書いてある内容をちらっと
【人にどう思われているか気になって動けない】
【“これでいいのか”と自問自答してフリーズ】
【愛着がある相手にギクシャクしてしまう】
どれもわが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者3人に見られた、社会性の部分での弱点です。特に娘はこれが強く、一時はその特性がさらなる緊張を生み続け、家族として機能できなくなったほどでした。
様々な特性を読み解いているうちに、彼らの中で起こっていたことは、一言で言い表せる症状ではないと分かってきました。さらにASD当事者に限らず、これらは定型発達者(いわゆるふつう)にも起こりがちな反応であると思われます。
完璧主義と“すべき”思考
表面的に最も見えやすい特徴です。『できないかもしれない』とマイナスな言葉で表現したりするので、一見マイナス思考に見えることもあります。が、ここにあるのは完璧主義や“すべき”思考と言われる、自分基準・自分本意の理想像だったりします。
・~~はこうでなくてはいけない。
・~~はこうするべきだ。
・~~ではこうありたい。
などです。自分基準・自分本意であるとしたのは、例えここでの考えが正当であったり、どこかの文献などで読んだ確かな答えであったとしても、人間関係において【相手に強要できるものではない】からです。
人間関係は相互的なものなので、どちらか一方が『この人の前ではこうあるべきだ』と決めてかかると、その範囲からあぶれた時に混乱が生まれます。例えば“この人と仲良くしたい”と思うだけであれば、自然と行動は距離を埋めるための行動になり、積極的になるなどの言動を生み出します。しかし、“この人と仲良くしたい。だから【いい人】であるべきだ”となると、失敗への不安が生まれます。
この不安が膨らむと、やがて相手の真顔や沈黙すら恐怖に感じるほど、関係に対して緊張を生み出したりします。さらに自己評価を相手に預けてしまう事になるので、対象となる人物や待ち行く人が、明らかに肯定的な態度を取らない限り安心することができなくなります。
距離感の喪失
関係や自己評価への不安は、【こう思われるかもしれない】と次から次にハードルを作ります。これは一見相手の立場に立って考えようとしているかに見えます。しかし、最も大きな前提が抜けています。
そもそも【相手がそれを気にしているか】という事。
ハードルを作り問題意識を持っているのはこちらだけで、相手がその問題意識を共有しているかはわかりません。それどころか相手はこちら自体を気にしているかどうかも定かではないのです。人はリビングで団欒している家族の服装すら覚えていないほど、ふだん他人に対して意識的には生活していないということです。
こうした不安が続く中、自身で設定したハードルを越えられない事態が続くと、その相手の近くにいる事がもうすでに恐怖となります。人は知らない事や分からない事に対して不安を持つ訳ですが、『出来ないかもしれない』から『できなかった』となればそれはすでに理解している物になるので【恐怖】に変貌します。
しかし、ここまでの思考を全て文章化した状態で、相手や第三者に見せれば、多くの人が口をそろえて言うでしょう。
『そんなこと気にしてたの?』
対象の目を気にするあまり、自身を評価するのが【自分の想定した相手】となり、結局自分の考えるハードルや問題意識を一方的に【相手もその通りと思っている】という人称の垣根が取り外されている状態です。相手との距離感を喪失しています。
緊張の鏡返し
例えば特定の人をジーっと見ていれば、相手もそれに気がついた時にジーっと見返してきます。逆に特定の相手にだけ目を合わせないようにしていても、相手は気がつくでしょう。これは視線だけに限るものではありません。
気にしているのが分かるから、気にされただけです。
ただ、不安や恐怖を抱えたままだと、ここでも大事なことを忘れることになります。【何を気にしたのか】です。思考は目では見えませんので、相手は【あなたが問題としている事】に気がついたのではなく、あなたが【相手を気にしている事】に気がついただけです。
しかし、人称の垣根を失い、相手との思考の距離感を失っている状態であれば、まずその事実に気がつくのは難しくなります。と、言うよりその発想すら持っていないことも。
自動的に【あなたに向けられた視線は、あなたの視線に気がついて返しただけなのに、相手があなたの思う通りの問題や恐怖に気がついたと錯覚してしまう】のです。そしてさらなる緊張を生み出していきます。やがて、人を気にする度に、何らかの事を自分ができているかどうかを気にしたり、出来ていないことを苦しむようになり、人がいると上手く動けなくなてしまったりもします。
【人に見えるのは表情までであって、考えていることまでは見えない】
パニック状態に陥ると、これらのふだんは当たり前に思っていることでも、言葉化しておかないと見失う事があります。
ちなみに自分が何かの作業をしている時にいちいち気にされると困るように、気にされるという物は“やりづらさ”を生みます。何を問題として気にしているかは別としても、いちいち気にされるというのは気持ちのいいものではありません。これは【聞き耳・盗み聞き】などへの世間の反応と同様です。
責任の個人化
こうした距離感の喪失や、自分本位の自己評価の低下が続くと、やがてその環境に何らかのトラブルが起こるだけでも自分の責任であるかのように感じてしまう危険性があります。
例えば
・関係のない誰かが起こした失敗を、自分の責任の様に感じてしまう
・近くにいた人の会話で、人を責める様な内容を聞くと、自分の事のように感じる
・相手が不機嫌なのを関係ないのに自分のせいだと感じてしまう
などです。これらは自己評価が下がりすぎた時や、うつ状態などに見られる【個人化】と言われる反応です(参考書籍:いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法 より)。
ここまで述べたような、物事のとらえ方や人との距離感のとらえ方に認知のずれがあると、この個人化の範囲をどんどん広げていくことになりかねません。
対策として
ここまでを要約すると
・人間関係に『すべき』はない
・他人が同じことを問題だとするとは限らない
・気にするから気にされる
・顔は見えても頭の中の問題は見えない
・人は人、自分は自分
まずは上記のような流れや、ズレがないかを今までの行動に合わせて、なるべく克明に自分の反応を文字にして羅列します。『◯◯な時に~~と思われてると思っていた』などです。そして、それは相手が気にしていた問題なのか、自分が気にしていた問題だったのかを思い返して見て下さい。
そうして、自分の心がなぜそう動いていたのかを理解すると、無用な不安が消えて誘発されていた不安症状が和らぐなどが期待できます。
意外とこれだけでも肩の荷がおり、今後の行動にだんだんと変化が現れることがあります(妻と長男がそうだった)。
これらを実践する時、ポイントとなるのが【初動】です。
初動で“~~すべき”が出てしまうと、自分でそれを意識して立ち止まったりパニックにつながる事があるからです。同時に立て直しに気が取られて、現状把握にメモリが避けなくなるなどの被害が出ます。
【10分経てば落ち着くもんだ】
いきなり『気にするな』とか『落ち着け』とか『えーっと、人には考えは見えないんだから……』と取り繕っても焦るだけです。実はその考え自体が“すべき”思考になっています。
【人間関係に“すべき”はない、関係には何もしなくていい】に10分で慣れればいいや。それまでは好きな事やっとこう。
と思うようにしてみてください。
その際に自分の腕など、体の一部を『トン、トン』と手のひらで軽くタッチするのも効果的です。この方法のポイントは時間や区切りをつけること。10分たってもダメなら、ちょっと席をたつなり静かな場所にいくなりして休憩し、また仕切り直せばいいだけです。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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