手記
定型(いわゆるふつう)と自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)のカップルや家族の場合、時折、ASD当事者の反応が【冷たい】と感じてしまうことがあります。社会通念としての“愛情”の尺度やとらえ方に、定型とASDとに特性としての違いがあることがあり、その真意をつかめないことですれ違いや誤解を産んでしまうことがあります。
こういう場合に定型側が【必要とされていないんだ】とか【自分が悪かったんだ】と、自分を責める形で思考したり、フラストレーションを感じると様々なストレス症状を起こしたり、カサンドラ症候群と呼ばれる状態になることがあります。
今回は私(定型夫)と妻(軽度アスペルガー)の夫婦に起こったすれ違いを元に、どうしてそうなったのか、どう対処していったのかをまとめてみたいと思います。
※この記事はあくまでわが家の夫婦のケースです。全ての自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者の方がそうであるわけではありませんし、似た傾向があるからといってASDであることの根拠にはなりません。
一般素人夫婦に起こった、認知の違いがあるからこそのすれ違いのケースの話です。
一般素人夫婦に起こった、認知の違いがあるからこそのすれ違いのケースの話です。
怒らせた後に自分からフォローしてこない
定型社会での通念としては、相手の気分を害してしまった場合や怒らせてしまった後に、自分が悪いと思っていたら、自分から何かしらの声をかけるものというのが一般的です。しかし、妻の場合は違いました。
私がムスッとしていても、ずっと気まずそうにしたまま、むしろ眼を合わせないように一定の距離を保ったまま黙りこんでしまいます。それが数日続くと、彼女はそれが当然であるかのように、関わりを少なくしていきます。
定型の私としては【ああ、自分で修復する気もないんだな。このまま冷めていっても良いと思っているのでは?】と感じてしまいます。関係の修復や継続がこちら次第、つまり彼女からの【必死さ・真摯さ】が足りなく感じてしまうのです。
では、実際は彼女の本心はどうであるかというと、
・夫の言うとおりだ、申し訳なくて仕方がない。話しかける権利もない……
・何か話しかけなくては。何か話しかけなくては。何か話しかけなくては。……
・謝っても許してもらえなかったらどうしよう。それこそ終わってしまうのでは……
・夫の言うとおりだ、申し訳なくて仕方がない。話しかける権利もない……
・何か話しかけなくては。何か話しかけなくては。何か話しかけなくては。……
・謝っても許してもらえなかったらどうしよう。それこそ終わってしまうのでは……
などの不安や自責から葛藤を続けている状態です。
これらは自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)を知らない時には、全く読み取ることが出来ませんでした。本人もこの思考の傾向が私とズレていることを理解し、段々と受け止められるようになっていったようです。
これらは自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)を知らない時には、全く読み取ることが出来ませんでした。本人もこの思考の傾向が私とズレていることを理解し、段々と受け止められるようになっていったようです。
ちなみにもう少しASDの特性が強い娘が幼かった頃は、
・お父さんの考え方は私と違う。だからお父さんが間違い。
・私は悪くない。~~が~~だったから悪い。
・お父さんが怒った。酷い。
・お父さんの考え方は私と違う。だからお父さんが間違い。
・私は悪くない。~~が~~だったから悪い。
・お父さんが怒った。酷い。
でした。一見、娘と妻の思考に隔たりがあるようですが、ポイントとして【失敗を必要以上に大きく考えている】傾向が共通しているのが特徴です。
ふたりの特性を理解してから、私が取っている行動は、【なぜこの問題が起きたのかを正確に認識させる】ことの徹底です。まずは硬直を解くために自分が感情的になってしまった事を詫び、なぜ嫌だったかを明確に理解できるまで伝えます。その上で【気をつければ対応できることなのか】【全く発想にないことで対応不可】なのかを一緒に考え、それぞれに合わせた対策を打っています。
怒って別室に移動したり出て行くのを止めない
我ながらお恥ずかしいのですが、あまりに怒りが大きくなった時に『もういい!』と別室に移動したり、外の空気を吸いに飛び出すことがあります。感情の振れ幅を抑えるためにその場を去っているのですが、実際はどこか【出ていこうとする時に焦って欲しい……】というややこしい期待もあったりします。
しかし妻の場合は非常にあっさりとしていました。
私がいなくなったらいなくなったで、家事の続きを平然とやったり、ふつうに生活していつも通りの時間には就寝したり。私の乙女チックな期待は見事に砕け散るわけです。私の期待の裏側をもう少し詳しく書くと
・止めて欲しい⇒必要とされている片鱗を感じたい
・焦って欲しい⇒関係への必死さを感じたい
などの暑苦しい野郎の期待があるわけです(桃色)
・止めて欲しい⇒必要とされている片鱗を感じたい
・焦って欲しい⇒関係への必死さを感じたい
などの暑苦しい野郎の期待があるわけです(桃色)
では彼女はそんな私がいなくなって清々していたのかというと、本心はこうだったようです。
・一人になりたいのかと思った(自分がそうだから夫もそうだろうと思った)
・怒って出て行くのだから、止めても怒らせるのではないか?
