書いてある内容をちらっと
何度かメールでお問い合わせを頂いていて、その都度お返しする機会がありましたので、今回は【小ノート法】の具体的な使用例をご紹介したいと思います。
小ノート法とは、様々なやるべきことが頭の中で雑多になり、ワーキングメモリを超えてしまうケースへの効果的な対応方法です。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者の方の場合、メモリを超えてしまうと、なんて事のない会話が頭に入らなくなったり、ボーっとして実感すら失う離人感が起きたり、不安定感から両極思考が強く出て、自分の責任が大きくなり他の意見や提案を躍起になって止めようとしてしまうといった状態に陥ることがあります。
そうしたメモリの解放を行うために、常に持ち運べるような小さなノートを、ワーキングメモリの代わりに活用する目的です。特に視覚優位の傾向がある方は有効かもしれません。
簡単な概要
妻が使用しているのは、幅7cm程度のリング式のノート(100均で3冊入りだった)。
気になっていること
不安になっていること
何か上手くいっていないこと
焦っていること
言われて気になったこと
その日にあった印象的なこと
買い物リスト
近々会う人などの住所・連絡先など(後々にパパっと調べずに見返せるように)
付き合いの始まった人の名前や連絡先
をノートの後ろ側から書き込み、日常のメモと分けながらも一冊で済むように工夫しています。特に下2つの連絡先などは、スマホなどに登録してあっても、あえて手帳に書いておいています。
これは“調べる・確かめる”といった行動を思考する時に挟まないようにするためです。
妻はスケジュール帳も持っていますが、そちらを【仕事・家事・育児・生活全般】のスケジュール管理のみに絞り、そちらはシンプルに見やすく活用するために分けています。
具体例1【これは大事!】
直近で出来るようになりたい・注意しておかなくてはいけない事や、開眼・発見・戒めだと感じたこと等々。自分に今大事だと感じた事を一言もしくは短文でメモしています。
例えば子供の教育や関わり方で書いていたメモは
「4歳の次男には3回ルール!(同じ注意3回以上したら叱る)」
「やるべきことをやらす→夜、歯磨きか中の遊びのパターンができているのを崩す」
「出した指示は最後までやらせる(遂行させる)」
「夕ご飯の準備中でもしっかり子供を意識する(準備に全ての意識をもっていかない)」
「仕事と仕事の切れ間で休憩する」
「子供にしっかりぶつかれ!」
「相手に判断を任せない」
こうした大きめなスローガンともなる大事な項目は、ノートを見開きに使い、そのことだけを書き残こしています。特集のように他のメモから切り離して、ハッキリと眼に入るようにするためだそうです。
また、基本的には雑多な印象にならないように黒一色でメモをとりますが、こういった重大事項は時に赤を限定的に使い、すぐに目が行くようにしています。
具体例2【対人での疑問】
「何か友達と上手くやりとり出来なかった(気がする)」
「言われて気になったこと」
「言われたけどよく意味が分からなかったこと」
など、対人関係で起こったふとした疑問や引っ掛かりも、そのまま頭に残しておかずに、文字としてメモに具現化します。
あった事を日記のように記入
自分が何でそうしたか(思ったか)
相手に何をして欲しいと思っていたか
特にこの3つを意識して、ひな形のように当てはめて書くことで、未消化な案件にすることを避けます。完全な解決というよりは、モヤモヤしている状態から、原因や対象を見つけて落ち着く狙いです。
自分の気持ちや感情の生まれたポイントが分かると、例え起きたことに説明がつかなくても、【自分の手で形(文字)にする】事で一区切りつく効果があるそうです。
また、【視覚として情報を捉える】事で急に気がつく事があったり、「記したのだから、もう、忘れてしまってもいい事」として処理できる様になる効果も見込めます。
人に相談する場合の、聞くポイントのヒント集にもなるのだとか。
具体例3【大変な事があった!】
大きく動揺するような事件や、自己評価を下げるような失敗があった時のまとめ方です。
日記的に書く
人に話す事を意識する
誰かに話そうとする意識は、ポイントを整理するのには持ってこいな方法で、書きながら出来事を理解する事になります。実際、人に話そうとすると、話の組み立てや印象操作にメモリが割かれますが、文字にすることで前後関係を把握しながら整理できます。
締めくくりとして、考察でまとめると効果的な様です。「~~だから、今後、これには注意する」など。
具体例4【何か最近上手くいかない】
不安に思っている事がないか、焦っている事がないか、心のゆとりを失っている原因を探します。身体的な疲れや体調不良、スケジュールへの不安、具体的に思い浮かべられる未解決や気になっている問題などです。
PTAで上手くできるか不安だ
娘が落ち着いてきているが完全じゃない気がする
最近疲れやすい気がする
寝不足かも?
