わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の当事者3人は、特性から物事を極端にとらえて落ち込みやすく、また復活するにもループに陥ると長期化することがよくあります。一度長期化すると、次回からは完全に苦手意識を持ってしまったり、意識を奪われて呆然と前回の失敗に気を取られて再現してしまったり……。
よく言えば【繊細】、悪く言えば【極端過ぎ】。
これらの反応も、認知のズレを補正して行ったり、受け止め方にワンクッション入れる習慣付けを行うことでかなり軽減はされてきました。
ただ、やはりそれでも不意を突かれた場合や、疲れて不安定だったりすると、些細な事で(こちらからみれば)落ち込むことがあります。特にそういった時は、こちらに見せないように傷ついていたりするので、家族としてはどれだけ特性を理解しているかが鍵になります。
そして、元気回復してもらうにも、ちょっとしたコツがあったりします。
今回はわが家で見られがちな、彼らの落ち込みポイントと、その励まし方をまとめてみたいと思います。
妻(軽度アスペルガー・AC傾向あり・受動寄り・30代)
やや依存型で他人に自己評価を預けているので、【失敗=自分の評価が下げられる】と言う傾向があり、そのため失敗を必要以上に重く受け止めがち。ふだんはそれほどでもありませんが、心配事、スケジュール詰まりや未解決な事柄が頭にあると無意識の内にメモリ不足になり、この傾向が強くなります。
落ち込みポイントは【なんで私、出来ないんだろう……】。これが始まると、すでに【失敗した自分】と【失敗した事実】だけになっているので、本人は考えているつもりが、“とらわれている”だけになっています。メモリ不足になっている時ほど認知のズレが多くなり、完璧主義も強くなってくるので、予想外に小さなことで心痛めパニックに陥っていることがあるようです。
ただ、これは非常に静かに起きているため、周囲はまず気が付きません。
特徴としては『どこか反応が鈍い・ノリが悪くなった』『ボーっと座って考えることが多い』『電気も付けずに佇んでた』など、考え事をしている時間が長くなっているとそうであることが多い気がします。特に落ち込みが極大化するのは、【失敗は失敗、自分がダメな人間ということではない】ということまでスッポ抜けた時です。ほんの小さな失敗でも【マイナス!】という事実が全てになってしまい、立ちすくんでしまいます。
わが家で効果的だったのは
・失敗は失敗だけどやり方の間違いで、君がダメ人間ってわけじゃない(フリーズ時)
・その考え方はいきなりプロになろうとしてる(完璧主義時)
・~~まで出来れば一般家庭ではOK(完璧主義時)
・ああ、君が理解できていないんじゃなくて、今パニックなんだよ(フリーズ時)
・タイミングの問題なんじゃない? 次に同じになった時の事を考えたら?(時間の連続性を見失ってる時)
・そういう間違い、多分みんなやるよそれ(なるべく早めの時)
・どこまで出来ていたかをまとめたら? それからどうしてミスったかを考えればいいよ(焦燥感が強い時)
基本的には
【取り返しの付かないことではない】
【そこまで背負わなくてもいい】
【どこまで出来ていれば一般的か】
がパニック時には見えなくなりがちなので、そこを支えるようにしています。
長男(軽度アスペルガー・やや受動傾向と愛着が強い・8歳)
低年齢ということもありますが、妻に比べて依存傾向と愛着が強く、一回つまずくと復帰までかなり長い時間を要する事になります(最悪数ヶ月)。彼の場合は失敗そのものもありますが、その依存傾向の強さゆえに、【失敗してしまった!】にとらわれてしまい、問題そのものを忘れているにもかかわらず愛着相手の前でフリーズし続けるという性質がありました。
また、受動的であるということは、人に合わせる事が多く、自然と自己評価も相手に預けるのが当たり前に。【何をするか、どうすればいいのか】など、まず人の指示を待ち、人の顔色を伺いながら進めてしまうため、自分の経験にもならず不安がつきまとっていたようです。
彼の落ち込みのポイントは【ぼく、できるのかなぁ】。正しくは落ち込みとは言えませんが、この言葉には本人も気が付かぬうちの【人に受け入れてもらえるくらいに】という前置きが存在しています。つまり、完全に頭に入る指示がもらえない限り、彼にはそれは不安と葛藤の連続で、自発的に動いていない分、意図が飲み込めていないため何処かいつも強迫観念を持つようになっていました。
そして、小さな失敗でも、彼はこちらの想像以上に激しく傷ついていた事になります。
効果的だった声がけは
・失敗は失敗だけどやり方の間違いで、君がダメ人間ってわけじゃない(フリーズ時)
・君はその道のプロになりたいのか?(完璧主義時)
・~~まで出来ればふつうはOK(完璧主義時)
・落ち着いて。解らないんじゃない、今君はパニックなんだよ(フリーズ時)
・君、自転車も最初は不安がってたけど、今も乗ってる時怖いの?(やる前の不安)
・不安になるのは人が喜ぶか考えてるからでしょ。自分が楽しければいいよ(やる前の不安)
基本的な考えは
【どこまで求められているかを明確に】
【考えても答えがないことは考えない】
【人のための発想時はなおさら答えが出ない】
といった点を押さえると掴みやすくなります。
娘(アスペルガー・積極奇異傾向強めの受動あり・思い込みが強い・6歳)
散々ぶつかって来たため、大きな落ち込みや癇癪は我慢せずに受け流す手法を確立させつつありますが、ふとした思い込みがズレた時など、不意を突かれるとまだまだ脆い面があります(まあ、年齢的に当たり前ですが)。具体的には参観日などに親を見ると、朝、スケジュールを散々説明をされていても、ずっといるものだと勝手に思い込み、保護者が一旦退出する時に大泣き&落ち込みなど。
目の前の事が思っていたことと違う場合に、瞬間的にストレスを受け、自分の気持ちが分からないまま突発的に泣きだしてしまうため、本人も【?】とすぐに復帰する特徴があります。
効果的だった声がけは
・~~って思い込んじゃっただけだよね?(突発泣き時)
・本当にやりたかったの? 気がついちゃっただけじゃない?(欲求の取り違い時)
・もう一度スケジュールを確認するよ? 今、これをすると次に都合がいいんだ(欲求の取り違い時)
・今、ショックを受けたのはなんでだろう。君は言葉にするとすぐに落ち着けるよ(突発泣き時)
基本的には
【突発的な事実の支配に戸惑っている】
【不安にとらわれるとそれが全てになるので、違う視点を渡す】
【自分で考えを変えられるという事実を思い出させる】
が思い込みギャップには効果的です。
共通する特性
わが家の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の3人だけではなく、もしかしたら他の方にも共通する部分があるかもしれませんが、やはり落ち込みや不安の種になるのは【認知のズレ】です。アンテナの感度が高いため、一般的に想定されるショックの度合いよりも、もう少し大きく受け取ってしまう事が多くあります。
特にそのアンテナの感度は、鋭くなる方に関して不安定で、コンディションによっては昨日まで何ともなかった事が突如やりきれない事実にまで昇華することもあるようです。
【失敗=自分の評価が下げられる】の図式は、確かにその一面もあるのですが、これが永続的な物であると思い込んでいて落ち込みが激しくなっている場合もあります。
効果的だったアドバイスは
【時間は連続していて、ずっと変わらないものではない】
【失敗は失敗、そのやり方の問題で、あなたを否定するものではない】
【疲れかパニックで今は余裕がないだけ】
などの窮屈になりがちな視界を軽くしてから、『で、こう考えちゃってない?』と認知のズレにアプローチを掛けると表情が軽くなることが多い気がします。
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