ASDでACの妻と
アスペルガーのこども2人を持つ
定型夫の研究帳を公開します。

Category:軽度アスペ・ACな妻

アスペ妻の記録~蚊の掟~

2014-05-24 Category:軽度アスペ・ACな妻

書いてある内容をちらっと

闇雲

迎えにきた妻は、オロオロするばかりで要領を得ない。娘のことで2~3のダメ出しをした後、ぼんやりとした頭のまま、車に乗った。
妻は沈黙している。時折、道路の脇のどうでもいい看板の事や、今する必要もない質問をしてきたりする。たどたどしさがあからさま過ぎる。
(……それは、君が気まずくて、話しして欲しいから、必死な姿見せようとしてるの? まだ、こっちに心を割けって言うのか?)
腕に直接あたるカーエアコンの冷たさが何処か遠い。本当にこれは現実なのか? 家につくと私は深夜まで眠り続けた。
妻『ごめんなさい』
妻から口を開いたのは3~4日も過ぎた頃だろうか? 正直よく憶えていない。ただ、彼女なりに答えが出たようだ。【話しかけなきゃ】と。その答えに果たしてそれだけの時間が必要なのか?
私『ごめんなさいって、なにが?』
妻『あの……娘を見ないふりしてた』
私『ああ、それは理解しているんだ』
妻『………………』
私『また、黙るの? また、そうやって人に話をさせて解決させるつもり?』
妻『ちが…』
私『出て行った時だって、止めもしなかったよね? あれ、本当に失踪だったらどうだったのかなぁ? 君、完全に見失ったよね。あの時なにやってたの?』
妻『………………考えてた』
私『なにを?』
妻『……また、やっちゃったって』
私『なにを“やっちゃった”って考えてたの? 言葉が足りないよ』
妻『あ…ごめ…。娘から逃げて、それが悪いことになるって分かってたのに……』
私『じゃあ、あれから君は自発的な会話を避けていたようだけど、なにか理由が?』
妻『さ……避けてたわけじゃなくて……』
私『なに? 言葉はまとめて言ってよ。会話の中でまで葛藤されてたら会話にならない。話すと決めたら、うまくなくても考えを伝えることを優先してよ』
妻『あ…ごめ…避けてたわけじゃなくて、考えてたの』
私『……! だから、言葉を止めるなよ! 全部伝えろよ! いちいち顔色を伺うな! 自分の考えをしっかりと最後まで伝えて、会話を自分で終わらせる努力をするんだよ!』
妻『ああ……えっと、ごめんなさい。避けるつもりとかじゃなくて、考えてたの。自分がどうしてこう止まっちゃうんだろうって。いつも【動かなきゃ】って思うんだけど、【どうすれば】って考えて止まっちゃうの』
私『……じゃあ、ここに話しに来た理由と、その結果はどうなってほしいわけ?』
妻『許して欲しい。もう、こんなことはしないから。許して欲しい』
私『こういうやり取り何回目だっけ?』
妻『あの…えっと』
私『……ああ、ごめん。回数とか思い出そうとかしなくていい。前もやったよねってこと』
妻『……う、うん』
私『あのさ、何度もしていることに対して、今、過去を引っ張りだして責めようってんじゃないんだよ』
妻『……??』
私『君がなぜいつもここで立ち止まってしまうのか、【こういうのが苦手で止まっちゃうから】だけじゃなくて、【なんで止まっちゃうのか】【なんで苦手と思うのか】を見つめないと、君は何度だって繰り返すってことじゃないの?』
妻『……なんで止まっちゃうのか?』
私『そう、君はいつも勝手にコンプレックス爆発させて、【考えてる】って固まっちゃってるけど、それは心がわからないとか苦手とかの話じゃなくて、自分の本当の心の動きが分かってないだけじゃないの?』
妻は突然大粒の涙を流した後、急に目が輝きを取り戻し、顔に生気が戻る。彼女はパニックから帰る時、よくこうなる。つまり娘との一件依頼、彼女はずっとパニックを起こしていたのだ。
パニック時の彼女の思考や視界は驚くほど狭い。
通常時は表層的ではなく、ふつうの定型者と同じく、前後関係を加味した上での思考ができる。しかし、一定の条件で彼女は表層的な思考に陥り、パニックになり、ただただ時間を浪費する。
そして、その間は何も終わらせることができない。
しかし、世界は動いている。その間も変化は訪れ、新たな問題が降って湧いてくる。彼女はそれを全て同じ力で同時進行で動かそうとしてしまう。その闇雲な対処は、ただただ現実に目を奪われ、何度も考えなおされるため、結局【解決できない・苦手なこと】として未消化のまま心に残ってしまう。
なんてこと無い問題でも、ひとつつまずけば全てが滞る現象の裏側には、この一つ一つを消化しきれていないところにあるように思えた。
ただ、前進がないわけではない。数年前の彼女だったら、この案件は確実に心の中に極秘に隠され、触れられることもなかっただろう。数日で自分から打破しようと前に出てきたのは、以前からは考えられない進歩だった。

