書いてある内容をちらっと
わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)当事者3人との暮らしや、サイドにある自己紹介にあるように“何かしら発達障害との縁が深い”私は、彼らとの関係の中から【人との距離感】について考えることが多くありました。
先日、頂いたコメントの内容から、過去に当事者の方からいただいた相談の疑問が解けたので、今回はASDに限らず、定型にも起こりうるであろう【家族との距離感】や【頼み事・相談】に関わる息苦しさについてまとめてみたいと思います。
非常に個人的な見解ですので、全ての方に当てはまるとは言えませんし、読まれて気分を害される方もあるかもしれませんが、ひとつの視点のあり方として書かせていただきたいと思います。
重ねてお断りしておきますが、私は専門家でも何でもない、ズブッズブの素人オヤジです。学術的な裏付けがある訳でもありませんので、【こんなこと考えてる人がいる】くらいに思って楽しんでいただければ幸いです。
家族との距離
まだ私が親になる前、知人の女性から家族についての相談を受けたことがあります。
彼女はすでに子どもが複数いて、旦那様は仕事が忙しくほとんど不在。夫婦お互いの実家からも遠く、一人で子育てをしている状態でした。
そして彼女自身は未受診ではあるものの、小学校時代と中学校時代に発達障害を疑われた事があり、子どもにも一人同じく学校側から受診を求められた子がいました。
彼女はすでに子どもが複数いて、旦那様は仕事が忙しくほとんど不在。夫婦お互いの実家からも遠く、一人で子育てをしている状態でした。
そして彼女自身は未受診ではあるものの、小学校時代と中学校時代に発達障害を疑われた事があり、子どもにも一人同じく学校側から受診を求められた子がいました。
・家族が一緒にいなきゃいけない理由がわからない
・『いただきます』をみんなでする意味が分からなくて気持ち悪い
・祖父母など、人への頼み事や相談の仕方がわからない
・家族の決まりとかが嫌だったから作りたくない
・『いただきます』をみんなでする意味が分からなくて気持ち悪い
・祖父母など、人への頼み事や相談の仕方がわからない
・家族の決まりとかが嫌だったから作りたくない
彼女はこれらの事が幼い頃から理解できず、反発して家族と距離を置くようになり、就職を決めると同時に家を飛び出した経緯がありました。
そして、今、自分の家庭を持った時に、やはりこれらの事に違和感を持ち、半ば見ないようにするために自分向けのルールを作っていました。
そして、今、自分の家庭を持った時に、やはりこれらの事に違和感を持ち、半ば見ないようにするために自分向けのルールを作っていました。
・全部の部屋を遊び部屋として解放、子どもは好きな場所で好きなようにさせる
・食事はいつも同じ作りおきの利くメニューで、鍋いっぱいに作り、好きな時に好きなだけ食べられる(家族がそろって食べることがない)
・食事はいつも同じ作りおきの利くメニューで、鍋いっぱいに作り、好きな時に好きなだけ食べられる(家族がそろって食べることがない)
彼女の相談は『こういうのでいいのかな?』ということでした。
しかし、こちらに相談する姿勢はあっても、どちらかと言えば聞く感じではなく、【あなたは同意できる?】と試されているような印象がありました。
しかし、こちらに相談する姿勢はあっても、どちらかと言えば聞く感じではなく、【あなたは同意できる?】と試されているような印象がありました。
家族観に見る“信頼の重さ”
これは以前、
【気持ちを言ったり、相談するのが苦手な人の自己評価の特徴】
について書かせていただきましたが、この感覚が家族とのつながりを始め、人間関係において息苦しさにつながるポイントがあるのではないかと考えています。
【気持ちを言ったり、相談するのが苦手な人の自己評価の特徴】
について書かせていただきましたが、この感覚が家族とのつながりを始め、人間関係において息苦しさにつながるポイントがあるのではないかと考えています。
簡単におさらいすると、
なにか失敗した時、【A】『失敗した~』となるか、【B】『どうしてこれができないんだろう……』となるか、問題に対してどこに論点をおいているかの違いがあります。
