『こういう時はこうするものだ』
例えば女性の場合は男性に対し“記念日は覚えていて【特別】を演出する努力をするもの”であったり、男性は女性に対し“仕事に専念できるよう、家族の事は女性側で解決しておくもの”など、言葉や書面で交わしたことのない約束事(通念)があったりします。
ここにはお互いの【通念】と【言い分】が存在していて、何の前触れもなく、もしくは分かっていながら巻き込まれるように、摩擦を生み出すことがあります。お互いに答え合わせをした議題でない上、お互いが常識だと思っているため、突っ込む側の批判から入ることが多くなります。
わが家の夫婦関係の場合、妻の方にあまり性差由来の【通念】がなく、私も特にこだわりなく動くタイプなので、男女差の通念で衝突することはほとんどありません。その代わりに独特な【通念】を持っていたり、こだわりが【通念】の役割を果たしてしまったりと、変則的に『こういう時はこうするものだ』の壁が起こることがあります。
これらはどんな男女にでも起こりうることですし、場合によってはカサンドラ症候群の要因となる【憤り】の一部に関わることかもしれません。今回は男女差で起こる“お互いの通念の違い”と、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)のパートナーに起こりがちな、同様な通念のズレをまとめてみたいと思います。
※カサンドラ症候群についてはこちらをどうぞ⇒夫や妻、家族がアスペルガーで辛いと感じている人へ│カサンドラ症候群の峠
※ある程度分かりやすくするため、通念の持ち方に男女差や、ASD当事者の特性をステレオタイプ的に表現していますが、実際はその通りではありません。あくまで通念の問題点を強調するための処置です。
記念日を“忘れる男”・“こだわる女”
例えば人の誕生日を“憶えているか、特別視できているか”といった点では、男性の方がこだわりが薄く、そこに関して女性に不満が起こると言うのは、古くから言われているステレオタイプとなっている気がします。
ここにある女性の通念としては、【大切な人の生まれた日を憶えていることは、その人が生まれてきたことを感謝することだ】とか【その人の存在に対して喜びを表す日】など、対して男性は【いつも特別に思っているのだから大事にしたいのはそこじゃない】とか【無理に特別を表現しようとすることは失態につながる】といったものがあるのではないでしょうか。
この通念が純粋な男女差によるものかどうかの真偽はさておき、まずこうであったと仮定して何がズレているのかを分解するならば
男:特定の“特別な日”より、いつもの関わりが結果であり、言わなくてもその気持ちが伝わっているのが“通じ合えている仲”である
女:ふだんからの関係も重要な事ではあるが、こういった“特別な日”などで“特別な存在である”と表現されることは、“幸せを約束されている”と実感ができる
と言ったものがあるのではないでしょうか。
ひとつひとつの結果や目標に着実な男性の場合、会話ですら着地点を求めるわけですが、女性との関係に対し“記念日に特別であることを伝える”事は通過点であり、且つ“特別だよ”と新たに表現するのは“通じ合えている仲”の倫理観に沿っていません。ポイントは【継続と維持】です。
女性の場合は理論・情緒どちらにも傾倒することが出来、言葉や行動の裏の気持ちから汲み取ることに長けていますが、“特別”を実感する事に際しては直接的な働きかけを求める傾向があります。ポイントは【継続と発展】です。
この様に関係の着地点の置き方に違いがあれば、【気持ちを明確に言葉にする・確認を取る】という事が必要になりますが、そういった事の【それこそ言わなくたって大切なら通じているもの】といった通念が出てくると、お互いに感情的な反応からスタートすることになります。感情的に否定される所からいきなり始まれば、否定された側は“非常識である”とされているのと同義なので、やはり感情的に処理しがちになります。
……と、まあここまではよくある【男脳・女脳】的な話なのですが、再度申し上げますと、この通念が純粋な男女差によるものかどうかの真偽はさておき、立場や通念のとらえ方ひとつでこれだけコミュニケーションにズレが生じてしまうというシミュレーションと考えれば、様々な関係のズレにある根本の小さな原因が見えてきます。
自分の通念の説明不足と、相手の通念の理解不足です。またはそれを盲信してしまっている。
大事な関係に【通念】は必要?
関係が深くなるに連れて、お互いの理解度は深まってくるものですが、ここで『こういう時はこうするものだ』と通念に頼ると思わぬ衝突につながることがあります。特に信頼度が高いほど、自分の通念とズレている場合に『常識的なルールを守らなかった!』となりやすいからです。
ただ、この【通念】は元々社会生活をする上で、その場その場で意見を衝突させないように、曖昧なカタチのまま“暗黙の了解”としていることがほとんどです。つまり、一定の関係を越えた場合には適切な尺度とは言えません。
深い関係に求め合う理解度となると、通念は通念で置いておいて、もう少し踏み込んだ場所を冷静に理解し合う事になります(ここで一方的に自分の通念を常識だと思い込んで望むと“冷める”事が多い気が……)。
深い関係に求め合う理解度となると、通念は通念で置いておいて、もう少し踏み込んだ場所を冷静に理解し合う事になります(ここで一方的に自分の通念を常識だと思い込んで望むと“冷める”事が多い気が……)。
通念は【他人⇒恋人初期】までの、ちょっとシュールなノウハウ四コマ漫画の様なもので、そこから先の関係は、現場を見ながら現場で揉まれていくことになります。その際は自分の通念を“常識”だと考えず、むしろ相手を知ろうとするつもりで『もうちょっと知りたいんだけど、こういう時ってどうしたい?』と尋ねるようにすると、衝突姿勢を免れやすくなります。
ASDの特性としての類似点
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の特性として、パッと思ったことが全てになってしまったり、指標が曖昧なものに対して極端なとらえ方をしてしまう事があります。【白か黒か】【全か無か】、両極思考で物事にとらわれてしまった場合、自分の中の事実と違えば強く反応してしまったり、非常識だと反論してきたり。
このお互いに答え合わせのないまま、“自分の通念に沿っているか・いないか”に対し、【常識・非常識の二極論】で感情的に反応してしまうのは、どこか男女差に生まれやすい【通念】の問題に似ています。そして感情的に常識をぶつけられた側も、感情的に反応を返すものの、そこに“後ろめたさ”があるほどに激しい反発やショックになるのも似ている点だと言えます。
カサンドラ症候群に陥るには様々な要因が重なってきますが、まずは男女の性差としての通念の違いを踏まえ、そこでの性差の違いと対処方法から学んでいくのも、ちょっとした足がかりになるのかも知れません。
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中の人
夫。30代。
定型。フリーのデザイナー。
自宅で仕事をするかたわら、家事・DIY・訪問営業撃退に勤しむ。 本人は定型だが、何かしら発達障害との縁が深い。
心労と過労で3度倒れ、一時はうつ状態に。 ところがどっこい完治なタフガイ。
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