優先順位の放棄

ではこういう時、自分はどんなプロセスで思考し、対応しているのか? いくつかの問題が交錯し、失敗し、気まずさが生まれるようなケースではどうしているだろうか?
私なら優先順位をつけるが、なにより最優先事項が常に頭にある状態だ。その最優先事項が今どうにか出来るか出来ないか、それによって次に手をつけるべき問題を決めておく。その間も、すぐに片付けられそうなものも把握しておき、少しでも手が空いた瞬間に終わらせて、自分のメモリを確保している。
どうやら妻はその優先順位が付けられず、全てが同じ大きさの問題になってしまうようだ。だから、その他の小さな問題にまで硬直してしまう。結果、パートナーが傷つき、出ていこうとしても【答えを出すこと】を優先し、パートナーをまず“気にかける”ことができない。
単純に考えて、妻が生活の中で【何が今、大事な時なのか?】が見えていないことは確かだ。優先順位を付けてどうこうするという考え方は、すでに社会人になった時から言われていても、それが実生活に機能していない。
何に混乱しているのかは、本人との会話でも明確にできないし、だからそ手が打てずに混乱していることも分かる。ならば、最初から優先順位など放棄してしまえばいい。
私『今、うちで一番大きな問題ってなんだか分かる?』
妻『……娘のこと』
私『………。まあ、端的に言えばそういうこと何だけどね、実際はあの子自身が【こうなるかもしれない】とか【こうしなくちゃ】とか、ふっと思いついたり思い出したりしてる事にとらわれてるってことでしょ?』
妻『……うん』
私『で、そのとらわれだす瞬間には、必ず何かしらの表情の変化が今のところ見られてるってことはわかってるんだよね?』
妻『うん。それは分かる。……いつもじゃないけど』
私『これから娘はどんどん知恵をつけてくる。自分の考えが進むほど、もっと表に出さなくなる可能性も考えられないか?』
妻『……! 怖いねそれ…手が付けられない』
私『これから難しくなるかもしれないのに、今から君が固まって顔をそむけてたら、数年先はもっと分からなくなると思わない?』
妻『……うん』
私『君はどうすればいいかわからないから硬直するんだよね?』
妻『うん。どうしようって考えちゃう』
私『それを君が考えて答えが出せるの?』
妻『…………無理』
私『そう、この一回で終わる話じゃないからだよ。何度だって声かけて、失敗したら言い直して、少しでも響いてそうな方法を紡いでいくしか無いんじゃないかな。申し訳ないけど、今君がやろうとしていることは、一発で終わらせるような重たい答えを、一度もぶつからずに出そうとしているってことなんじゃないかな?』
妻『………!』
私『重ねて、申し訳ないけど、それは単純に君の脳が【ストレス対応】するために、考えているように見せかけて、最初から【無理だった】と手放すようにしてる可能性はないか?
妻の目から再び大粒の涙があふれだす。
妻『う~、ぐすっ。そうかもしれない~。私、小さい頃からそうやってたのかもしれない~ううっ』
私『今、泣いてるのも、ただの対応だから。冷静にこれからやるべきことだけ聞いて欲しい』
嗚咽混じりに語ろうとする妻をバッサリと切った。こういう時の彼女は、自分を見つめるようで見つめていない。ただ自分のコンプレックスを徒に刺激して、考えるふりをしながら固まるだけだ。そう、これも彼女が幼少から培ってきた、脳の対応なのかもしれない。
これをいきなり止めさせるのは不可能だと思ったほうが賢明だろう。今、同時進行で彼女のケアをしながら、娘の対応はできない。逆に妻の対応をするには、娘の問題行動は非常に邪魔になる。つまり、今は妻が動ける形を第一に設定し、なるべくこの“脳の対応”を表に出さないようにする必要がある。

