書いてある内容をちらっと
“パッと思いついた事や、受け取った事実が全てになる”
娘の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の特性として、幼児から子どもへの転換期・小学校入学準備に最も問題となっている部分です。もちろん、幼さ故の認知力の低さから、深く考えようとしないなどの年齢的な部分もありますが、その思い込みから衝突やパニックを起こしている事がよくあります。
これも、ぶつかって理解してくれるのであれば良いのですが、【ああ、そうか。こうすればよかったんだ】と自己修正してくれることはほとんどありません。多くの場合は分からずに何度でもぶつかるか、失敗した経験から二度とそれに近づこうとしないか、または問題化しないように上辺で合わせて誤魔化そうとしてしまうことがあります。
“表面的には理解したようでいて、ある時、全く理解していないことが露呈する”
彼女の場合、この上辺で合わせただけのハリボテの様な対応が、ちょっとしたダメージを生んでいるケースが多々あります。または【わかったフリ】が本当に【わかったつもりになっている】という場合も。
これらは、少しずつ状況把握や現実の受け入れ方、物事の判断にズレを生み出す原因になっていることがあります。
【わかったフリ】の特徴
簡単にまとめると以下の様なパターンがあります。
A:保身・防御型
理解できない、理解しきれないと判断した時、すぐに雰囲気に合わせて『わかったフリ』をしているパターンです。場合によっては反射的に反応していて、自分が理解していないこと自体を認識していない時や、本当に分かったつもりになっている時もあります。
⇒【分かっている・分かっていない】を、【善悪】などの極端な受け取り方をしてしまっている可能性が考えられます。自己評価を守るため、『わかってる』の言い方に一種の刺のある態度が含まれていたり、自分を棚に上げて分かっていない人に勝ち誇るような言動に出ることも。
ただ、その防御的な反応には自覚がない事がほとんどで、本人もその不安感や心の揺れに困惑していることすらあります。
B:早合点型
話や説明を聞いている時などに、『ああ、こういう話か』と全容を何となく理解して、その後の内容が理解しやすくなる事があります。彼女の場合はこの『ああ、こういう話か』で全てを把握したつもりになり、その後の話を聞こうとしません。聞き間違えや連想して浮かんだことなどでも『ああ、こういう話か』に似た感覚を得て早合点してしまうこともあり、非常に突飛な受け取り方をしていることも。
⇒機嫌がいい時や、自分に自信を取り戻した時、その話を聞く事に意識が向いていない時などに多く見られます。発想だけで動いている状態なので、迷いなく失敗に向かったり、いざ動こうとして矛盾に気が付き、思考停止するなどにつながります。
この場合、テンションの急落や、一瞬にして『失敗=悪』などの極端な受け取り方に飛んでしまうなど、気分に関わる強い衝撃につながることがあります。
マルバツ日記:お母さんと一緒Ver.
以前にも紹介させていただきましたが、わが家では毎晩上ふたりと妻に『マルなこと、バツなこと一行日記』を書いてもらっています。
元々これは彼ら自身が『自分はどんな気持ちだったか』を、後から振り返って、その時の気分や自分の傾向を振り返るために始めた、ちょっとした認知行動療法の様なものです。が、娘の場合はこの日記を書く際に、自分の気持ちではなく『自分の思った通りになったか、ならなかったか』ばかりに偏ってしまうため、現在妻が聞き出しながら一緒に発見するカタチをとっています。
これが意外にも様々な効果をもたらしたようです。
マルな事
出来るようになった事・ほめられた事・分かるようになった事・感心した事など。今までになかった体験や知識を獲得したであろう事を探る目的で、一日にあったことを思い出してもらいます。その時にスムーズにするには『~~をやったんだ。じゃあ、~~って気持ちにならなかった?』など、ある程度の決めて掛かった質問でふくらませていくと、長い会話になりやすくなります。
バツな事
注意された事・よく分からなかった事・むずかしいと思ったこと・ガマンさせられた事など。解決に至っていなかったり、自主的な行動で関わっていなかった事を思い出してもらいます。この時も【マルな事】と同じく、ある程度の決めて掛かった質問でふくらませていくと掴みやすいです。
ポイントは聞き出した【マルな事】は褒め、認める事はもちろん。誰かに叱られたり教わったりして、出来るようになったことなども『そうやって教えてもらえたから、分かるようになったんだもんね』と因果関係をハッキリさせた上で【よかった】と明確にすること。
【バツな事】は『なんでそう思ったんだろうね。~~だからかな?』と理解しようとする所から始め、逆ギレなどが見られた場合は【それは一般的に逆切れである】と状況の評価も明確にしつつ、【これくらいは、分かるだろう】は抜きでしっかり説明仕切ることです。
また、あまりな事が発覚した場合、気を抜くと説教になりかねません。それでは逆効果なので、聞いていて嫌な気持ちになった場合は『お母さん(お父さん)も、そうされたら嫌だったと思うなぁ』など、一人の人間としての気持ちを説明するようにしています。
得られた効果
この観点で一緒に思い返すことで、彼女が【何を分かっていて、何をどう理解していないか】がかなりの精度で分かるようになりました。
最初のうちは一日の事の記憶が薄く、帰ってきてからの記憶ばかりだったり、保育所での事を思い出すだけでもかなり時間が掛かっていました。これは単純に思い出す練習を重ねたからという事もありますが、彼女のここまでの認知の世界からすると、もう一つの可能性が見えてきます。
もしかしたら、彼女は一日のうちのかなりの時間を“いっぱいいっぱいで、あっという間に終わっていた”という実感のない生活だったのかもしれません(パニック時などの離人感などはある程度実感を振り返れるが、実生活の小さな不安症状はまだ自覚できていないことが多い)。
その“いっぱいいっぱい”とは、【起きている事を認識する時の指針のなさ】であったり、【立ちはだかった問題が何であるか理解が出来ない】などの、問題以前の不安感であり、それを正確に認識する練習を毎晩繰り返した事がよかったとも考えられます。
何より、こういった自分の気持ちや不安症状に関わる類の会話では、石のように口を閉ざしてしまう事が多かった彼女が、自分の気持ちを積極的に言葉にしようとする姿勢が目立ってきたことが大きな成果でした。
これは一般的な大人でも言えることですが、パッとした事実や思い込みに左右されやすい人は、心を鍛えるなどのメントレよりも、自分がどう心が動いたのかを理解する方が克服につながることがあります。自分の状況や気持ちを文字にするという行為は、再認識するには非常に効果的なので、ちょっと自分を見失いかけた時にもいいかもしれません。
娘はまだ幼いですし、こういった自己認識も中学~高校生くらいには、もしかしたら放っておいても自分で乗り越えたりするかもしれません。ただ、ガマンや強制でなく、理解する事で楽になる事があるのであれば、先に備えをしていた方がいいのかなぁと思ったりしています。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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