アスペな娘の5歳時期所感
4歳からつづく【人との距離感の取り方】や【物事のとらえ方】のズレでの問題。4歳の時はただただ癇癪などの、感情的な反射が主でしたが、5歳になると今度は自分なりの考えや方法論を持って耳を塞いだり、演技ができるようになったため問題が極大化しました。
しかし、会話能力も向上していったため、受け入れさせることに成功すれば、ある程度の意思疎通が可能にもなった時期です。それまで癇癪が酷くて、ほとんど理解できなかった彼女の特性が見えてきて、ようやく自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)について調べてきた事が通用し始めました。
手が打てる安心感を得られるようになったのは、非常に大きな進歩でした。
社会性と特性のぶつかり合い
長男の時もそうでしたが、5歳はお友達との関係が広がり、その中で社会性を形成していく時期となりました。ただ、長男より自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)としては、自閉傾向の強い娘の場合、集団行動にパニックを起こしたり、先生との関わりに思い通りにいかないと立てこもるなどの行動がでてくるようになりました。
今まで幼かったからこそ、本人が耳を塞いでそっぽを向いても問題のなかった生活が、社会性という点で立ち行かなくなってしまったようです。さらに本人も成長するに連れ、【こうしていればいい】などの自分なりのパターンを意識するようになり、そこに固執するあまり一切周囲に耳をかさない事態へ。
しかし、彼女の場合はそれを外では表面化せず、家庭内でそのフラストレーションを爆発させました。特に起爆となっていたのは、【私がこう思っているのに、親がその通りにしてくれない】と言う、自分と他人の違いが分かっていなかった事です。最も信頼できるはずの親なのに、自分の思う通りの世界を築いてくれないことが、どうしても許せないようでした。
距離感と両極思考の自縛
ここまでで当時分かったことは、彼女にとって大きな壁となっていたのが【人との距離感】と【両極思考】の二つだったようです。
【人との距離感】がないと言うのは、ただ単に引き際が分からなかったり、言っていいことと悪いことの区別がつかないだけの問題ではありません。彼女は自分の考えや気持ちが、全ての人間と共有しているものだと考えていたのです。だから人が思い通りに動いてくれない時も、口に出す理由がありません。そのまま感情をぶちまけるしか方法論がありませんでした。
また愛着が強い相手に関しては、【真顔・否定・拒否・注意・意見の相違】などがその度合に関係なく【自分を全否定している】ことになりパニック、【笑顔・肯定・受け入れ・意見の一致】などはやはりその度合に関係なく【自分を全肯定】ことになり、免罪符を受けたように振る舞うなどの両極思考が、気楽に歩けるはずの道を複雑怪奇にしていたのです。
この二つの特性が絡むことで、些細な相違がパニックに、些細な笑顔が問題そしてその後に続くパニックの元になっていました。そして、このふたつは分かっていても、なかなかに手が打てるものではありませんでした。まずは彼女自身が【そんな時どういった行動を取る傾向があるか】、【そうするとどんな損失が起きているか】を何度でも指摘し、その答えを言わせるところからスタート。それらが引き金になっている事態をなるべく分かりやすい言葉に変えて反復、可能なら起こる前に予言しておくくらいに、しつこく理論的に理性的に淡々と説明しました。
その後、問題がやや小康状態になった頃合いで、それぞれの問題行動ごとに対策を取ることになります(こちらが有利に心理を読めるよう、ある程度のチャンス待ちも必要)。
本人の苦しみを正確に理解しようとする
分かれば分かるほど、彼女がどんなにきつく狭いルールの上で、この変化の多い世界を渡り歩こうとしているのかが見えてきました。
【人との距離感】が分からないということは、通常では軽く受け流されるような事に裏切りや絶望を感じ、また、そこに存在するはずのない壁にぶち当たる事を意味します。また、【両極思考】は些細な事も極端に自分の価値を貶めたり、身の回りの簡単な問題を、人生に関わるような大問題に極大化させます。
