以前、妻の疲れの原因について、記事にまとめたことがありました。その中の項目で“【疲れ】の定義が曖昧”(アスペルガーの人は疲れやすい?│体調の変化と認知の対策 より)という部分に関して、何度かご質問をいただいたことがありました。
実際の肉体的・精神的な疲れではなく、それ以外の何らかの身体の変化や、モヤモヤに不快感を感じ、それを疲れだと誤認していたケースです。
今現在、娘がちょうど突入し始めた時期なので、そこのジャッジに携わる自分のリハビリ目的に。妻とのやりとりで起こったことや、娘に考えられるポイントとタイミングを、出来るだけ具体的に思い返してまとめてみたいと思います。
妻の疲れの誤認のパターン
例えば妻の場合、最も疲れと取り違えられやすく、気分の低下や落ち込みを作っていたのは【気が抜けた】という感覚でした。
何かの作業が終わったり、帰宅してソファに座った瞬間に“ストン”と気が抜ける事で、【自分は疲れている】と感じ、【休まなければならない】と言う使命感や【どうしてこんな事で疲れているんだろう】と自分を薄っすら責める事がありました。
夕方以降の落ち込みが激しく、その後の活動が億劫になったり、本当に動けなくなる様な日が続いていたようです。
妻の場合はまず口数が減り、眉間に力が入った不安そうな不機嫌そうな顔になり、あらゆる返答が滞るのでパッと見はただの【不満の塊】の様にしか見えない時期もありました(こちらが一緒に過ごす場合、原因分からないままこれが続くと、“この不機嫌な感じ、もしかして自分が何かしたのかな?”と自分を責め始めた時が苦痛を感じやすい)。
【その疲れは、本当に疲れているという感覚なのか?】
他人がここまで踏み込めば、その認知のズレが分かりますが、長年それが常識である状態で過ごしていた本人は、その感覚に実感がある状態で指摘でもされない限り、まず気が付きにくいものです。
【今、○○って気持ちになってない? それって、~~って感覚じゃない?】
【~~ってなってない? それは○○って事だと思うんだけど、どう?】
などの声がけが効果的で、一度その認知のズレに気がつけば、すぐに思い直しが利くので短期間での変化が見られました。
どの感覚を何であると感じているかは分かりませんが、感じている感覚に違いはありません。今起きているであろう感覚を、擬音や手振りも交えながら、なるべく具体的に投げかけるのです。
例えば妻がソファに突っ伏していた時に掛けた言葉は次のような感じでした。
『今、“終わったー”って、ソファに座った時、肩の力が一気に抜けなかった? それは“気が抜けた”なのかもしれない。それなら動けないって事じゃないから安心して。
それとも、ソファに腰掛けた時、腰の辺りからズンっと重たくなる様な感じがした? それだと本当に身体が疲れてるのかも、その場合はちょっと横になって休んだ方がいい
……で、どっちに近い感じ? それとも全く遠い?』
娘の疲れの誤認のパターン
娘の大きな特徴は両極思考です。良いか悪いか、0か100か、白か黒か。人間関係にもそれは注がれていて、【良い=褒められる・なんでもできる・好きなようにしても許される・完璧・特別】であり、【悪い=知らない・分からない・出来ない・注意される・怒られる】とバッチリ分かれています(ただし、安定している時はそれほどでもない)。
彼女は疲れてくると特に【悪い】を避けようとするため、【教える・指摘・アドバイス・提案】なども全てが悪い事になるため、極力自分を隠しながら【目立たないよう・ふつうでいるフリ】に最大の集中を向けるようになります。
つまり、少しでも疲れを感じた瞬間から、【目立たない・ふつう】という定義の曖昧な事に集中するため、オープンクエスチョンと同じく困惑を繰り返すことになるのです。
現在、小学校1年生。疲れやすいのは当たり前ですし、様々に認知のズレでハンデを負っているのですから当然といえば当然なのですが……。
しかし、ここにも単純に【疲れている】と言い切ってしまっては、本人が気が付けない多くのズレがあるようです。
娘が小さな疲れから一気に両極思考に傾く理由は、妻に投げかけていたような、とある声がけで解明できました。
【疲れた時の身体の感じが、不安な時や困惑している時の、胸が窮屈な感じに似ている】
彼女は疲れを感じた瞬間から、【注意されている時】などに感じる、両極思考の【悪い】に陥っている時の感覚と誤認してそのまま呑まれていたのです。
だから行動や言動は【目立たないよう・ふつうでいるフリ】など、他人の評価を気にしたものに偏りきっていたのです。
さらに妻と同じく【気が抜けた】という感覚をはじめ、様々な感覚が【疲れた】と誤認させていることも分かってきました。
ありがちな疲れと誤認
複数の処理するべき項目がある時、その考え事にどれも一定の完了を作らず、複数同時に先送りしてメモリ不足に陥った時の思考の閉塞感。
どんな立場でいればいいのか確かめず、表面的にその場を取り繕い続けた時の、緊張感からの解放。
過集中から猫背になり、呼吸が浅くなることで生じた閉塞感に後から気がついた時。
長時間の外出で日焼けをしたり、肌が埃っぽい状態になっている時など、不快に感じていてもその因果関係に思い及んでいない場合。
何らかの緊張から、姿勢や表情などがこわばっていて、ふと気が脱けた瞬間にその周辺の筋肉の突っ張った感じに気がついた瞬間。
など、様々な場面と理由があるのですが、これらが疲れの原因となったり、誤認されるにはわが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者たちの場合、一定の条件があるようです。
【不快感とその理由が結びついていない】
【その不快感や疲れと感じているものが“どれくらい”なのか見当をつけていない】
この2つの決着がついていないまま、ただ不快感だけが渦巻いている時です。
わが家での対処
認知にアプローチする場合、共通することですが【自分がこういう時、どうなっているか】を理解することが第一歩だと思います。
1:いつも夕方になるとどういう状況になっていたか
2:それによってどんな影響が起きていたか
3:その時、身体や心に何らかの感覚はなかったか
4:あるとすればどう言葉に表現できそうか
5:その感覚は【疲れである】と定義できるのか
という最初に感じた不快感の詳細から、それを表す言葉を見つけ、疲れの定義と比較してきました。ほとんどの問題は【気が抜けた】という感覚が、疲れそのものだと誤認していた部分が解消された時に解消されました。
その他の体感覚や状況によって変化した、過敏さなどの影響をこの流れで明確に定義付け出来たことが大きかった様です。
運動などで肉体的な疲れを、明確に理解した時も、大きな進歩が見られました(最下部の関連記事参照)。
さて、娘の場合ですが、今、娘はまだ自分の気持ちを、つぶさに言葉に出来るほどの年齢ではありません。
しかし、長男が同じく一年生の頃、自分の体感覚の変化に気がつけず(感覚鈍麻)、不安感に飲み込まれてパニックを起こしていたり、薄っすらとフリーズし続ける状態が起きた時もこの問題にぶち当たっていました。
長男は表情に余裕が無い時、『具合が悪いんだね、休んだら?』とか『疲れた? お部屋で休む?』などの声がけをすると、何も考えずに従ってしまいました。結局、なぜ自分が不安になったのか分からないままなので、具合が悪くなる度に理解できないまま押し潰されていました。
その時も
【不快感とその理由が結びついていない】
【その不快感や疲れと感じているものが“どれくらい”なのか見当をつけていない】
ここは娘と長男も共通している所で(長男は今はもうクリアしているが)、“助けて”を言えないのは、何から助けて欲しいのか本人が理解できていないからではないかと。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。