・私と一緒に居たくないのだと思った
・一人になりたいのかと思った(自分がそうだから夫もそうだろうと思った)
・怒って出て行くのだから、止めても怒らせるのではないか?
・私と一緒に居たくないのだと思った
蓋を開けてみれば、90年代のトレンディドラマばりのすれ違い模様です(爆)
私は必要とされたい期待を含み、彼女は私の【個人の行動の自由を邪魔しないよう配慮】してくれたわけです。別に彼女の考えが分かればそれでもいいのですが、このままだと妻自身の自己評価が下がりやすくなる恐れがあることと、私の精神衛生上の為に対策をたてました。
私は必要とされたい期待を含み、彼女は私の【個人の行動の自由を邪魔しないよう配慮】してくれたわけです。別に彼女の考えが分かればそれでもいいのですが、このままだと妻自身の自己評価が下がりやすくなる恐れがあることと、私の精神衛生上の為に対策をたてました。
【“夫のやることを邪魔しちゃいけない”と考えない】
この言葉をキーワードに“止めようとする”、“自分から声をかけようとする”を出来るだけ頑張るようにしてもらいました。
これには【謝り方】の話も同時に動いているようです。
(関連記事:アスペ妻の記録~あやまらない生き方~)
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結果的に相手を怒らせた時に、すぐ行動を起こすことで思考のループにハマることが少なくなり、妻自身の立ち直りも速くなりました(以前は1~2週間は自信喪失でおどおど。現在は即日~2日程度で解消)。
いつまでも気まずそうにしていて会話がたどたどしい
わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー)当事者の3人に共通している【失敗を必要以上に大きく考えている】傾向は、ここでも障壁になります。
怒らせた相手に対し、いつまでもクヨクヨしてしまったり、大きく自信喪失してしまうためにコミュニケーションがカチコチになってしまうのです。これは何かしらの気分の変化が起きて忘れない限り続きやすくなります。
本人が辛いのはもちろんのこと、目の前で引きずられているわけですから、こちらもいつまでもその事が頭から離れなくなり仄暗~い気持ちになりやすくなってしまいます。
本人が辛いのはもちろんのこと、目の前で引きずられているわけですから、こちらもいつまでもその事が頭から離れなくなり仄暗~い気持ちになりやすくなってしまいます。
妻を見ていて、これは【自分で終わらせていないからではないか?】と思い浮かび、実際に定型社会で気まずい状態になった時の行動をパターン化してレクチャーすることで、本人に行動を打たせ終わらせるようにしてみました。
具体的には
【あの時はごめんねぇ~、私こういうのよくわかんなくてやっちゃうんだよね。今度から気をつけるからゆるしてねテヘペロ】
と、軽い雰囲気もしくは冗談でごまかすテンションにする努力をしながら言うことです。
さらに軽く手を相手の体に添えることもポイントだと伝えました。
(関連記事:気まずい雰囲気でしゃべれなくなった時の会話方法)
【あの時はごめんねぇ~、私こういうのよくわかんなくてやっちゃうんだよね。今度から気をつけるからゆるしてねテヘペロ】
と、軽い雰囲気もしくは冗談でごまかすテンションにする努力をしながら言うことです。
さらに軽く手を相手の体に添えることもポイントだと伝えました。
(関連記事:気まずい雰囲気でしゃべれなくなった時の会話方法)
これは自分からアクションをとった事を強く認識することと、事態を終わりにするスイッチになります。
終わりが自分でつけられて、軽くする起点を自分で起こせることを知ったことで、妻にとってはかなり人を怒らせるなどの失敗が軽くなったようです。結果的に私に提案してくれたり、なんらかのアイデアを出して、自分で物事を起こす積極性を出しやすくなった様子も見受けられます。
終わりが自分でつけられて、軽くする起点を自分で起こせることを知ったことで、妻にとってはかなり人を怒らせるなどの失敗が軽くなったようです。結果的に私に提案してくれたり、なんらかのアイデアを出して、自分で物事を起こす積極性を出しやすくなった様子も見受けられます。
まとめ
アクションがなかったり、表情が硬いのはちゃんと真摯に考えてくれている証拠です。ただ、その時の思考が現在の社会通念と同じであるとは限らないということ。あなたを必要としていないわけではありません。
むしろそう言った社会通念を強要し過ぎると、当事者も反発しますし、自分も傷つくことになりかねません。
むしろそう言った社会通念を強要し過ぎると、当事者も反発しますし、自分も傷つくことになりかねません。
お互いどう考えているのかをちゃんと話すと、結構すんなり解決策が見えたりします。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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