アスペな娘の6歳時期所感
家庭で安定できるようになり、急速に情緒が落ち着いていきました。今までの不安定な理由が分かるに連れ、同時に彼女が耳を塞いできた部分が全く残っておらず、改めて生活のことや世の中のルールを教え直すことが増えました。
ただ、相当な理由がない限りは、以前の様に耳を塞ぐことがなくなったため、まさにスポンジのように吸収していった時期でもあります。
表面的な行動では自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)としての特性がさほど強くないように見えていた彼女ですが、彼女独自のルールや認知が緩和していくことで、ASDの特性と言われる様な部分との一致が見やすくなってきた事も特徴です。
最初のハードルを超えた時
彼女は外でそれほど問題を起こすタイプではありません。しかし、彼女にストレスがないわけでもありません。1~2週間ごとに深い疲れをみせ、人との関係にわずらわしさを見せる事がありました。
家では6歳の初めころ、彼女は【家族はただいるだけでいい。何もしなくて(考えなくて)いい】というキーワードが響き、家族でも特に親といることに対して何らかの構えを取ることがなくなりました。彼女は『家族といること・居かたや振る舞い』に意識を起きすぎ、やがて疲れると緊張したり逃げるようになるパターンを繰り返していましたが、【家族はただいるだけでいい。何もしなくて(考えなくて)いい】というキーワードが分かりやすかったらしく、突如家庭でリラックスが出来るようになりました。
しかし、彼女がなぜ家族といる時に、自分の振る舞いや、他人の存在を気にし過ぎていたのかは完全に解明は出来ていませんでした。
そのため、以前と比べれば非常に安定しているし、場合によっては普通の子よりも落ち着いて状況を見られるほどでしたが、一度でも精神状態が崩れると逆戻りする傾向がありました。
この傾向は繰り返す内に本人も認識するようになり、不安定になると親が安定させるための話しを繰り返し、【家族はただいるだけでいい。何もしなくて(考えなくて)いい】を再度聞きやすい状態で話すようになるまでをサイクルに、再現を繰り返すようになります。
再現を繰り返しているということは、まだ、そこに未解決の何かがあるのですが、ここでの娘の成長度では認知の形がつかめず、この段階ではまだこれといって手は打てませんでした(数カ月後に一気に進む事になるが)。
それでも以前は安静状態が年に1~2週間あればいい程度でしたが、6歳になりこの最初のハードルを超えた段階で年の7割近くを安定できるようになりました。
両極思考と人との距離
彼女が人との距離感にズレを起こしやすかった理由は、保育所卒業間際の辺りの、非常に大きな不安定の波の中から発見出来ました。
まず根本となる大きな原因は『両極思考』です。
『0か100か・全か無か』の様に、彼女は物事の良い悪いを、その中間のあそびのない、両極で捉える特性があります。通常、これも余裕があったり、把握しきれている物事であれば起こりません。何らかの理由で余裕を失った時、注目する箇所がシングルフォーカスになるため、結果的に両極的な処理判断を行っていたようです。
両極思考は人との会話や関係性にも現れ、例えば『知らない・できない・わからない』などは即『悪』だと判断し、激しく自責したりフリーズしていました。
【外では問題をあまり起こさないが、ストレスがないわけではない】
ここが大きなポイントでした。彼女は外では『知らない・できない・わからない』などの、『悪』とネガティブ判断してしまう関連の物事の際は、そこにいる多くの他の子に合わせていればよかったのです。
できる事は積極的に前に出て、褒められることで自己評価を回復させるが、『知らない・できない・わからない』を極端に恐れるため、人に合わせたり分かったフリを続け、本当に分からないまま放置するタイプの問題が山積みになっていきます。
自分を守る措置のようでありながら、じわじわと自分の足場を奪い、やがて完全に逃げ場を失うパターンを無意識に行ってしまう。
この無意識もポイントで、彼女は対人関係の結果をコントロールするために選択し、その選択の副作用で苦しんでいたわけです。だから一定期間ごとに大きな疲労感や絶望感を受け、自己評価を著しく落とす時期がやってきていたということになります。
同時に判明したのは、彼女がなぜ自分の家ではリラックスを出来なかったのかという点です。保育所などの外の社会では、周囲に合わせることで、彼女のいうところの『悪』を隠せますが、家庭では人そのものの距離感になるので隠しようがありません。
さらに保育所での問題を、家庭の中でも完全に切り離せないため、まだその問題が存在しているかのような不安感の中、必死に家族に対して『悪』を隠していたのです。
だから【家族はただいるだけでいい。何もしなくて(考えなくて)いい】というキーワードは、それに従うことで結果的に大きな安定を生みはしましたが、これだけでは根本的な彼女の心の動きを解消できていなかったという事になります。
ピンポイントの指摘
6歳という年齢は微妙です。まだ自分のやっていることに【どう思ってやったか】などの動機や認知を持たないままに行うことがあります。また、何かしらの判断があって行動していたとしても、それを自分の言葉で説明できるスキルも難しい年齢です。
自分の認知のズレにアプローチするには、自分が【どう思ってやったか】や、そうした時に【どんな感じを受けたか】という実感が必要です。ここが娘の場合、年齢的にも自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)として持っている特性としても、自分では知覚できない部分でした。
クリアのためには、こちらがその認知をピンポイントで表せる言葉を探し出す必要がありました。
今、~~って思ってない?
こういう時、こういう風に思ってやってない?
今やったのは~~ってことでいいの?