これを5歳で背負うのはどれほどの苦痛であったことか。彼女にとっては『もう少し~~した方がいいよ』などのアドバイス一つでも、自己評価を委ねている愛着先の人物に言われることは、今までの頑張りも苦労も全て音を立てて崩れるほどの責め苦であったのかもしれません。この特性ならではの苦しみや、個性ならではの独特な問題の抱え方は、その距離感や問題の大小の認知の仕方によっては、自己評価を下げる・ストレス症状や不安症の引き金・対人恐怖などいくらでも自らに引き起こす可能性があります。
親子であろうが夫婦であろうが精神は別個ですから、完全に相手の立場に立つなど不可能です。しかし、客観的に想像しようとすることで、その度合は分からなくても“引っかかっているポイント”は感じられることがあります。特にそのポイントを感じやすくしてくれたのは、彼女の行動を箇条書して、そうだと分かり切っていてもASDの特徴として挙げられる事に、いちいち照らし合わせてみた試みでした。
その結果、認識している問題は多用だが、癇癪を起こしたり表面的に取る表情は同じで、そのせいで余計に彼女の心が読みにくくなっていたことを実感させられました。
特性などを本やネットで知って分かっているようでいても、実際、本人のどんな心の機微にまで影響しているのかは見逃しがちです。独特な言い回しや仕草、行動パターンがある場合、意外とその後ろには特性由来の防御反応があったりしました。
もちろんだからと言って、全てを肯定するものでもありません。『ダメなものはダメ』は動かさず前例を作らず、先に分かってやれることは助けを出して動きやすくしてあげました。正確な認識で物事をこなせば、次から余計な混乱が少しだけ減ります。今できる事はこの程度だと思って、こちらも少し肩の力を抜くことが出来ました。やはり知ることは大事です。
認知の貯蓄
彼女が『人との距離』を理解したのは、癖として初見で相手が笑顔であるかどうかを見ていたこと(笑顔なら優しい・遊んでくれる・守ってくれる・肯定してくれる人。真顔やしかめっ面は拒否・否定)と、愛着がある相手に対して『何かしなくちゃ・いい子にしなくちゃ』と極端に反応していた点を特性として理解したからです。
しかし、この二つはそれそのものだけの対策が物を言ったわけではないことも確かです。
うまく説明できないのですが、本人が分からなくても繰り返し続けていた言葉が、一気につながった瞬間をこの頃は何度となく見ていた気がします。
お互いに無理をしない
床に突っ伏した私が言うのも難なのですが、やはり無理は禁物だと思います。
親は状況により難しいですが、その子と離れる時期を作ったり、子ども全体・家族全体で何とかしようとせず、1対1で対峙することで見やすくなることや余裕が生まれます(もっと早くに閃いていれば……)。
親は状況により難しいですが、その子と離れる時期を作ったり、子ども全体・家族全体で何とかしようとせず、1対1で対峙することで見やすくなることや余裕が生まれます(もっと早くに閃いていれば……)。
娘本人も、保育所の遊戯、生活、騒音、感覚刺激の数々でグッタリ、その上で私との関係を構えてしまい、家でもリラックスできなかったのです。もうそれ以上、頑張れるはずもありませんでした。夕方、疲れているようであれば、一人になる時間を作り、ベッドや玩具部屋で好きなように過ごす時期も必要です。
【引きこもりの癖がつく可能性がある】と、どこかで目にしていたので不安は不安でしたが、癖も何も彼女はすでに電池が空っぽの状態でした。抱きしめるばかりが親の仕事ではないことを教えてもらったのだと思っています。【放っておいてやる】【一人の時間を作ってあげる】は、ASD当事者の場合、重要な充電・放電時間になることを改めて実感しました。
娘が夕食を待たずに自室に直行した時期は、1ヶ月程度の期間を3回ほど行いました。もちろんこちらが勝手に隔離したのではなく、本人の様子から判断した上です。本当に酷かった時は一週間ほど、保育所も休ませました。
これは多分凄く重要なところだと思いますが、中途半端に元気が出てきたり、【引きこもることを良しとする】表情が出てきた場合は、毎回1対1で【今休んでいる理由】【なぜ休むことになったのか】を説明することで、【そのままでいいのではない】ことを強調していきました。休みすぎるとどうなるのかをリアルに話すのも必要でした。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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