定型や気軽に人付き合いを行えている人は【A】の様に、失敗やミス等の手段に対することへの“やっちゃった感”になりますが、【B】の様に最初から自分の能力や性格などの自己評価に関わるところから責めだしてしまう人は、次からの関わりに抵抗を感じやすくなってしまうということです。
なにか失敗した時、【A】『失敗した~』となるか、【B】『どうしてこれができないんだろう……』となるか、問題に対してどこに論点をおいているかの違いがあります。
定型や気軽に人付き合いを行えている人は【A】の様に、失敗やミス等の手段に対することへの“やっちゃった感”になりますが、【B】の様に最初から自分の能力や性格などの自己評価に関わるところから責めだしてしまう人は、次からの関わりに抵抗を感じやすくなってしまうということです。
自閉症スペクトラム症など発達障害に限らず、これは誰にでも起こる視点の違いで、どちらが正しい訳でも間違っているわけでもありません。
と、いうのも、
私たちが暮らしている社会に存在しているルールや、社会通念などは(例:こういうときはこうするべきだ)、いちいち教えてもらう機会は少ないのですが、それは一人の人間が納得していればいい問題ではなく、多数派の人間がそろって賛成できるルールとなっていて、時代や環境ごとに解釈が柔軟にとれるように曖昧な部分を残しているからです。
私たちが暮らしている社会に存在しているルールや、社会通念などは(例:こういうときはこうするべきだ)、いちいち教えてもらう機会は少ないのですが、それは一人の人間が納得していればいい問題ではなく、多数派の人間がそろって賛成できるルールとなっていて、時代や環境ごとに解釈が柔軟にとれるように曖昧な部分を残しているからです。
この曖昧な部分の残るルールでは、読みきれなかった場合に【ズレた・間違った】となるわけですが、これはだれにでも起こっています。問題化したり自信喪失したりしてしまうのは、この失敗が自己評価に直結している場合に起こっているのではないでしょうか?
3人以上になれば社会となるので、家族ももちろん社会です。
ただ、職場や学校にくらべれば、その社会性はお互いの依存関係や信頼関係による所が多く、そのズレは【B】のように自己評価に直結する反省の仕方をする場合、非常に距離感などに困惑や疲弊を起こしてしまいます。
例えば甘え方や一緒にいる時の態度一つでも、一時的な拒否がそのまま自己評価に影響していれば、関係自体が重くもなるでしょう。『何かしなければ』『何かしてはいけない』などを思い続けるのは、疲労しますから。(ただ、その重たい意識を向けられている方も辛いというのも事実ですが)
単に性格や人を愛せないなどの人格的な問題ではなく、自己評価が下がり続けるかもしれないギリギリの緊張感を、家族といる間や社会と属している間に持ち続けるのは、とてつもなく苦痛になるというのは自然なことに思えます。
頼み事や相談事をしにくくする思考
家族や社会にいる間、自己評価が揺らぐような状態にある場合、それは発想として“他人の手を借りる”という方向には開いていかないのではないかと思えます。また、相談する場合にも、その問題の大きさが正確に認識できず、非常に申し訳ないような気持ちになってしまったりするのではないでしょうか。
妻の場合、相談できずに潰れていってしまう裏側には、そういった【相談するに思い及ばなかった】とか【こんなこと相談していいんだろうかと悩んでいた】というケースがよくあります。どこか【自分ひとりでなんとかしなきゃいけない】ととらわれていたようです。
彼女がこの問題をクリアしたのは、【相談しないことのほうが問題を大きくする】と理解したのはもちろん、【相談することの意図】を知って、問題化する前に気軽につぶやけるようになったことが大きいと思われます。
ちょっと考えて胸がモヤっと感じたら、すぐにそのモヤっとした瞬間の考え事をつぶやいたり言葉にするようにしてもらったのです。
『ああ、今~~の事が頭にあるんだけど……』
問題の存在感が、表面的な思考の中で勝手に大きくなる前に、話してしまえば自己評価に傷がつくような抱え方にはなりにくい。そう考えた上での対策でした。
もちろん今でもそれが出来ずに沈むことがありますが、以前と比べて認識しなおした時の立ち直りや、心へのダメージがかなり軽く済んでいるようです。
もちろん今でもそれが出来ずに沈むことがありますが、以前と比べて認識しなおした時の立ち直りや、心へのダメージがかなり軽く済んでいるようです。
