長男
書いてある内容をちらっと
普段は全くと言っていいほど問題がなく、安定している長男。ただ、どこか親がいる時は、常時親を気にして言動を取っているような“間”があり、何らかのトラブルやブレが発生した後は、その“間”が長く長く、硬直したようになってしまう。
本当はもう、問題としてはずっと前から起きていたのかもしれない。
─── 家族といる間は、彼が本当にリラックスする時間がないのだ。
─── 家族といる間は、彼が本当にリラックスする時間がないのだ。
3年生の夏休みが終わろうかという頃、その問題が爆発した。緊張が限界を超え、親がいるとフリーズするようになってしまった。
■今だから分かること
あれから半年が過ぎ、ほぼ完全解決と言っていいほど、長男の【人に合わせ過ぎる】問題が起きていません。と、いうことで解決編としてまとめたいと思います。
一緒にいる時間をリラックス出来るようになったのはもちろん。必要以上のベタベタも、よそよそしさもなくなりました。さらに私が嬉しく思っていることは、【怒れる様になった】【甘えられるようになった】という点です。
以前の彼は常に人に合わせていたので、怒るなどもっての外。甘える行為は断られた場合、別離に近い恐怖心を持つので、言葉にも出来ませんでした。
だから一見すると“優しくて物分かりのいい子”です。
しかし、それは自分の納得の上の理解ではなく、際限のない我慢の上に成り立っています。それを初見で見抜くのは不可能に近いでしょう。そして、それは本人も幼い頃から反射的にとっていて、その頃にはほぼ無自覚での行為でした。
無自覚・無闇な対処行動
『人を気にするな』と言っても、正確には『人とのズレが起きないように慎重になっている』状態で、しかし、本人にはその自覚がありません。本人にすれば、急に不安になり、常に“何かに困っているけど、何に困ってるのか分からない”といった状態になっていたようです。
本人が自覚していない・分からない不安を、どれだけ代弁しようが、意味はありませんでした。一度でも何らかの焦りを感じたら、フリーズは免れません。結果どうなるか?
一緒にいる間は顔面蒼白、“見られないように”でも“見ていなくては合わせられない”と、視界の端で常時気にし続ける集中が始まります。
そうして一緒にいたいのに、いるほどに苦痛になるジレンマが生まれ、隔離されることに自己評価を著しく下げ、また一緒にいて上手くいかないことにも自己評価を著しく下げ続ける悪循環に陥っていました。
また、この自己評価の低下が、さらに別離不安も生み出し、際限のないベタベタ……しかし、気持ちを前に出さないただただ距離感のない関係を創りだそうとしてしまいます。
自己評価を取り戻すには、無闇に何か思案し続けるか、問題にならないための行動を取り続けなければならなかったのです。
無闇矢鱈である理由
本来2~3歳児の頃のイヤイヤ期などで、他人と自分との存在が別個であるとか、自分とは違う事を認識すると言われています。また、どこまでやったら怒られる・嫌われるなどの距離感を4歳くらいで形作り、5歳からの友達同士の社会形成につながっていくわけですが、長男の場合は少し違いました。
“これ以上やったら怒られる・嫌われる”そこへの対処だけを思案し、積み重ねてはいたものの、2~3歳時期に理解するはずの【人との違い・距離】を、理解していなかったのです。正しくは、言葉や感覚では理解しているのでしょうが、そこの意識が弱すぎたために方法論に偏りすぎていました。
人間関係には自分からの働きかけをしていないと、人間関係を失う別離不安が起こり、しかし、実際に思案・行動している間は相手を相手としては見ていません。
自分の中にいる相手が、“きっとこう思うはず”と、非常に自分寄りにシミュレートしている状態です。だから相手が困っても止められはしないし、逆に困っている表情に気がついたら、それこそ働きかけへの強迫観念が襲いかかります。
何に対しての不安か自分ではよく分からない。でも、働きかけることを止めるには恐怖心がつきまとう。
良くないことと分かっていても、彼がどうしても人を気にするのを止められなかったのは、止めることの方が不条理であったからです。
憤り
おそらく、こうした処世術のズレは、社会に出て少しずつ学んでいくことでしょう。それは年齢にしたら30代くらいかもしれません(そういう話もちらほら聞くし)。
自然に成長することが、本当に全て正しいのならば見守るのですが、彼の場合は遅かれ早かれ、愛着や憤りに心支配されかねない状態でした。
彼自身の中にも上手くいかないことでの憤りや、そうしてしまう自分への嫌気のようなものを持ってはいましたが、強迫観念を払拭するだけのエネルギーや、納得できる概念は持っていませんでした。
結果的に彼がそれを凌駕したのは、こちらが逃げ道を塞ぎ、彼がそれを続けるだけ彼が苦しむ状態を敷いた事にあります。(詳しくはこちらの過去記事をどうぞ⇒53:アスペ妻の記録~人は人、自分は自分~)
叱られるのが嫌で叱る親に怒るのではなく、叱られる方法に自ら縛られている自分に怒りが爆発するまで、こちらも一歩も譲りませんでした。人との関わりや生活様式について、自分から自分の行動に疑問を持たなければ、わが家のASD当事者たちはそこに関する変化を嫌います。
この時の彼もその通りで、彼は自分を縛る自分のルールに憤りを爆発させたことで、ようやく私からの話に耳を傾ける気になってくれました。それまでは、少しの違いでも、自分の考えとズレていれば、すぐにフリーズしたり聞き流してしまったのです。
自分は自分、他人は他人
ようやく自分と人との違いに、落ち着いて話を聞こうとしてくれるようになった段階から、改めて【自分は自分で他人とは違う】ということを説明しました。2~3歳の頃に学ぶであろう事を、今の彼に想像しやすいように。
そして、どこからが【気にしすぎ】で、ふつうは人がいる時にどの程度の【気に仕方】をするのかを、分かるまで説明です。
途中でひとつの言葉に気持ちがいかないように、ゆっくり紙に書きながら、こちらもキーとなる単語をそこに書くことを意識しつつ。そうして【自分は自分で他人とは違う】状態がどんな生活なのかも理解した頃、彼の独特な距離感と言うか、お互いの間にあるモヤッとした不明瞭な感じが消えました。
冒頭で触れましたが、実は彼が怒れるようになった事や、甘えられるようになったことについては、それ程目立った事はしていません。単純にこれらを理解した時に自然と起こる様になったのです。
特徴的だったのは、ちゃんと兄弟げんかが起きるようになったこと。それまで人に合わせ続けてきた長男が、妹弟にも拒否や交渉をするようになりました。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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