こうした言葉で投げかけ、それがピンポイントに当てはまった時、彼女は実感とともに自分の認知を確認することになります。
例えば、娘が私に激しくよそよそしさを見せたり、どこか常に視界の端で私を意識しているような状態になっている時。彼女は『気にしてた』までは言えても、なぜそうしていたのかまでは説明できませんしたし、そうしている実感も薄かった様です。
この時、ピンポイントに合致した指摘は【これ以上、人に何か注意されたりするのが嫌だからって、目立たないようにしてない?】でした。
……これだけ聞くと、まるでいっつも注意しまくってるスパルタ的な親に勘違いされそうですが、実際に注意されるされないは関係がなく、認知のズレから不必要な防御に過剰になり、自分で疲労し、さらにそこから逃れるために防御を過剰にするという悪循環にはまっていたわけです。極端に言えば、この時の彼女は自分が褒められる言葉でもない限りは、ほとんどの言葉が『悪』を指摘する断罪の言葉だったとしても、過言ではありません。
家族との信頼関係や立ち位置などは一切関わらない所で、彼女独特の【必死さ】が招いていた事態でした。
不思議なことにこうしてピンポイントの指摘を受けると、彼女は何事もなかったように落ち着いたり、安堵の表情をみせる事がほとんどです。環境や周囲をコントロールする選択に躍起になり、自身の認知を自覚できない事は、心理的にはパニック状態と非常に似ています。
パニックやフラッシュバックは、その原因となった要因を受け入れるというより、その要因にショックを受けた自分の心の流れを理解した時に、少しずつ安定していく傾向があるような気がします。もしかしたらそういった事と似た効果があったのかもしれません。
【これ以上、人に何か注意されたりするのが嫌だからって、目立たないようにしてない?】で、自分の行動の理由を自覚したことで、それをする必要がない事もすぐに理解できるようになりました。この不理解が消えたことで、このグループの内容の会話を受け入れられるようになり、ようやく【家族はただいるだけでいい。何もしなくて(考えなくて)いい】の本当の意味を理解したようです。
この後も、何かしら表情が曇ったり、小さなフリーズやパニックが感じられた時は、ピンポイントな指摘になるように質問を繰り返しました。彼女自身もそのピンポイントの部分を探るようになり、今まで教えてきた様々な対処などともつながりが出てきた様子が見えるようになりました。
ただ、両極思考という特性は今までと比べて露出することは少なくなったものの、疲れてくるとちょっとの指摘や教えるなどの親子で起こる当たり前の軽い行為が、否定的な言葉を排除していても『怒られた』と極端な反応に出てしまうことがあります。
これらは妻の時のように、自分の関わる様々な事への理解・線引や、【~~でいいんだ】という赦しのルールが必要になるため、特に焦りは感じていません。
おそらく自分に関わる生活範囲の物事のうち、6割くらいの出来事にそうした認識ができると、一気に他の事にも応用していけるのではないかと推測されます(妻がそうだった)。
小学校入学の準備
ドリルなどは元々好んでやりたがるタイプだったので、問題文や出題傾向の幅広さに慣れさせるため、ざっくばらんな内容のものに取り組ませていました。特に文章問題に慣れさせるのが目的で、先入観から入って文章を読まず、問題を解きにかかってフリーズする傾向がありました。
これらは単に問題を解く時に行う順序を、改めて説明することを何度か繰り返すだけでクリアしました。長男の時にもありましたが、問題を解く順番や、解く手順などの【知ってるだろう・分かるだろう】は鬼門でした。
『わかってるって』という態度全開でも、『大事だからちゃんと分かろうとして聞いて』と、前置きをすることで再認識してもらうと進めやすかったです。
文字や数字に関しては、遅れは見られずむしろ平均以上な部分もあったので、それほど苦労はしませんでした。
長男の時と同じく、宿題や勉強への集中力を保ちやすくするために、各教科ごと【何のためにやるか・これを極めると何ができるか・どこまでくらいできるといいか】など、目的・意義と境界線を説明しました。
一番重視したのは通学路への行き帰り練習です。長男に比べて衝動性が高く、状況認識や実感力の薄い傾向のある娘の場合、命が関わる部分でもありましたので。
数カ月前から折を見ては、歩いて学校まで往復練習をしつつ、どこで何が起きやすいか、どこを歩けばいいか、安全確認の方法や危険予知を言葉で反復しながら歩きました。
各教科ごとの目的・意義と同じく、娘の場合はひとつひとつの行動にも目的・意義がハッキリしていると、衝動的な行動やパニックなどが起こりにくい傾向になります。集団登校のルールはもちろん、なぜみんなで登校するか、なぜ一列で歩くのかなどの目的・意義、そして誰にどこまで従うべきかなども説明すると、自然と練習中の他動・転動も少なくなっていきました。
また、一応女の子ですので、【不審者対策】についてもしっかりと説明し、連れ去り等の対策を説明しました。
対策は以前ツイッターで見てうなり、すぐに教えていた方法(出典元を忘れてしまいました……)【おうちの人に聞いてくる~】の返答を再度確認した形です。
その他に、学校生活で娘の場合に想定できる問題は、【先生との距離感】の問題です。担任の先生は一般の大人と比べて関わる比重が大きいため、娘の場合は何かしらの【いい子に見せる演技】や【どこまで自分の思い通りに行動するかの試し】に傾倒していく事が考えられます。
先生とはどういう職業で、自分にどこまでしてくれる人物なのか
先生が求めているものは、自分がどうなることなのか
先生という大人に対し、自分は何をどこまで求めるのか
これらの定義を確認し、家族と同じく関係に対してコントロールを求める必要がないことも確認しました。投稿から数日の間は『褒めてもらおうといいお返事することばかりに夢中になったなかった?』など、想定できる行動の確認をとり(バッチリやっていた)、なるべく距離感の取り方を注視しました。
【こうしていればいい】が定着してしまうと修正が難しいので、早い内に補助をした形です。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。