アレルギーかも?
など。これらのメモに対して、余裕のある今、出来る対処を考えておくと、余裕確保につながります。
PTAで……⇒○○さんは話せそうだから聞いてみよう
娘が……⇒夫に話そう・軽く誰かに愚痴ろう
寝不足?⇒今日は早く寝て既成事実を作る!
アレルギー⇒薬を飲む
と言った感じで直接的な原因を見つけたり、予めの解決策を講じることで、安心感を得る効果があります。
ただし、もうパニック状態に陥っている時に、【何か最近上手くいかない】となっている場合は、すぐに思い浮かぶ原因の後ろに、ちょっと思い出しにくい問題が放置されていたりします。
パニック状態でそういったことを、メモだけで思い出すのは難しいので、そういう場合はB5サイズ以上の大きな紙に、思い出せる限りの思い当たるフシを箇条書きで書き、ニュアンスが難しい物は文章として書き出しています。
【メモリを奪ってたのはこれだったんだな】というのを見つけると、あっという間にすっきりするそうです。
妻がパニックに陥った時に復帰した例
まずありがちな妻のパニック化のパターンは、以下の様な特徴があります。
1:Aに対して自分の中でちょっと失敗だと思っている
2:もうすぐBやCも始まる
3:Aの失敗は恥ずかしいが、とても些細な事なので気に病む事も無いハズ
4:あ~BやCも不安だな~とAの気分にBとCが引っ張られる
BやCの事が大きく頭の中を占領しているのでAの失敗を恥じている自分にも気づかず(無意識に知らんぷりしようとしている?)、勝手にBやCに対して大きな不安を持ってしまい、パニックになっていくケースです。
妻の場合は紙に書いていて、「実はAの事をすんごく気にしていたんじゃない?」と気付いた事を、私に話し「君はイベントAのプロになるつもり? 殆どの人がアマなのに?」とAへの気持ちを成仏させることで、BやCにも気楽に取り掛かれるようになるのだとか。
最近はこれを繰り返した成果か、私の言葉がなくとも【プロにでもなるつもりか?】と、自分で突っ込めるようになったとか。
使う頻度や付き合い方
少ノート法を使う頻度は、調子がいい時は全く使わなかったり、大変な波の時期はダダダーーーっと記入しまくっておいて、読み返さないページが続く時もある。
楽に生活できるようになったら、【明日やること・今日やること・忘れちゃいけない事】など、本当の意味での生活メモ帳になる。バックアップがあるから、こちらはメモリを消費できずに生活できる。
……というのが妻にとっての小ノート法の存在だそうです。
書くタイミング
感じたことを忘れないで済む時間内。これがライブでの基本で、何となく色々重なってきている時は、例えば仕事の場合【仕事前、現場に着いて気が抜けた後、これからやる事を考える時】など。
“これから”の時の方が、問題意識もあって良いそうな。
ちなみに活用出来てくると【これが大事!】が自然と分かり書き記せる用になる様です。妻の場合は習慣に取り入れて3ヶ月くらいだったそうです。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。