直接ねだらない・直接伝えない
イヤイヤ期がほとんどといって良いほど見当たらなかった次男。4歳になり、段々と人との関わり方を模索していく時期に差し掛かり、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の娘と、どこか似た様な問題が起こることが散見されました。
現在、次男のこの問題で成功した考え方が、娘に逆輸入的に効果を発揮しつつあるのでまとめてみます。
よくありがちだったのが、眠気や体調不良に大きく沈み込み、それを直接訴えずに、大人を怒らせることで決着をつけようとするパターンをはじめ、自分の気持ちをストレートに伝えず、自分の気持ち自身を分りづらくしてしまう傾向です。
もともと上手に自分の気持ちを言葉に表し、高いコミュニケーション能力を見せていた次男が、本人も知らず知らずのうちに、自分の思いや要求をストレートに伝えようとしないクセがついてきていました。
そういった事が増えていくうちに、本人もそのストレスを持て余すように。最終的に保育所でも気分を崩すことが多くなり、また、家に帰ってもいつも不安定になってしまいました。ストレスからか急な発熱なども増え、終末は毎週のように休んでいなければならないほどにまで……。
例えば以前の彼であれば、近くに大人がいて遊んで欲しいと思った時に、おもちゃを持ってけしかけてきたりして自然と気持ちを表したり要求できていました。
ところが、クセが出始めたあたりからの彼は、遊んで欲しい大人の近くに寄り、『それ、どこでかったの?』など手近な所にある何かを指さして質問する事で会話をさせようとするなど、受身な方式が急増していきました。
ところが、クセが出始めたあたりからの彼は、遊んで欲しい大人の近くに寄り、『それ、どこでかったの?』など手近な所にある何かを指さして質問する事で会話をさせようとするなど、受身な方式が急増していきました。
こうした時、彼が抱えている要求は、ピンポイントで叶えられなければ気分を害すこととなり、一時、赤ちゃん返りのような状況に陥りました。
このまどろっこしいコミュニケーション方法は、長男と娘も長いこと続けていた過去があり、成長するに従って自らの首を占める結果となっていました。
なぜ、そうなったのか?
まず私の脳裏に、複雑な思いと共に浮かんだ可能性としてはふたつ。
【1:次男もASDの可能性】
【2:親が厳しすぎて意見が伝えられない性格になってしまった】
1は今までの彼の人との関わり合い方や、複数の物事を頭で組み立てたり、前後の関係で会話をつかむなど、様々な能力を見る限り非常に考えにくいものです。2は親として自分を省みようとすれば、非常に不安になりやすい部分です。次男本人への厳しさは特に見に覚えがありませんが、他の兄姉とのやりとりを見ていて……となれば、どうしようもありません。
ただ、2に関しては、それを覆す形となっているのが長男の存在です。
どちらかと言うと三人のうちで、一番この傾向が強かった長男は、とあることを理解した瞬間からパッタリとこうした周りくどいコミュニケーションを止めていたからです。
その長男が理解した“とあること”とは、一言にすれば【人との距離感】です。そして1も2も、この問題の根本が分かってくると、【そのように彼らが動いていたのは何故なのか?】まで見えてきました。
そして、次男がここから抜け出すには、他のASD当事者の家族がそれをどう乗り越えたかが鍵となりました。
人との距離感の問題
この【人との距離感】とは、わが家のASD当事者たちの場合、曖昧であるがためにつまづきやすく、しかも平常時の会話ではなかなか実感を持って深度のある理解が難しくなる傾向にありました。
そして実は妻も近年まで、表面的な問題は違えど、子供たちと根本的には同じ問題を抱えていたのです。
例えば【人との距離感】を一般的によくある定義にすると
どこまで関わろうとするか
どれだけの深さを求めるか
などがありますが、わが家のASD当事者たちは、ことごとくこの曖昧さに翻弄され困惑していました。
結果的に
大切な人の意見に言いなりになる
大切な人に際限なく気を使ってしまう
不安感が伴うと関係にまで影響するほど神経質になる
という踏み込み過ぎな状況になってしまったり、その逆に
相手が苦しみ悩んでいる時ほど距離を置こうとする
謝罪することに大きな不安感やおこがましさを感じる
目を合わせなくなったり会話が出てこなくなる
などの疎遠な対応を取ることとなります。
距離感の指針
妻も長男も、その過程は違いますが、距離感のうち理解した部分は同じです。
現実の相手を気にしているようでありながら、自分の中の【相手にどう思われるか】を問題としていること
言葉にすると、なんてこともない様に見えますが、こればかりに偏ると思わぬ摩擦が始まります。