蚊の掟

蚊が幼虫から蛹になり、羽化をする時───。
それは水面に表面張力で浮きながら脱皮をし、羽が乾くまで過ごす。この間に少しでも波が起これば、二度と飛ぶことはできず、命を落とすことになる。
雨、風、波、他の生物の営みですら脅威だ。
しかし、蚊の寿命は短い。今、波が起こりそうだと怯えていても、翌日に延ばすのは彼らの命にとって大きなロスであり、その遅延がまた命取りとなる。
つまり、怯えるだけ無駄だということ。
失敗覚悟で、確実に自分のするべき動作を完成させるために、集中しきる必要がある。その間に天敵が来たらおしまい。些細な事でも命取りになる。
それらのリスクを考えていて、なんの足しになるというのか?
彼らは自分の成功した先を求め、水面に浮いた自分の皮を、貧弱なボート代わりにその瞬間を待つ。
彼らは羽が乾いた時、今度は今まで脅威であったはずの、一陣の風やさざ波を利用して飛び立つ。今度は逆にこれらが起こらなければ、命の危険がやってくる。無風、凪では水面から飛び立てないのだ。
そうしたギリギリの環境から彼らは飛び回る。どこにでもいる蚊も、そうした試練を超えてやってきた者達。
これは人間にも言えることで、どこの誰でも大小あれど苦労をし、恐怖や不安に立ち向かいながらそれに見合った成果を得ている。何にでも失敗はつきものだからだ。だから、失敗は誰も珍しいことだとは思わないし、特別視もしていない。
“どこにでもある何かの現象”でしかない。
妻は、いや、妻も娘も長男も、この“どこにでもある何かの現象”を非常に重たいものと捉えている。間違い、すれ違い、取り違い、失敗。これらは他者からは別段珍しいことでもなんでもないのに、ひた隠しで通そうとしたり、わざわざ脳が独自の対応を無意識にするほどに心割いている状態だ。
来るかどうかも分からない波風におびえて、殻に閉じこもっていたら、殻を破ることも出来なければ、それまで怯えていた波風を利用して、広い世界を見ることも出来ない。
失敗やリスクに目をつぶり、やるべきことをこなし、さっきまでの自分にとって脅威だったものを利用して飛び出す。これは蚊の掟。
私『考えるのは止めて? それは勘違いだから』
妻『でも、どうすればいいのかわからない』
私『君の違和感を信じればいい。君の脳が対応しているくらいなんだ。違和感を感じたから硬直しているんだよ。それを信じればいい』
妻『……信じて、どうすればいいの?』
私『その違和感を彼らにそのまま伝えればいい。【それ、何やってるの?】って。一歩動けば流れだすと思うし、これを繰り返してやっと自分の武器を手に入れられるんじゃない?』
妻『違和感を……そのまま……わかった。やってみる!』
……応急処置。そんなことは分かっている。
しかし、これだけ様々な因子が絡んだ硬直は、一気に解決なんかできやしない。少しでも進めるなら、それが失敗の方向だったとしても、ここより進んでいるのは確かだ。
蚊の掟。
人は時折、他の生命や事象に生き様を例えることで、自分を理解することがある。自我を他に移すことで、自分を客観的に認知しなおしているのかもしれない。

【つづき】⇒アスペ妻の記録~祖母への告知~

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  • 夫。30代。
    定型。フリーのデザイナー。
    自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
    心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。

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