書いてある内容をちらっと
【話を聞いてても言葉がぼやけて入らない】
【しっかり聞いてたはずなのに、終わると憶えていない】
【“これは聞き逃しちゃならん”って力み過ぎて持たない】
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)もしくは何らかの特性などで、視覚優位が目立つ場合、上記の様な状態になってしまい、コミュニケーションや仕事で支障をきたしていることはないでしょうか?
今回は長男と妻のケースを元に、わが家で有効的だった物をまとめてみたいと思います。
最初は小ノートメモ法
特に妻に効果が見られたのは、メモの活用です。例えば私(定型)の場合、人の話を聞いている時は、ある程度の【こう言う話だろう】と予測して方向性を注目していながら、相手の言葉が実際どう発せられているかを見ています。
だからいくつか流れの中で重要な語句や、話の転換があった場合、話題の主題をとらえたままポイントとして語句の変化を、印象強く受け止め認識することが出来ます。
妻の場合は話の中で主題が抜けてしまったり、複数の要素のある言葉が同じような重要語句として氾濫してしまい、オーバーワークを起こしていたようです。
この氾濫はさらにASの特性として、【生活で気になっている無意識の未解決問題(先延ばしになったスケジュールとか)】なども加わり、メモリの確保ができないまま、ワーキングメモリ(※)がいっぱいいっぱいになってしまっている状態になります。
この氾濫はさらにASの特性として、【生活で気になっている無意識の未解決問題(先延ばしになったスケジュールとか)】なども加わり、メモリの確保ができないまま、ワーキングメモリ(※)がいっぱいいっぱいになってしまっている状態になります。
※ワーキングメモリ:一時的な記憶として情報を保ちながら、計算や作業、連想の想起などに使う領域。会話などで相手の話を理解しておきながら、自分の意見を言う時などの一時記憶と思考の同時展開など
妻はこれらのメモリを確保する目的で、仕事用メモ帳やスケジュール帳とは別に、生活用の小さなノートを持ち歩き、自分の気になったことや決定しきれないスケジュール、不安に思ったことや嫌だと感じたことなど、『これは別にいいかなぁ』と思うことまで、逐一メモをしていきました。
これは単純にメモを取ることで、頭に入れておくべき項目が減るため、余裕の確保が期待できますが、彼女はこの作業の中から、段々と新たな認知を獲得したのです。
自分にとって“これは重要だ”と思うべきジャンルの情報をみつけるコツ
自分が苦手だと後で感じるタイプの物事を明確に認知
話の前後となる物事を見つけるカン
彼女は視覚優位なので、本や文字からの情報は正確に読み取れます。イラストなどの理解力も高く、これらの認知は視覚の中でなら行えます。しかし、会話の中でとなると、流れていく情報にはどこか意識に距離感があり、聞き流してしまったり、その都度把握するなどの同時展開ができなくなってしまうのです。
文字も長くなれば一時的な記憶が必要になるにも関わらず。
彼女曰く、『メモをとるようになって、字にした途端に“安心”みたいな感覚がある』との事。視覚的な情報への転換が行われると、強く認識がされるようです。そして、言葉だけのおぼろげな記憶が必要なくなるので、【一時的に憶えておく】という部分でのメモリが開放されていきました。ワーキングメモリの“一時的に記憶し……”の部分をメモで代行している感じです。
そうしているうちに物事や情報の格付けは整理され、メモを取とるべき項目は減っていき、メモをとった項目に関してはメモリから開放され、【メモを見ればすぐに思い出せるから安心して思考できる】という感覚を身につけていきました。重要な事だけでなく、あらゆる感覚までも短期集中的にメモしていたのが良かったのかもしれません。
時折そのメモを大きな紙に、考えたい事だけ語句を写してまとめるなど、自分の感覚と共に思い返すツールとしても利用していました。
ノート法
妻は仕事ではスケジュール帳とは別に、普通の大学ノートを持ち歩いています。これは小ノートとは違い、客先との打ち合わせや会議の際、常に広げられメモをとるために使用しています。
話が混んできたり、重要語句が連なった場合などは、その場でメモし、客先の顔を見ることよりも優先します。
基本的には会話を理解する方に意識を向け、少しでも【大事かな】と思った言葉や文を手短にメモ。これは小ノート法を続けるうちに、獲得した情報を見つけるコツが利いているようで、雑多なようでありながら、しっかりと話の流れごと文言が並んでいるので、そこで会話した当事者が見てもすぐに分かるヒントの塊になっています。
利点としては、小ノート法と同じくメモリの確保にもなりますが、話をしている人間の心理として、相手も気が付くとメモを取る人に合わせて、重要語句をハッキリと強調しながら話すようになるという側面もあります。
小ノート・ノート法まとめ
視覚優位の捉え方として、【視覚優位だから聴覚からの情報処理が苦手なのか、聴覚からの情報処理が苦手だから視覚優位になったのか】と言う鶏と卵の関係の様な視点がありますが、妻の場合は後者であったと考えると、メモを活用する事で改善されていった理由が分かる気がします。
聴覚からの情報処理をする際、メモリが他の問題で圧迫されるのを防ぎ、ワーキングメモリを活用するには、一時的記憶をメモに任せる方が具合が良かったということでしょうか。
無理に優位のバランスを修正する必要はないと思っていますが、妻の場合は結果的に【言葉が出ない余計なイライラ】や【覚えられない事での自己評価の低下】が減ったことで、活動時間や集中力が増大しているのは大きな利があったと思います。
長男の場合
長男の場合、視覚的な事でも聴覚的な事でも、かなり高い記憶力を見せます。特に視覚的な記憶力や理解力は高く、一度見た物や作業の光景などは、些細な事でも憶えていて再現できたりもします。
会話や耳に入ったテレビの音の情報なども一瞬で長々と覚えていて驚かされることがあります。
しかし、なんて事のない会話の場合、全く想像がわかず、紙に書いて目で見てようやく伝わるといった事が、一時期急激に増えて心配になったことがありました。
後で分かったのは、この時彼は耳に言葉が入らなかったり、理解できないから分からなかったのではなく、【耳から入った音は正確だが、文章として意味合いを理解するためのものとしてはいなかった】という、ややこしい認識の仕方があったことが分かりました。
言葉が音と意味合いと別個になってしまっていたのです。
彼の場合は小学校に上がって環境が激変した事と、【こうするべきだ】などの社会通念が理解しきれず、自分の立ち位置を見失っていたため、常に実感と距離を持ち続けていた影響があったのかもしれません。
彼はこの立ち位置や社会通念を説明し切ったり、行動を構造化していくことで安定し、自然と言葉からの理解を取り戻していきました。
その後、話す時に何処まで話すかを5W1Hで考える練習や、まとまりのない話し方をしている際に【一番重要な事は何?】と家庭で繰り返していた所、さらに理解力が上がっていった様に思います。
生活を構造化していった事で、言葉を理解する事に【分かろうとする】一層先に踏み込んだ感覚を手にし、人に話す訓練の際に【重要なポイントの整理】を理解できたのかも知れません。
現在では言葉から頭の中でイメージ化しつつ処理出来ているようで、イメージ力が必要な冗談などをふっかけても、言葉とイメージが連動できているのがよく分かるようになりました。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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