現実の相手の表情から、本当に気持ちを読み取ろうとしているのなら、それは不可能ではないし、不安に駆られる状況はかなり少なくなります。しかし、自分の中で【相手にどう思われるか】を考え始めると、指針は自分の中にしかないので、その要求は高くなり際限がなくなってしまいます。
実はこのハマり方は、ASDに限らず定型でも起こりえますし、大人も子どもも年齢に関係なく陥ることがある問題で、誰にでも起こったりしています。
しかし、ひとつの事実に集中しやすいASD当事者の場合、この観点に陥ると自力では抜け出すのは困難なものになりかねません。
それでも妻と長男の場合、いくつかの問題や出来事を踏まえて、この距離感の問題を自覚した後、驚くほどあっさりと抜け出しました。
そうした時のキーワードは、
妻の場合【大事な人も、もうちょっとテキトーでいい】
長男の場合【自分は自分、人は人】
が適度な指針を取り戻すヒントになった様です。
次男が距離感問題に陥った理由
なぜ定型であるはずの次男も、家族のASD当事者たちと同様の問題に陥ったのか。
まず、まだ4歳と幼ければ定型であろうがASDであろうが、人との距離感について何らかの問題を抱えても不思議ではありません。むしろ当然と言ってもいいのではないでしょうか。
ただ、彼がこうした問題に大きく躓いた原因としては、兄姉からの特に娘からの“刷り込み”だったと考えるのが自然です。
子どもは想像以上に考え、周囲を見ています。人とのコミュニケーションの取り方も同じで、他の子どものやり方などをジッと見て、その方法をやってみたりします。
例えば周囲に、叱られると意図的に黙りこむタイプの子のがいた場合、それを見ていた子も叱られた時に黙りこむのを始めたりなど、レスポンスを周囲から多く学習することがあります。
例えば周囲に、叱られると意図的に黙りこむタイプの子のがいた場合、それを見ていた子も叱られた時に黙りこむのを始めたりなど、レスポンスを周囲から多く学習することがあります。
次男は同じ保育所であり、家庭でも娘といる時間が多く、言動を真似していたりする事がよくありました。
現実の相手を気にしているようでありながら、自分の中の【相手にどう思われるか】を問題としていること
などと言うことは見ていても理解はできないでしょうが(真似されている娘本人も自覚はなかったし)、話しかける論法や硬直するタイミング、駆け引きの方法などを真似していれば、味わう感想や違和感は同じはずです。
一緒にいる時間が長ければ長いほど、その時に関わる人間が多ければ多いほど、学習する機会は増え同じ心理になるケースは繰り返されていきます。
つまり、娘が感覚的に選択している方法を真似することで、次男もおなじ感覚を持ち、同じ問題にハマりこんでいったのではないかと。
次男が抜け出せた方法
これまでも何度か、次男が完全にハマりこんで混乱に陥る状況は起きていました。その度に色々な方法や言い方で気を楽にさせたり、自信を取り戻させたりは出来ましたが、結局は対処療法の様なもので、根源的な部分が改善されな限りは再発を繰り返します。
次男が大人への周りくどいコミュニケーションや、緊張感を払拭させた方法は次のとおりです。
“これなら一緒に遊べそうだ”と思うおもちゃを持って、大人に『これであそぼう』と声を掛けさせる
これを何度か繰り返させました。家庭でも私や妻に、構って欲しい時や手持ち無沙汰そうな時にそう促しました。家庭では30分ほど遊んだらさり気なく切り上げ、また本人が必要に応じて声をかけてくるのを待ちました。
自分の中の【相手にどう思われるか】から、“おもちゃを探す具体的行動”と“実際に声を掛ける”という現実の相手に直接働きかける、ポジティブな働きかけを作り出す事になります。
ポイントはセリフが簡単であること。なるべく開口一番の不安を軽減させるためです。
この方法を思いついて3日もたたずに、次男の行動は大きく変わりました。今まで気を取られていた架空の相手への緊張から、実際の相手への働きかけを再認識できたようです。ベッタリでも、よそよそしいでもなく、関わりたい時だけ関わり、そうでない時はマイペースでいられる状態に回復しました。
応用として
人によって距離感の問題は大きく違いますし、ピンポイントに響く言葉も違います。ASD当事者の場合、このピンポイントが重要な事が多く、それらを探すことでも大きな変化をつかむことがあります。
現実の相手を気にしているようでありながら、自分の中の【相手にどう思われるか】を問題としていること
この観点を中心に、【行動を振り返える・言動の根本を見つける・何から自分を守ろうとしているかを見つける】といった具体的な行動に結びつけて理解していくとわかりやすくなる事があります。
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夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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