恵が、彼の中で息づいていて、明らかに生活態度や雰囲気に秩序が現れだしていた。
一時、毎日のように保育所で何かしら問題を起こしていた彼が、一転してどこに行っても『しっかりしてるね』と言われるようになっていた。
これは私たち親の周囲の人間関係にも大きな好影響を与えてくれた。
まだ妻に対してはわがままを言うことはあったが、年齢相応の甘えの表現でもあり、以前のような一方通行ではない。それが妻の言動にも余裕を与え、適切なしつけや関係につながっていた。
正しい失敗と正しい対応。失敗があるから事の発展がある。
正直、彼の過去の行動には何処か『イヤイヤ期』だけでは説明の付かない、なにか引っ掛かりが多かった。しかし、今、歳相応の範囲内の言動とコミュニケーションが取れている。
不謹慎ではあるが私はこう思っていた。
よかった、息子はやっぱりふつうの子どもなんだ。イヤイヤ期にちょっと頑固で、ちょっと独特な考えが多かっただけなのだ。
だからきっと、娘もだんだんと落ち着いてくるはずだ!
しかし───、
息子の【真意】すら分からない私が、未来のことなど分かるはずもなかった。
【つづき】⇒~やすみのおわり~
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