反射的な感じ方でもあるので、【B】のような自己評価に直結する発想を、すぐに変えることはむずかしいかもしれません。ただ、それ以上自己評価を下げるのを止めたり、フラッシュバックになった時に呑まれないようにするには、【A】のような『あー、失敗失敗。しゃーない、次やらかさないようにすればいいや』と軽いスタンスがあることを認知することも効果的かもしれません。
まとめ
家族観には育った環境や、それぞれの心のあり方から、本当に多くの考えがあると思います。
ただ、人や関係はどんどん変わっていきますし、自分が今までそうであったからといって、これからもずっとそうである保証はありません。【これさえやっていればいい】はないのです。
ただ、人や関係はどんどん変わっていきますし、自分が今までそうであったからといって、これからもずっとそうである保証はありません。【これさえやっていればいい】はないのです。
であるのならば、こちらの気持ちが『うー…っ』とならないように、少しずつ自分の中に新しい認識の仕方を取り入れていくことは、むしろ自然なことなのかもしれません。その際、なるべくトライアンドエラーを繰り返して正確な認知を見つけていくには、なるべく自己評価を下げない問題の捉え方が重要になります。
変えていった先で『変だ』と言われれば、『あー、失敗失敗。しゃーない、次やらかさないようにすればいいや』と手段を責めて、合わせて変えるもよし、変えないで口に出さないようにするもよしです。
失敗は失敗であり、失敗はあなたを否定するものではないからです。そして、その時に相手が一瞬、訝しげな顔をしたからといって、一生その人があなたを嫌うわけでもありません(それ以前に大体の人は一生一緒にはいませんし)。
失敗は失敗であり、失敗はあなたを否定するものではないからです。そして、その時に相手が一瞬、訝しげな顔をしたからといって、一生その人があなたを嫌うわけでもありません(それ以前に大体の人は一生一緒にはいませんし)。
冒頭の相談事に対して、自分の家族から多くのことを教えてもらった今の私が言えることは、【今家族(社会)がそれで納得しているのであれば問題ではない】ということです。そうであればその社会(家族)は動いているわけです。ただ、もし言い知れぬ罪悪感や焦りがあるのなら、家族の意見を聞いてみればいいのではないでしょうか。そして家族が意を唱えているのならいつでも何度でも変えていくべきです。
育った環境に合わせて、そこで育つ人間が必ずそれに沿った人間になるという保証もありません。ふと自分の考え方やあり方に疑問を向けられる姿勢や、自分を知っておくための立ち位置があることを理解していれば、自分で進みだした時にいくらでも修正していくでしょう。
ただし、キレイ事だけではなく、リスクもあります。
何かをする時に、同時に何かを我慢する経験の多くは、家族や社会との関わりから生まれていきます。この経験がない場合、見たもの感じたものが全てになりやすく、答えの出し方が一辺倒になっていく危険性をはらんでいます。
何かをする時に、同時に何かを我慢する経験の多くは、家族や社会との関わりから生まれていきます。この経験がない場合、見たもの感じたものが全てになりやすく、答えの出し方が一辺倒になっていく危険性をはらんでいます。
彼女が私に相談を寄せた時に、どこか【どちらかと言えば聞く感じではなく、【あなたは同意できる?】と試されているような印象が……】という雰囲気だったのは、どこかどうにもならない不安やあきらめがあったからかもしれません。
彼女の家庭にスポットを当てて書きましたが、これらは一人で暮らしている方にも言えることではないでしょうか。
【一般論や社会通念は多数派の意思、世相を表している】
自己評価を下げないように、自分の心を守りつつ、時折この社会通念の意図を振り返る時間は必要だと思います。社会通念の意図を忘れると、またパニックやフリーズなどの、自己評価の低下を招く事態になりかねませんので。
【関連記事】
⇒5歳:父親に懐かない・過剰な緊張の解消│ASD娘の人との距離感
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定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
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